フードジャーナリストや本誌ライターの皆様にお聞きした“今年注目したシェフ”をご紹介します。最も多くお名前が挙がったのは、こちらもこの方でした!
「M.O.F.受章。有言実行の素晴らしさ!」
「M.O.F.受賞で、フランスだけでなく世界における日本人シェフのイメージをさらに格上げしたと思います」
「フランス国家最優秀職人章(M.O.F.)を日本人で初めて受章。やはり、2023年で一番の注目シェフだと思います」
「日本人初のM.O.F.獲得。日本の今後のフランス料理の発展に期待できるニュースでした」
「2022年に日本人として初のM.O.F.を獲得し、2023年フランス・エリゼ宮の受章披露式典にも招かれ、日本のフランス料理の技術力を内外に知らしめた」
「フランス料理の古典の継承と進化に尽力する、その一心でクラブ・ドゥ・レリタージュ・キュリネール・フランセ(略クラブ・エリタージュ)を立ち上げた」
「日本勢が苦戦した世界ベストレストランで、21位と日本人最高位。昆布を使わない独特のうま味の出し方や世界に日本料理の発信している姿勢に注目している」
「年々重ねるごとにご活躍が目覚ましいのですが、今年は本当にどこに行ってもさまざまな場所で長谷川シェフの名前をお見かけした気がしています。料理関係ではない取材でもお名前が上がったりして、そのご活躍を実感しました」
「若手での注目株。地元能登の最高級の食材を使うことで、生産者と産地を守るという志を感じる、ストレートな日本料理」
「シェ・イノの料理長に就任は大きな話題となった。就任の約10カ月後に某インタビューで“最初の2ヶ月間は精神的に打ちひしがれていたと思います。本当にすごいところに来てしまった”と答えていたシェフにとって、大いなる挑戦だと思った」
「食の未来を大きな視点でとらえつつ、ハレの日の食事の驚きと楽しさ、美しさへの追求を緩めず、常に「最高」を目指す姿勢が素晴らしい」
「美食の神髄を知り、妥協なく進む――これを長年続けている稀有なシェフのひとり。食材、料理テクニック、感性、地方の個性、チーム力などの魅力を最大限に活かすバランスの良さに各国のグルメだけでなく、プロたちも注目している」
「誰も真似できないフォレジングをベースとした道産子ガストロノミーを追求しているため。また独自の発酵や蒸留を研究するTAKAO LABOも素晴らしい」
「中華の多彩な技術を駆使し、伝統的な重みある料理から新感覚の軽やかな料理までこなす。とくに食材の持ち味を見極めて最大限に活かし切るその感性は素晴らしく、これからの中華料理の可能性を開く人だと思う」
「実家を改装した一軒家レストランで、キロメトロゼロのイノベーティブを標榜する。発想力、表現力、そして実力。関西を代表する料理人のひとり」
「NOT THE SAMEというモットーを実践、徹底的に素材、調理法を研究し尽くしたその世界観は他者を圧倒するものがある。2023年11月に新規開店したCAINOYA ver.3も日本の美意識が細部にまで宿る」
「お店での従業員とのやりとり、指示だし、依頼ごと、全般において今までの料理業界のそれとは違う、平成育ちの関係性の持ち方をきちんとわきまえた方だなと拝察しています。次の時代の京料理業界の中心的存在になる人だと思いますし、周りからもそのように評価されている(だろう)と思います」
「伝統からはみでない奔放さ、素材とじっくり向き合った時間、最高の瞬間での香りの演出、計算された口どけのバランスのある料理を実現していると思います。そして素材は贅を尽くしているのに、そこから健康的な美味しさを引き出し、身体に優しく溶け込む、魔法の料理人」
「菊乃井やNY、京都のイノベーティブ、中華で修行し21年に独立。RED-U35は挑戦6度目となる2022年大会で、日本料理で初めて優勝。今年はさまざまなメディアに登場し、新たな日本料理の可能性を示唆した。特にREDに挑戦するなかで日本料理と対峙し“食材の持ち味を生かす料理が多いため食材頼りから脱却できず、技術ばかり磨いて自分らしさを表現することや創造性が弱い。油脂が少なく食べ疲れしないことが日本料理の利点だが、物足りなさがある”考えから、学んできた中国料理の油脂やスパイスの技術を織り交ぜているのが面白い。近年、料理コンクールなどを見ていると他国から日本料理を学びにきた外国籍の人が、日本料理と自国の要素を混ぜた料理を出すことが多くなってきたと感じている。日本では長年伝統を守った料理が多かったが、日本料理×異文化のミックスという提案があってもいいのだと思わせた。灯台下暗しな感覚で、とても現代的な提案だと思う」
