ちょいワルになれないぼくが送る おじさん流レストランで、女性に素敵と思われる法#2


好き嫌いを聞くのはNG
「オレの店」を確保しよう

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おじさんは、ついに意中の女性を食事へ誘うことに成功できたとしよう。次にくるのが「どこへお連れするか」という当然ながらさらなる高いハードル。ここでコケては、食事もその後のコミュニケーションもあったものではない。正念場だ。

まず誰もが考えるのは「何か食べたいものある?」という質問。これはなんとしても避けたい。何か食べたいものがあるかと聞いてしまったら、前回お話した内容、つまり何も理由を告げずに誘った意味がなくなってしまうからだ。では好き嫌いを聞くか。それもあまり感心できない。おじさんが食事に誘いたく思うぐらいの女性なら、普段の会話から彼女は何が好きで何が嫌いかぐらいは注意を向けていてほしい。また、好き嫌いを聞いても、生魚がダメなら寿司は無理だなとか、パクチーが嫌いなのでエスニックは避けようとか、そんな消去策としてしか活用できない。基本的に最初の食事から偏った食材の料理しか出てこない店に行くべきではないし、アラカルト中心でメニューアイテムが多いレストランを念頭に置くことが必須。

では、ハヤリの店を調べるか、それとも伊藤にメールして聞くか(笑)。いずれにしろ、おじさんよりイマの女性の方が数多くレストランを知っているのは間違いないわけで、そんな一過性の情報で勝てるわけがない。うーん。

さて話は変わるが、ぼくは仕事上でお付き合いのあるおじさんに対し、自分が食べ好きで、それが高じて雑文を書いている事実などを明かすことはほとんどない。というのも、それを言ってしまえば必ずお店選びの役割がぼくに回ってきて、つまらないからである。

おじさんは、自分で稼ぐようになって少なくとも15年以上は外食をする機会があったはずで、その間の経験からたいてい自分の店と呼べる場所をお持ちだ。会社や自宅近くの小料理屋だったり、銀座や赤坂といった繁華街の渋い居酒屋だったり。おじさんはおのおのに「オレの店」を確保し、必要に応じて自分のホームグラウンドとして活用しているのだ。

そんな「オレの店」は、派手なチェーン店じゃなく、かといって高額な一流店でもなく、気の置けない、あまりマスコミ等では知られていない和食店が多い。ぼくとしても、そんなとっておきの「オレの店」に連れて行っていただけるのは、この上ない機会なのである。

つまり、首尾よく食事の約束をとりつけた女性を、まずは「オレの店」にお連れするのがやはりベストだろうと思う。もしそんな店に心当たりがなくても、上司・同僚にちょっと聞いてみれば、たいていひとつやふたつ候補が上がるものだ。また、女性側としても、友達や同年代の男性とは、薄暗いダイニングバーやにぎやかなイタリアンのような所がほとんどなので、渋くて料理のおいしい和食系の店なら申し分ないだろう。そんな店をゆっくり思い出して、まずは作戦を立ててほしい。ただ、そこに予測できない落とし穴、盲点があることを、ぜひ認識しておいていただきたい。

そこでは必ずお箸を使うことになります。あなたは、きちんとした正しい箸使いができる自信がありますか。箸の上げ下ろしは、ていねいに間違いなく行えますか。

聡明で礼儀作法を重んじ、しかも食べることが大好きな女性は、まず男性と食事をするとき相手の箸使いを見る。そして、その使い方や作法をチェックしながら心の中で採点するのである。

加えて言えば、和食の料理人も、一流になればなるほど客の箸の使い方を見ている。どんな敷居の高い和食店においても、ススっと店側に受け入られ自然と常連のように扱われる客がいる。そんな人はたいてい完璧な箸使いをしているものだ。

箸の使い方については、いずれまた詳しく論じたいと思っているが、まずはご自分の箸使いを見直し、その上で馴染みの和食店に行くか、あえてナイフ・フォークの店に挑戦するか(ナイフ・フォークの使い方がぎこちないのは、おじさんなら許容される範囲だろう)、それはご自身に判断をゆだねるとしよう。

伊藤章良―文、illustration by Yuko Mori

伊藤章良
本業はイベントプロデューサーだが、3年間にわたって書き続けた総合サイトAll Aboutの 「大人の食べ歩き」では、スジの通ったレストランガイドの書き手として人気に。

本記事は雑誌料理王国第147号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第147号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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