ヨーロッパ伝統のグラナ・パダーノPDO チーズが格上げする料理の可能性 26年10月号


ヨーロッパ・イタリア産チーズのなかでも、家庭の食卓からプロの料理人まで広く使われるグラナ・パダーノPDO。今回は、本場イタリアで経験を積み重ねた、イタリア料理を専門とする「ヴォーロ・コズィ」の西口大輔シェフと日本料理店「銀座 きた川」の北川一行料理長に、チーズの可能性を広げる料理を披露していただいた。

和洋どちらにおいても魚介の旨味を際立たせる

イタリア北部で12世紀より作られているハードタイプのチーズ、グラナ・パダーノPDO。PDOとは、原産地名称保護の略で、定められた地域で伝統的な手法によって作られる高品質なヨーロッパ産食品のその名称と伝統を保護するために、EUが認証するシステム。グラナ・パダーノPDOは、1996年に認証を受けた最初の乳製品のひとつで、その規定は、生産地域、乳牛の試料、原材料、搾乳から熟成に至るすべての製造プロセスが詳細に定められている。

グラナ・パダーノPDOの品質管理、伝統の保護、販促を担うのが、生産者・熟成業者などで構成されるグラナ・パダーノチーズ保護協会。同協会は、EUが進める欧州産農産物のプロモーション「Happiness from Europe」の一環として、「ヨーロッパから届く幸せ。Ciao, Buon appetito!」キャンペーンを日本市場で展開している。

2025年より始まったこのキャンペーンでは、イタリア料理店「ヴォーロ・コズィ」のオーナーシェフ西口大輔さんをアンバサダーに迎え、プロを対象としたセミナーを開催。今年6月には2回目のセミナーとして、山手調理師専門学校(東京・深沢)において、西口さんと日本料理「銀座 きた川」の北川一行さんが、イタリア料理と和食それぞれでグラナ・パダーノPDOの魅力を引き出した。実演の前には、チーズプロフェッショナル協会顧問である佐藤優子さんがグラナ・パダーノPDOの基本知識を解説。併せて10カ月、16カ月、24カ月の、熟成が異なる三種の食べ比べを通して、熟成に応じて変化するこのチーズのポテンシャルを実際に体感した。

デモンストレーションのテーマは「魚介とグラナ・パダーノPDO16カ月熟成」。西口さんは、修業先のヴェネツィアのレストランの厨房で魚介のリゾットの仕上げにグラナ・パダーノPDOを加えることに衝撃を受けて以来、このチーズの虜になったと言う。「30年以上使い続けていますが、前菜前のストゥッツィキーニからドルチェまで実に幅広い応用力のあるチーズだと思います」。ヴェネツィア近郊の漁師料理「魚介のカッソピーパ」を現代的に解釈、グラナ・パダーノPDOで仕上げたオルツォット(大麦のリゾット風)と合わせ、同チーズを練り込んだパスタ生地を揚げて添えた。「特に貝類は海由来の塩味があるので、調味で使う塩の量には注意が必要。その点グラナ・パダーノPDOは塩味がマイルドでバランスが取りやすい」と言う。

西口大輔さんがつくる
魚介のカッソピーパ
グラナ・パダーノPDO(16カ月熟成)のオルツォット添え

下茹でした大麦とブロードを火にかけ、煮詰まり始めたら火からおろし、バター、すりおろしたグラナ・パダーノPDO、トマトソースを加え、陶器の器に入れる。これに、下処理して塩をした魚介を盛り付け、EVオリーブオイルを振って、150度のオーブンで10分加熱。仕上げにグラナ・パダーノPDOのパスタ・フリッタを添える。

北川さんは「鱧とグラナ・パダーノPDOチーズの茶碗蒸し」を実演。卵液に賽の目切りのグラナ・パダーノPDOを入れ、仕上げにも削りかけた。加熱と生、状態の違いを味わう楽しさを意図したと言う。「チーズは和食では難しい食材。しかしグラナ・パダーノPDOはクセが少なく、熟成した旨味はだしの旨味とも相性が良いと思います」と締めくくった。日本とヨーロッパ・イタリアの料理文化を通じて、グラナ・パダーノPDOの無限の可能性を実感するセミナーであった。

北川一行さんがつくる
鱧とグラナ・パダーノPDO(16カ月熟成)の茶碗蒸し
茹でてからだしに漬けたシイタケ、賽の目切りのグラナ・パダーノPDOを器に入れ、醤油、みりん、塩で調味した鰹だしベースの卵液を注いで蒸す。蒸し上がったら、焼いた鱧の骨と新タマネギでひいただしに片栗粉でとろみをつけたあんをかけ、仕上げに焼き霜の鱧、梅肉、小ネギをあしらい、グラナ・パダーノPDOを削りかける。