「80年代にマルケージで学んだ日本人第一号の村上卓央さん(日高シェフの先輩です)が1991年に創業した『ピアノ・ピアーノ』。関西にクラシカルなイタリアの食文化を伝えてきたが、創業31年をもって22年9月で閉店。それをイルギオットーネ笹島シェフが受け継ぎ、23年4月にリニューアルオープンした。厨房は作り替えたが内装はそのまま、メニューは少し変更があったもののスペシャリテはそのまま、スタッフも『ピアノ・ピアーノ』系列だった人がシェフに就き、長年サービスを担ってきた人もそのままという、変わらない姿にファンは歓喜。一方でイルギオットーネの仕入れ力から使う素材がアップグレード。オペレーションを見直して恒温恒湿庫を導入し肉の火入技術もアップした。高齢化する個人店オーナーが単に店を閉めるのではなく、それを店のスタイル、コンセプト、スタッフ、お客さまごと引き継ぐ姿に感銘を受けたと同時に、こうした事例が増えるといいと思った。惜しまれて閉店になってしまった店が多いなか、こうして老舗がファインチューニングされながら時代に取り残されることなく、生き続けることが素晴らしい&日本の食文化としても大切なことだと感じた」
「和食のユネスコ無形文化遺産登録から10年、常に日本料理界をリードする存在。京料理という伝統的な文化を継承する一方で、科学的な視点を取り入れて新しいことにも次々にチャレンジしておられます。海外の有名シェフへの影響力もあります。料理動画などでもわかるように、難しい話も村田さんによると実に明確で、誰にでも理解しやすくなるのも素晴らしいと思います」
「六本木のLa Brianzaのオーナーシェフとしてのみならず、新規店舗のプロデュースやメニュー監修など話題に事欠かない縦横無尽な活躍をされた年だと思います。具体的には、1月には東京駅直結のYANMAR TOKYOの2Fにオープンした“お米と楽しむイタリアン”をコンセプトとする『ASTERISCO(アスタリスコ)』をプロデュース。4月にはJAL国内線ファーストクラスの機内食を監修。10月には米澤文雄シェフと共同オープンした中東イタリアン「Trattoria Tabulé」を横浜みなとみらいにオープン。こちらは、コロナ禍の2021年に立ち上がったオンラインサロンClose tableを法人化して生まれたレストランで、両シェフがメニュー監修も務め、サロンメンバーが多数関わって運営されています。11月24日にはブリアンツァグループの集大成とも言える「DepTH brianza」をオープンし、料理長として自ら調理場に立つ予定。料理人であるのと同時に、経営者としての目覚ましい活躍が特に際立った2023年だったように思います」
池田匡克
ITALIAN WEEK 100ディレクター、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。1998年渡伊後、日伊両国で活動「。レポーター・デル・グスト賞」「ピクトゥーラ・エ・ポエシス文化部門賞」他受賞。
大森由紀子
フランス料理・菓子研究家。「スイーツ甲子園」「France Pâtisserie Week」のアドバイザーを務める。近著は『フランス伝統料理と地方菓子の事典』(誠文堂新光社)。フランス政府農事功労章受勲。
上村久留美
長年「料理王国」の記事を担当し、料理人への取材だけでなく、実際に産地を訪れて生産者の声も届ける。「食」に関しては美食はもちろん、健康や医療などの面からもアプローチを続ける。
君島有紀
スタジオマンを経てフリーフォトグラファーとして活動後、編集・ライターの道へ。雑誌やWEBなどさまざまな媒体でインタビュー記事を中心に執筆。
サトウリョウコ
兵庫県在住、料理取材に特化して約20年。「料理王国」のほか、「月刊 専門料理」(柴田書店)、「シェフ」(イマージュ)、「近代食堂」(旭屋出版)など業界誌を中心に活動。
田中はなよ
1999年に雑誌編集者としてキャリアをスタート。株式会社リクルート、株式会社ぐるなびを経て2012年に独立。グルメ業界をメインにフリーの編集者・ライターとして活動。
築地正
日本料理アカデミーが刊行するプロ向けの専門シリーズ「日本料理大全」を制作。郷土食の調査にも参加し、完成度の高い日本料理の文化と生活の中の食文化の両方を紹介。
つぐまたかこ
「美味しい」で人と企業と地域を元気にする食プランナー・フードライター。石川県金沢市を拠点に執筆、地域食材や生産者のブランディング、商品開発、イベント企画などに携わる。
羽根則子
食の編集者・ライター、イギリスの食研究家。企画・構成・編集・執筆と食関連の書籍を多く手掛ける。イギリスの食文化について寄稿、監修、イベント登壇、テレビなどへ出演。
山内章子
編集者・ライター。2012年8月より「料理王国」の編集・ライティングに携わる。
山田佐和子
大阪府在住。1997年よりライターとしての活動をはじめ、「食」や「料理」を中心に料理専門誌、webサイトなどにて取材・執筆を担当。
渡辺由美子
料理専門誌「シェフ」編集長を経てフリーに。ライター業のほか料理本の編集・校正を主とし「現代ブッフェ料理の真髄」(青幻舎)、「SPICE CAFEのスパイス料理」(アノニマ・スタジオ)、等を担当。
photo:Ichiro Nakanishi, Hiroyuki Takeda, Gaku Yamaya, Tomoko Osada, Yukako Hiramatsu, Masakatsu Ikeda, Shohee Murakawa, Noriko Yamamoto, Katsuo Takashima
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