なぜ生きられるか。
と、最初にわたしたち参加者へ聞いた院長の田中岳史医師。
ここは自分のカラダを本当の意味で知れる場所、「KRD nihonbashi」。将来にわたって健康であるために「今」の習慣を科学し持続可能な健康マネージメントを提供するこれまでにない健診をリデザインした施設。
こちらの健診に並設したスタジオでは、「健康=まずは食事から」を中心に、「栄養・運動・メンタルヘルス・最新医学」をテーマにした様々な専門家によるセミナー・クッキングイベントを用意し、病を見るだけの健診にせず自分の体の中で「何が起きているのかを理解する力」と「これから何が起き得るのかを想像する力」を養うことができます。
ここで開催されているイベントは、きっかけを提供し改めて「カラダのサスティナビリティ」について深く考える場としてもらうためのもの。
健康と「食」が切っても切り離せない大部分を占める役割があることを楽しく体験できる「The Sustainability Baton 未来につなぐ」をテーマのイベントが定期的に開催され、2月に開催された「味噌~ 醸す meets French」のクッキングイベントへ参加しました。
味噌とフレンチの究極のオリジナルコース料理を作るのは、レストラン「SUGALABO」を卒業され現在「食のリテラシーを磨く」をコンセプトに活動されている薬師神陸シェフ。
まず「KRD Nihonbashi」の田中岳史医師から「味噌」についてお話がありました。
発酵食品である味噌がなぜ体によいか?発酵と熟成が同時進行にある味噌は、菌が大豆分解し、熟成し、酵素ができ、分解され、結果旨味も増すという。
それが「味噌」。
そういえば、日本で生まれ育った人でお味噌汁が嫌いだという人に私はまだ出会ったことがない。外国育ちの外国の友人でさえ「I love MISO soup」というほどです。
発酵食品は、腸に入ると免疫細胞を活性化させ、免疫力が安定するそう。腸は第二の脳といわれるほど、体調管理をしたいなら腸の管理に集中すると良いと言われるほど。その腸にわたしたちの免疫システムの6割があるそうです。
たしかに、毎年色んなウィルスが流行する中、感染する人としない人がいるのは、それぞれの免疫力の違いによるものだと気づきました。また、発酵食品である「味噌」と一緒に食物繊維を含む食材を一緒に取ることで腸の運動を活発にさせ、腐敗産物の生産を抑制するそうです。
この優れた発酵食品、お味噌を食べることを選択する人生に、きっと病気とは無縁な関係になれるのは言うまでもありません。実際、行動に移し実行していればの話だが。そもそも病気にならなければ、私たちにとって薬は必要でなくなります。
著者は、お味噌汁が大好き。週に5回以上は食べますが、たしかにここ十年位毎年流行りのウィルスに全くかかっていなかった。
次に、お味噌づくりのセミナーを開催されるお味噌の達人井谷公美さんが登壇されました。
ここで初めて麹菌は日本の風土でしか育たないという衝撃の事実と、
お味噌が美味しくなる理由の一つに菌が宿れる杉の木桶が理想と教えてくださいました。
こんなにも体によいこと尽くしであり、旨みのある美味しい食材「味噌」は、元祖日本生まれの日本育ち。日本の自然と環境による風土、そして人々の知恵で誕生した「奇跡の食材」と思ったのは著者だけでしょうか。馴染みのいつもの「味噌」が、この時点で著者の中で奇跡なる食材となりました。
そして、いよいよ薬師神陸シェフによるデモンストレーションとなります。
世界の食材のみならず、日本全国の地方食材も知り尽くした薬師神陸シェフと味噌の関係も深く、ご祖父様はお味噌を家で手作りされ、子供のころから家の味として慣れ親しんだ食材だそうです。
薬師神陸シェフの料理は全部で4品。発酵食品同士で相性がよいというバターやスパイス、香が強めのハーブが味噌に合うなど、惜しみなくレクチャーしてくださいました。
1品目の味噌とシェリービネガー、オリーブオイルを合わせたドレッシングが根菜系のお野菜にとても合います。
2品目。食材にも拘った豚肉は、土を食べる本来の性質を生かし放牧で育てられた「田んぼ豚」。味噌でマリネした豚肉は焦がしやすい為、脂をしっかり焼き、表面だけ焼き色をつけた田んぼ豚をお味噌と酒、オリーブオイルの液体に漬け低温で調理したお肉は、味噌の旨みが生きた上品な味わい。そこに柑橘と季節のキンカンを自然と組み合わせられるのは、「技」とは異なる「生まれ」が垣間見る愛媛ご出身の薬師神陸シェフ。
