“プラントベース”と聞いて何を思い浮かべるだろうか? この言葉は植物由来の原料からなる食品そのものや、それらを取り入れた食スタイルのことを意味し、欧米諸国を中心に注目度がぐっと高まっている。
9月7日に発売となった料理王国本誌10月号では、「プラントベースと日本の食」を特集した。“プラントベース”がいま話題になっている理由や、日本の食との親和性、国内の最新事情などを紹介している。料理王国WEBマガジンでも、本誌の連動企画として、日本のプラントベース最新事情を追いかける。
Vol.1は、本誌でも紹介した、スウェーデン発祥の家具ブランド「イケア」の日本法人「イケア・ジャパン」が再登場。プラントベース商品の展開に力を入れる同社は10月1日、大人気商品であるミートボールのプラントベース版「プラントボール」を発売した。イケアが“肉好きに捧げる”プラントボールには、どんな狙いや思いが込められているのだろうか。
人々の健康やサステナブルな暮らしの実現を目標に掲げる、スウェーデン発祥の家具ブランド「イケア」。グローバル企業としてサステナブルなフードを通じてビジネスを実現するべく、動物性食品と比べて地球環境への負荷が少ないプラントベースフードの開発に力を入れていることは本誌10月号でも紹介した。これまで「ベジソーセージ」「プラントベースソフトアイス」「プラントカツカレー」「プラントロールキャベツ」など約45種類のプラントベース商品が展開されてきたが、10月1日から、イケアフードの象徴とも言えるミートボールのプラントベース版「プラントボール」が日本で発売となった。
「プラントボール」の原材料は、黄エンドウ豆由来タンパク質やオーツ麦、ジャガイモ、タマネギ、ドライアップル、米粉などを使用。日本で植物性ミートといえば大豆由来がメジャーだが、大豆ミートは独特の風味が強く、また近年は大豆栽培による環境破壊も叫ばれていることもあり、黄エンドウ豆を主原料に選んだという。これらの材料にスパイスやトマト、キノコ、レモンなどを加えて味を整え、肉の味や食感、見た目を再現しようと試みた。
「プラントボールは肉好きの方に好んで食べてもらえることを目指して開発した商品です。イケアの象徴とも言えるミートボールと食べ比べても遜色ないものに仕上がっています」とイケアの日本法人「イケア・ジャパン」でカントリーフードマネージャーを務める佐川季由氏は話す。また同社広報の松尾ちさと氏は「イケアのミートボールは、世界では毎年10億個、日本では100万個売れている人気商品です。プラントボールはミートボールに比べて96%もカーボンフットプリントを削減できます。つまり、ミートボール全体の売り上げの約 20%をプラントボールに替えることができたなら、食品事業におけるクライメートフットプリントのおよそ 8%をカットできることになるのです」と解説する。
日本での「プラントボール」発売にあたり、料理家のレイチェル・クー氏とコラボレーション。「甘みその照り焼き風 プラントボールカナッペ」や「酢豚風プラントボール、ご飯とチンゲン菜を添えて」など、冷凍のプラントボールを使ったレシピ4品をレイチェル氏が考案した。レシピはイケア・ジャパンのウェブサイトやYouTubeチャンネルなどで随時公開していく。
「イケアは2030年までに、温室効果ガスの削減量が排出量を上回る『クライメート・ポジティブ』を達成するという大きな目標を掲げています。プラントボールはそれを叶えるための確かな一歩になると思っています」と同社広報の松尾氏。今年12月にオープンする都心型店舗2例目となる渋谷店でも、プラントベース商品をプッシュしていくという。世の中を見渡してみると、外圧に対して体面を繕うために「サステナブル」を謳う企業もある中で、グローバル企業として環境負荷低減に取り組むイケアの姿勢は“本気”だ。これらの目標がどこまで達成されるのか、引き続き見守って行きたい。
■イケア・ジャパン 公式HP
http://ikea.jp/
■イケア・ジャパン 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCTS7GCjd9itlrv_DhXcwZwA
text 笹木菜々子
料理王国10月号では「プラントベースと日本の食」を特集しています。欧米諸国で話題となっている背景や、日本に古くからあるプラントベースである精進料理、若手シェフが考えるプラントベースの一汁一菜レシピなど、プラントベースを古今東西、多角的に掘り下げました。最新の食の流れを知りたい方におすすめの一冊です。