ペニンシュラが提案する中秋節の集い。人と会って食べ遊ぶ香港カルチャーの薫陶とは


麻雀で遊び、月餅とお茶を囲んで家族や友と語り、一年で最も美しい月を愛でる。ペニンシュラ・ホテルのような歴史ある香港企業だからこそ提案できる中秋節の過ごし方を、香港とゆかりの深い英国からお届けしよう。

中秋の名月ももうすぐ(今年は9月25日)。ロンドンの中華コミュニティーでも、各地で中秋節のお祝いが盛り上がっているところだ。楽しみ方としては中華レストランで季節限定料理を食べる、特別な月餅を贈りあう、ランタンを作るワークショップに参加する、はたまた友人を麻雀に招待して心ゆくまで勝負するなど。伝統に則り、団欒を楽しむのが慣わしなのだ。

月餅と言えば、ロンドンでも香港に本拠地を置くペニンシュラ・ホテルが2023年にオープンしたことにより、かの有名な季節の風物詩を手軽にいただけるようになった。ペニンシュラの月餅は、本場香港の中秋節では欠かせないと言われている。1986年に初めて販売された「エッグカスタード月餅」は、アヒルの塩漬け卵黄を混ぜた上品なカスタード餡を、バターを練り込んだ皮で包んだ小ぶりのもので、ここロンドンでも瞬く間に有名になった。

ペニンシュラ ロンドンの旗艦レストラン「Canton Blue (カントン・ブルー)」では、中秋節に際してさらに面白い取り組みをしていると聞きつけ早速訪れてみた。驚いたのは「麻雀クラブ」。キャセイパシフィック航空が香港の木工アトリエ「Start From Zero」とのパートナーシップで制作した美しい麻雀セットが主役。自家製手延べ麺、アプリコット・ジンと白酒のマティーニをお供に、伝統的な社交のひとときを楽しむ趣向。麻雀初心者が遊び方を知るための貴重なチャンスでもある。

ペニンシュラの特製月餅は贈答用に用意されているほか、1階にあるカフェでもいただくことができる。
深いブルーを基調としたインテリアは、19世紀の東西交易がテーマ。天井には美しい天体航法図が広がりロマンチック。

食事に関しては、中秋の9月中、気軽に楽しめる3コースのセット・ランチ、じっくり味わいたい5コースの豪華メニューを用意している。ロンドン初の女性点心ヘッドシェフであり、業界を牽引する存在でもあるLing Ling Zeng リンリン・ゼンさんが繊細な技で丹念に織り上げる点心を披露してくれるほか、2025年にエグゼクティブ・シェフに就任したWai Ming Wong ワイミン・ウォンさん監修による非の打ちどころのない広東料理の豊穣が待つ。

ロンドンでは戦後に香港系の移住者が増えたことから中華といえば広東料理が主流とされてきたが、現在は四川、湖南、雲南、ウイグルその他の地域料理が細分化され、蘭州麺や火鍋も大人気。成熟したマーケットが育っている。

そんな中、19世紀創業の香港上海ホテルズの傘下であるペニンシュラ・ホテルのCanton Blueは、本流から直接もたらされたエレガントなファイン・ダイニングだ。戦後にイギリス人とともに発展してきたチャイナ・タウンの系列とは一線を画し、19世紀から続く英国との関係を再解釈し、コロニアルな要素も加味しつつクラシック路線で客を魅了している。

英国でも指折りの点心シェフが監修する点心。右はキャビアをあしらったロブスターの点心。左は鶏と黒ニンニクの焼売。
中秋節のセット・ランチの主菜。豆腐の甘辛煮はコクがあり、大変上品で味わい深い芸術品。
こちらも中秋節セット・ランチにあるスズキの蒸し煮。

さて、もう一つの興味深い季節イベントとして、月餅作りのマスタークラスがある。点心スペシャリストのリンリンさんとそのチームが講師を務め、月餅作りの真髄を学んだ後はこだわりの3コース・ディナーへと続き、最後はマスタークラスで作った月餅を味わって締める贅沢なクラスだ。

気品ある空間で麻雀を楽しんだり、トップシェフによる月餅作りを体験したり。いずれもラグジュアリー・ホテルだからこそ提案できる、特殊な異文化体験だ。香港の中秋節をロンドンで知るのに、これ以上のものはない。筆者としては両方を試してみたくてたまらない気持ちになった、とだけ付け加えておきたい。

アラカルトでいただける北京ダックはシグネチャーの一つ。目の前でカービングしてくれる。アロマティックな皮を楽しんだ後、肉は別に調理して楽しませてくれるので2度美味しい。
写真©レストランPR
右が点心シェフのリンリンさん。国内外で30名以上の点心シェフを育成してきたほか、ドバイ、マイアミ、ドーハなど世界各地でのレストラン立ち上げに関わってきた。左がエグゼクティブ・シェフのワイミンさん。ペニンシュラ以前も数々の名門ホテルで腕を鳴らしてきた方。
写真©レストランPR
ペニンシュラ・ホテルの入り口を守る特徴ある門獅は、ロンドンでも各所に配置されている。

色とりどりの磁器に囲まれたCanton Blueのダイニング・ルームに座っていると、まるで万華鏡の中にいるかのような錯覚を起こす。茶、絹、香辛料、中国磁器を積んで東から西へ渡った帆船。それら東西交易の記憶の断片がほの青い光の中でゆらめき、星を刻んだ航海図に照らされ、視線を動かすたびに別の景色へと変わっていく。

その豊かな歴史と文化を背負い、後世へと伝えていくのがペニンシュラ・ホテルの役割なのに違いない。

Canton Blue at The Peninsula London
https://www.peninsula.com/en/london/hotel-fine-dining/canton-blue

text・photo:江國まゆ Mayu Ekuni


LONDONの食・レストラン事情をもっと読む ▶

3,000記事以上 会員限定記事が読み放題 無料会員登録

SNSでフォローする