欧州食材のパイオニア・アルカンからの提案vol.20 フルーツピュレのおいしい調理法 24年12月号

「カシスと巨峰のヴァシュランエストラゴンの香り」

1974年創業以来、東京・銀座でフランス料理の文化を紡ぐ「銀座レカン」。「グランメゾンこそ時代に合わせた変化が必要」と話す八代目シェフの栗田雄平さんに、現代人の食の嗜好に合う、フルーツピュレを取り入れた軽やかなデザート二品を披露していただいた。

ルセットを飛び越えて 自由な発想で作るデザート

銀座レカンでは現在、パティシエを置かず、八代目料理長を務める栗田雄平さんをはじめキュイジニエがデザートを手がけている。

栗田さん曰く「パティシエの作るデザートは、完成度が高い。一方で料理人はアドリブも得意なので、コース料理の流れに入れて違和感がないように、食材の状態に合わせて甘味や酸味、ソースの濃度などを微調整することができる」と話す。レカンの厨房から生まれるデザートは、ルセットを飛び越えて、自由な発想で作り上げられるのだ。

「料理人もデザートについて学び、作れるようにしておくと、何かと役に立つことが多いと思いますよ。フランス料理の修業を始める時に、個人店に勤めるとまずはデザートから任されることが多いのですが、私が就職したのはホテルだったので、厨房には明確なセクション分けがあって、デザートを作る機会がありませんでした。フランス料理に携わる者として、料理だけでなくデザートを含めたコース全体をプロデュースする力を付けておくと自分の武器になると思ったので、次に働いた個人店では自らパティシエを志願して、デザート作りを学ぶことにしました」と栗田さんは振り返る。

栗田さんがコース料理を締めくくるデザートとして心がけているのは、「軽さと充足感の両立」。レカンのコース料理は、アミューズ、前菜三皿、魚料理、肉料理の後に、プレデセール、デセールと続き、さらにミニャルディーズで締めくくる。

「肉料理が終わる頃、お腹の具合は当然、程よい満足感がある状態になっています。プレデセールではショコラなどの存在感のあるものを小さなポーションで。次のデセールに関しては季節のフルーツの素材感を主体とした軽やかなお皿を、料理の延長のイメージと考えてお出しします」

デザートを作るときに、フレッシュなフルーツに加えて、ストックしておくと便利なのが既製品のフルーツピュレ。今回の取材で栗田さんが作ったデザート二品には、フランスのアンドロス社が手がける業務用フルーツ加工品「アンドロス シェフ」シリーズから、カシスと洋梨のピュレを使用した。

煮詰めた赤ワインにカシスのピュレを加えてさらに煮詰めたソースを作る。このソースの中に巨峰を入れて、フレッシュ感を残すくらい火を入れる。
フロマージュブランをベースにしたムースにカシスのピュレを混ぜ込む。
2のムースをシリコン型の中に絞り、冷やし固める
2のムースをシリコン型の中に絞り、冷やし固める。
メレンゲで作った二つの半球の中に、エストラゴンのアイスクリームを隙間なく詰め、一つに合わせて球体にする。全体のパーツを盛り付けて、カシスのソースを流す。
メレンゲで作った二つの半球の中に、エストラゴンのアイスクリームを隙間なく詰め、一つに合わせて球体にする。全体のパーツを盛り付けて、カシスのソースを流す。
「カシスと巨峰のヴァシュランエストラゴンの香り」
「カシスと巨峰のヴァシュランエストラゴンの香り」
アンドロス社のカシスのピュレ(加糖タイプ)を、ソースとムース、クレームシャンティに応用したデザート。カシスと赤ワインのソースの中に、巨峰とカシスのムースを浮かべる。エストラゴンのアイスクリームを詰めたメレンゲの球体の下には、カシスのクレームシャンティを絞る。フルーツやフレッシュチーズの自然な酸味、エストラゴンアイスの爽やかな風味、メレンゲのサクサクとした食感など、全体を軽やかにまとめた。

様々な応用がきく 冷凍フルーツピュレ

一品目の「カシスと巨峰のヴァシュラン」では、カシスのピュレを赤ワインと合わせてソースにしたり、味わいや色彩に統一感を持たせるためムースやクレームシャンティに混ぜ込んだり、栗田さんはカシスのピュレを三つのパーツに応用した。フルーツの自然な甘味や酸味とチーズの旨み、サクサクのメレンゲに詰めたエストラゴンのアイスクリーム……。多様な味わいや食感で食べ飽きない一皿に仕上がっている。