とくに印象的だった新玉ねぎのスープは、切った新玉ねぎを塩麹につけておき、蒸してミキサーにかけるだけという、一流シェフでなくともきっとこの美味しさを再現できてしまうかもしれない塩麹の凄さに恐ろしいと感じた一品。
が、出来上がった美味しい新玉ねぎのスープの中には温泉卵、一番底には辛味と粘性ある発酵生ソーセージが。真似のできない食材の合わせ方や組み合わせがとても勉強になります。
デザートは、事前にテリーヌショコラを作ってきてくださいました。
味噌とショコラの組み合わせを私が初めて知ったのは数年前にメルボルンにて。期待以上に美味しいし楽しいと思えたので、著者なりに研究し、主宰する料理教室でご紹介したことがありました。が、薬師神陸シェフの味噌とショコラの合わせ方は、ショコラの中に味噌を練り込まず、(ここがポイント!)完成したテリーヌショコラの上に麦みそを散らしのせたもの。この発想は無かったです!初めていただく感動の絶品。麦みその少し歯ごたえのある食感と塩味、なめらかな口当たりのテリーヌショコラの甘味と相乗効果が凄い。
お皿とカトラリーは、竹とサトウキビの繊維を原料に使った、料理が美しく見えるモダンなデザインの「WASARA」が使われ、イベントの大きなテーマであるサスティナビリティのメッセージが触れるものからも伝わります。
全4種類の味噌がそれぞれの料理に使われ、フレンチの要素に味噌がよく合うことも学べ、感動する美味しいお料理をいただき、自分の体の未来につながる知識を持ち帰えることができ、内容の濃い価値ある時間を体験し、大満足でした。
日常に戻り、自分が口にするもの、しているものを深く知れるということは、いつも食べているもの、食材、お味噌汁に対しての向き合い方が自分の中で変わりました。
わたしたちみんな平等にあたえられた食事という時間。一日に2回の人、多い人は4回も自由に「選択」ができる。
特別な意識を向けて毎回お味噌汁をいただいていなかったけど、いつもと同じお味噌汁を食べているのに、得した嬉しい気分。美味しいは、体も救う。
【プロフィール】 1988年、愛媛県生まれ。 幼い頃、祖⽗の影響でキッチンに⽴つ機会が多く、料理⼈の道を志す。 2008年〜辻調理師専⾨学校のフランス料理講師としてスタートし、 教育指導を初め、テレビの料理監修・雑誌制作等幅広く活躍し6年間務める。 2014年〜今や予約困難なレストラン『SUGALABO』(東京/神⾕町)の⽴上げから尽⼒。 同店のシェフとして国内外を⾶び回り、⽇本の素晴らしい⾷材・⼯芸・酒など ⾷に纏わるコンテンツをシェアしプレゼンするために、夜のみレストランとして完全紹介制で料理を振る舞う。 全国の⾃治体や⽣産者とのコネクションを強く持ち、 レストランと並行してJALのfirst class機内⾷の担当やイベント企画、メニュー監修等に⼒を注ぐ。 2019年7月 独立。 「⾷のリテラシーを磨く」をコンセプトに新しい料理⼈の働き⽅をつくる。 イベントディレクター、ケータリング、セミナー、メニュー監修など多彩に活動する。
インスタグラム:https://www.instagram.com/rikuyakushijin/?hl=ja
@rikuyakushijin
SHOKUart代表
文・写真=中村まりこ
料理家
東京出身。
ELLE grumet 公認料理家、企業様向けレシピ提供、イベント・講習会講師、料理教室 鎌倉legame cooking 主宰、フードスタイリング、ラジオパーソナリティー、食に関する記事の執筆、を中心に活動。食に造詣の深い祖父、そして父とウクライナ人の母から2つの食文化を習得。
世界23ヵ国で生活した高校3年間を原点に、料理の道へ。
和食材も自由に取り入れた料理ジャンルからでなく、環境と自然界に寄り添ったサスティナブルな食材を使い、素材からボーダレスな料理を、「現地の食べ物や土地、そして「人」と文化に関わり、本物を見て体験してから自分なりに理解して伝える」を軸にし、独創的な組み合わせで「empirical&unleash」を表現する「SHOKUart」設立。
外国の方にむけて「私達の日常、本当の和食を伝えたい。」という思いから、日本家庭料理の料理教室 「Authentic Japanese Cooking Class」 も主宰。
外国人向けのWedマガジンサイトへのレシピ提供も手掛ける。
https://www.shokuart.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/this_is_mariko_/
@this_is_mariko_