とりあえず、ではない味わい深いビールが飲みたい。ときにはワインのような、あるいはリキュールのような個性あふれるビールの飲める6軒を厳選してご紹介します。
まるでベルギーのローカルなパブに迷い込んだかのようなベルギービール専門店が銀座にある。バックバーに数百のグラスが並び、カウンターには美しいタワー。大きなろうそくの灯りが店内を優しく照らす。樽生はシメイなど定番の5種に加え、夏ならほろ苦くすっきりしたタイプのものなど、季節に合ったゲストビールを提供している。ボトルビールは、カウンター脇に置かれた大型冷蔵庫の中
で飲みごろを迎えた120種の中から好みのものをセレクト。本場と同じく、チャージなしのキャッシュオンスタイルで気軽に楽しめるのがうれしい。一般にはまだ知名度の低いフルーツビールに力を入れているのも特徴。
「リンデマンアップル」はベルギーにしか存在しない自然酵母と3年ねかせたホップを使用し、フルーツを漬け込み造られるフルーツビール。ナチュラルな風味が生かされているため、ビールが苦手という女性客にも好評だ。
シメイ修道院で造られるチーズや、牛バラ肉をフォン・ド・ヴォーと「シメイブルー」で煮込んだ牛肉のビール煮、濃厚な旨味を堪能できるムール貝のワイン蒸しなど、ベルギービール専門店としてのこだわりはフード類にも反映されている。また、多数あるベルギービールをより楽しむために、同店が推奨しているのが〝ベルジアン・ビア・パスポート〞。カテゴリー分けされ、それぞれの特徴が記されたパスポートは2年間有効。パスポートホルダーにのみ日本未入荷の直輸入ビールが限定販売されるなど特典も多いが、何より自分が今まで楽しんだビールを体系的にリスト化できるのがありがたい。
銀座ファボリ
東京都中央区銀座2-10-5 オオイビル1F
● Phone 03-6226-6117
● 17:30~翌2:00(日祝は16:00~23:00)
● 不定休
●ムール貝のワイン蒸し(withフリッツ)1400円、牛肉のビール煮1800円、シメイ(250㎖)950円、リーデマンアップル(375㎖)1400円
スコッチモルトを気軽に、かつマニアックに楽しめる店として人気が高いこちら。しかし「実は、モルトと同じくらいビールが好きなんです」と語る店長の坂井俊英さん。種類こそ多くはないが、こだわり抜いた樽生とボトルビールを堪能できる。手入れの行き届いた4種のオンタップは「ギネス」、「ロンドンプライド」、「東京ブラックリアルエール」をスタンダードに据え、季節のゲストビールはスポットで。ホップの香りや独特の苦味が特徴的な「トシズアイピーエー」など珍しい銘柄が飲めることも。ボトルでは国やジャンルを問わず、感性にビビッときたものをセレクト。
ハワイで人気のローカルビール「プリモ」などがさりげなくあるのがうれしい。シェパーズパイやフィッシュアンドチップス、ハギスなど、イギリスやスコットランドの伝統料理を中心としたつまみも秀逸。ズラリと並ぶスコッチモルトを眺めながら、極上のエールビールで乾杯したい店である。
クエルクス バー
東京都豊島区東池袋1-32-5 大熊ビルB1F
● Phone 03-3986-8025
● 17:00~翌4:00(日・祝は~翌2:00)
● 無休
● 自家製スコッチハギス1200円、ロンドンプライド1000円
神田駅の喧騒を離れた地下に、ひっそりと佇むビアバー。駅から少々離れた立地にも関わらず、遠方からもビールファンが訪れる。ヨーロピアンビールを中心とした品揃え。ボトルは全90種。樽生は常時5種類を用意。特筆すべきはハンドポンプスタイルで供される「神田エール」。残念ながら今シーズンは終了したが、11月からは「神田クロ」が登場するとのこと。そのほかドイツ産の燻製ビールで日本限定入荷の「シュレンケルラー・ラオホ」や、珍しいインディアン・ペール・エールの「ストーン」などこだわりのビールが顔を揃えている。
さまざまな国のビールを飲み比べられるのも同店の楽しみ方のひとつで、たとえばイギリススタイルのビールなら、フルーティーな香りと麦の旨味を、ベルギーならワインのように長く余韻を楽しめる……など。ビールに造詣の深いスタッフに相談しながらセレクトするのがいいだろう。〝ビールに合う〞を超え、〝このビールに合う〞まで突き詰めた料理類も出色。
THE Jha BAR
東京都千代田区神田多町2-5 東銀神田ビルB1F
● Phone 03-3252-3258
● 18:00~翌2:00(金は~翌4:00、土~23:30)
● 日・祝休
● フィッシュアンドチップス1000円、グリセット・ブランシュ(330㎖)900円
オープンして9年あまり。ワイン好きにはつとに知られた同店だが、あらためてベルギービールの品揃えに驚いた。「たとえばワインを選びながら、店内でゆっくりとビールが飲めたら」と少しずつ銘柄を増やしていったという店主の寺山高史さん。樽生は常時2種、ボトルは50〜70種にも及ぶ。〝ラベルのないビール〞としてマニアが幻と仰ぐ「ウェストフレテレン」など希少なものまで。ワインのオーソリティとして、ビールを注ぐグラスにも並々ならぬこだわりがあり、日本にないものは海外へ買いつけに行くという。
その数なんと400種。修道院での製造を祖にしたベルギービールに足付きのグラスが多いのは、〝聖杯〞としての意味合いが強いため。フランス人がワインに特別な尊敬を払うように、ベルギーでビールは聖なる飲み物なのである。グラス代、抜栓料など一切なし。店内で飲んでも小売価格に徹する同店。あくまでもサク飲みが基本の店だが、ワインとビールに囲まれた幸せな空間についつい長居しそう。
キュヴェ フジヤマ
東京都練馬区豊玉上2-15-9 桜台駅前オリンピックビル
● Phone 03-3994-7757
● 12:00~22:30
● 月休(祝日の場合は火休)
● トリプルカルメリット588円
松尾 大=構成/西澤千央、森オウジ=文/漆戸美保、大八木宏武、加戸昭太郎、山出高士=写真
本記事は雑誌料理王国192号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は192号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。