二品目の「洋梨とマスカルポーネのバヴァロア」には、洋梨のピュレを使用。「ピュレといっても、アンドロス社のものは、洋梨の果肉がしっかりと残っているんですね。この形状を見て、今回はピュレを少し煮詰めたものをバヴァロアの中に混ぜ込んでみようと考えました。完全に粒感をなくしたピュレを煮詰めると途中で焦げやすいですが、この商品はそういった心配がなく使い勝手がよい。バヴァロアの材料を混ぜ込んで型に流す時には、1人前の果肉の量に差が生じないよう注意しました」。

なお「アンドロス シェフ」のラインナップは種類豊富で、ピュレは加糖と無糖があり、他にもコンポートやフィリング、オレンジゼストなどもある。「パッションシードのコンポートは珍しい!種を入れると傷みやすいのか、他社では見かけません。キューブ状のルバーブもぜひ試してみたい」と栗田さん。

洋梨のピュレを火にかけ、粒感を残したまま水分をとばす。
煮詰めた洋梨のピュレにゼラチンを加え、冷ましたものにマスカルポーネを合わせてバヴァロアの生地に。テクスチャー
はやや固めの仕上がりとなる。
洋梨のピュレを火にかけ、粒感を残したまま水分をとばす。
煮詰めた洋梨のピュレにゼラチンを加え、冷ましたものにマスカルポーネを合わせてバヴァロアの生地に。
煮詰めた洋梨のピュレにゼラチンを加え、冷ましたものにマスカルポーネを合わせてバヴァロアの生地に。
セルクル型にバヴァロアの生地を隙間なく丁寧に詰めて冷やす。
セルクル型にバヴァロアの生地を隙間なく丁寧に詰めて冷やす。
洋梨を白ワインのシロップで煮詰めてコンポートを作る。鍋の中に入れているハー
ブは、ローリエ、ジュニパーベリー、ジローフル、スターアニス、カルダモン。
洋梨を白ワインのシロップで煮詰めてコンポートを作る。鍋の中に入れているハーブは、ローリエ、ジュニパーベリー、ジローフル、スターアニス、カルダモン。
「洋梨とマスカルポーネのバヴァロアアールグレイのアイスクリーム」
アンドロス社の洋梨のピュレを使用。水分をとばした洋梨のピュレとマスカルポーネで作ったバヴァロアの上に、アールグレイのアイスクリーム。栗田シェフ自らフレッシュな洋梨で作ったコンポートとチップスも用いて、味わいやテクスチャーの異なる洋梨を一皿に集めた。アールグレイの茶葉と粉糖で皿の上を斜めに走るラインを描き、アールグレイを加えたアングレーズソースを添えて。

果物の栽培から加工まで徹底した品質管理を実施「アンドロス シェフ」シリーズとは?

1910年の設立以来、4世代にわたって培われた果物の栽培と加工技術により、高品質なフルーツの加工製品を提供してきたアンドロス社が、プロフェッショナルのために開発した業務用アイテムが「アンドロス シェフ」シリーズだ。フランス国内外の10か所に専用農園があり、一次加工工場を農園の近くに置くことで、常に新鮮な果物を加工。香料を一切使わず、幅広い果物のフルーツピュレ、コンポートなどを提供している。また、農園では年間200回の残留農薬検査と年間50回の監査を実施するなど、衛生・環境基準に適合する果物の栽培が行われているほか、サステナビリティにも配慮。生物多様性を保つ農園作り、環境に配慮したパッケージング、従業員の健康維持と労災防止など、そのアプローチは事業の全領域におよぶ。

お問合せはアルカン業務食材営業部
お問合せはアルカン業務食材営業部 TEL 03-3664-5114

グランメゾンが次世代へ バトンを繋ぐために

日本のフランス料理界を代表するグランメゾンであるレカンは、銀座に誕生して半世紀、フランス料理の文化を紡ぎ、伝えてきた。このバトンを繋いでいくためには、ゲストがレカンに抱く期待を裏切ることなく、時代に合わせた変化も必要だ、と栗田さんは言う。

「伝統的なフランス料理を期待してレカンを訪れるゲストに対しても、現代人の食の嗜好に合わせ、油脂を抑え食材の素材感が出るよう調理を工夫したり、ポーションの調節などが必須です。これは料理でもデザートでも通ずること。素材感を出すという事は、食材選びも重要。アンドロス社のフルーツピュレは、香料を使わず、フルーツ本来の風味を最大限残して作られているので、料理人の創作意欲を引き出してくれるアイテムですね」

栗田雄平
1979年、東京都生まれ。都内のフランス料理店で研鑽を積みフランスへ渡る。帰国後は乃木坂の「レストラン フウ」で7年間、副料理長を務める。その後、「ロテスリーレカン」料理長を経て、2020年7月より「銀座レカン」八代目料理長に就任。

銀座レカン
東京都中央区銀座4丁目5-5
ミキモト本店ビル B1F
TEL 03-3561-9706
11:30〜13:30 LO
17:30〜20:00 LO


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