イタリア料理と日本料理の料理人が考えるグラナ・パダーノPDOの可能性

イタリア料理で使うポイント

熟成具合によって風味、味わいが異なるグラナ・パダーノPDOはその特徴を活かすことが大切。コースで使う場合、10~12カ月くらいの若いものから始め、プリモピアットには16カ月、そしてメインやドルチェには20~24カ月と、段階を上げていくと良い。特に10〜12カ月熟成のものは最も応用力があり、さまざまに展開できる。チーズそのものの塩味がマイルドなので、仕上がりの塩加減には注意を払いたい。また、デリケートな香りを守るため、なるべく加熱は避ける。特にリゾットやパスタに最後に加えるときは必ず火からおろす。ビスケットのように生地に練り込む場合は加熱しても問題ない。

西口大輔 にしぐちだいすけ

「カピトリーノ」吉川敏明シェフのもとで修業を始め、1993年に渡伊。ミラノの「サドレル」ではパスタシェフに。96年の帰国後、「ブォナ・ヴィータ」のシェフを務め、2000年に再び渡伊。「ロカンダ・ヴェッキア・パヴィーア」で5年間シェフを務め、2006年に東京・白山に「ヴォーロ・コズィ」をオープン。

Volo Cosi ヴォーロ・コズィ
東京都文京区白山4-37-22
TEL 03 -5319-3351
12:00~13:00(LO)
18:00~20:00(LO)
月・火 休

日本料理で使うポイント

淡い味わいを大切にする日本料理では、グラナ・パダーノPDOのように、旨味はあるがクセの少ないチーズなら使い勝手も良い。使い方としては、すりおろして揚げ物全般に。特にエビ、火を入れると甘くなるズッキーニやパプリカのような野菜の天ぷらには揚げたてに削りかけ、松茸のフライには衣にすりおろしを加えるとコクがプラスされる。また、鮎は蓼酢のように酸味のあるものが合うので、チーズの酸味は好相性。茶碗蒸しでは、蒸し地に生シイタケのだし漬け、タマネギの甘味を加えた鱧出汁あん、鱧の焼き霜、梅肉を組み合わせることで、グラナ・パダーノPDOの旨味とのバランスを図った。

北川 一行 きたがわ かずゆき

関西のホテルの日本料理店を経て、「日本料理しのはら」、移転後の「銀座しのはら」で篠原武将氏の右腕を務める。2022年9月、「銀座しのはら」の姉妹店として「銀座きた川」をオープン。寿司や天ぷらはもとより、西洋料理までさまざまな料理について研鑽を深める。

銀座 きた川
東京都中央区銀座2 -10 -11 マロニエ通り銀座館3F
17:00~23:00 月~金
12:00~14:30 土・日・祝
18:00~23:30 土
18:00~20:30 日・祝
火 休

グラナ・パダーノPDO講習会

セミナーの最後、グラナ・パダーノPDO使用歴30年を超える西口さんには他のチーズと使い分ける方法について、北川さんには茶碗蒸しの中に入れたチーズを最良の状態に保つ方法、佐藤さんにはグラナ・パダーノPDOの識別法やPDO認証マークについて現地と日本での認識事情など、参加者からさまざまな、時にディープな質問が投げかけられた。

修道士が生み出したチーズ、グラナ・パダーノPDO

PDO(原産地名称保護)に認定されているグラナ・パダーノは、ピエモンテ、ロンバルディア、ヴェネト、トレンティーノ・アルト・アディジェ、エミリア・ロマーニャという北イタリアの5州にまたがる地域で、定められた製法に則って作られるハードチーズ。1135年ミラノの南東に建立されたキアラヴァッレ修道院で、余剰の牛乳の保存方法として編み出されたのがその始まりである。搾乳後、自然に浮き出た乳脂肪を除いた牛乳、ホエイ(乳清)、仔牛由来のレンネット(凝固物質)が原材料。凝固したら専用の道具で麦粒(グラノ)ほどに細かく砕くことで、完成したチーズの内相に特有の粒立ちが現れることが、その名の由来。パダーノとは、生産地域であるパダーナ平原のことである。9カ月以上の熟成後、グラナ・パダーノチーズ保護協会による品質検査を受け、合格したらロゴの焼印が押され、出荷される。

大麦の弾むような食感と魚介のプリプリ感の相乗効果がポイントだと西口さんは言う。
北川さんが意図したのはチーズと魚介の旨味の競演。鱧の骨切りも披露。

本プロモーションは欧州連合の共同出資により運営されています。しかし、記載された見解および意見は著者個人のものです。必ずしも欧州連合または交付機関の見解を反映するものではなく、欧州連合および交付機関はそれらにいかなる責任も負いません。

text :Manami Ikeda photo:Hiroyuki Takeda

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