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清流の環境が味を決める!全国鮎マップ


香ばしい香りとほろ苦さに夏の渓流を感じさせる鮎。清流のコケを食む鮎にとって、川の環境そのものが味を左右する。今回はなかでも優良な産地を紹介。全国の川に生息している鮎、それぞれの特徴を理解したい。

各地の鮎に詳しい料理人 虎屋壺中庵 岩本光治さん

コケを食べる鮎には、ほかの魚にはない清涼感のある香りとほのかな苦味があります。だから、単純明快な調理法でこそ持ち味が生きる。鮎は、自然環境によって質が大きく左右されます。本来、日照等の関係から太平洋側の川が鮎にとってよい環境といわれていましたが、近年は相対的な評価は変わりつつあり、むしろ海産鮎か放流鮎か、その質の問題が大きくなっています。河川の荒廃がもたらす影響も甚大なもので、年々質が下がっているのは残念ですね。

1. 青森県

  • 赤石川
  • 追良瀬川

世界遺産の白神山地から流れる赤石川の金鮎が有名。魚体が金色を帯びていることに由来し、「清流めぐり利き鮎会(高知県友釣連盟主催)」で2度準グランプリを受賞。同じく白神山地を源流とする追良瀬川の鮎は銀鮎と呼ばれる。また鰺ヶ沢町では、より天然に近い環境で育てる独自の養殖技術により、天然に負けない養殖鮎を作り出した。

2. 秋田県

  • 米代川
  • 雄物川
  • 真瀬川
  • 子吉川

鮎の生息する川が多く、漁場は20以上に及ぶ。中でも、河口から約70km上流まで遡上を妨げる横断工作物がない自然豊かな米代川は、支流の大湯川、岩瀬川、早口川などとともに「大アユ、尺アユが釣れる川」として知られている。水量豊かな雄物川の鮎も有名。阿仁川は、日本一北にある養殖地としても有名で、冷たい水で長時間かけて育てることにより、味がよいといわれている。

3. 岐阜県

  • 長良川
  • 木曽川
  • 揖斐川
  • 馬瀬川
  • 和良川など

日本一の鮎王国。郡上市を流れる長良川の鮎はふっくらとした甘味があり、2007年に「郡上鮎」として商標認定された。また、同市和良町を流れる和良川は2008年に平成の名水百選に認定され、オオサンショウウオなども生息。梅花藻などの良質な藻を育む清流で、和良鮎は「清流めぐり利き鮎会」で、2度のグランプリと3度の準グランプリを受賞。馬瀬川の鮎は、岩本氏が高く評価。

4. 滋賀県

  • 安曇川
  • 愛知川
  • 野洲川

琵琶湖は、春に川を遡上して石の藻を食べ大きくなる“大鮎”と、夏の間も湖に留まり、秋になって川に上り産卵する“小鮎”がいる。海で成長した稚魚が遡上する海産鮎とは異なる生態を持つ。琵琶湖は鮎の養殖が盛んで、海産鮎や人工鮎に比べてウロコが細かく、皮や骨もやわらかいのが特徴。漁獲高の多くを、活鮎が占めている。大津「比良山荘」では毎年、安曇川の鮎が提供される。

5. 和歌山県

  • 古座川
  • 日高川
  • 日置川
  • 富田川
  • 紀ノ川

紀伊山系から流れる多くの川に鮎が生息し、釣り人に人気のエリア。川手寛康さん、濱崎龍一さんも使用。紀ノ川の鮎はスイカのような香りが強く「香り鮎」とも呼ばれる。また、紀ノ川や富田川など川の伏流水を利用して育てられる養殖アユは、生産量日本一を誇る。有田川では日本で唯一「徒歩漁法」が残っていることでも有名。一人の鵜匠が一羽の鵜を操り、川の中を歩いて鮎を捕る。

6. 島根県

  • 江川
  • 高津川
  • 神戸川

高津川の鮎は、「鮎正」山根恒貴さんが使用。一級河川の中でも珍しくダムがなく、つねに新鮮で豊かな水量をたたえている。国土交通省の一級河川水質調査でも2年連続1位になるほど。豊かな森林からの清流が流れ込むことで、鮎の餌となる良質のコケが育つ。高津川では近年、高津川地場産種苗の放流に取り組み、平成22年には100%高津川地場産の稚あゆ放流を達成している。

7. 徳島県

  • 吉野川
  • 勝浦川
  • 海部川
  • 鮎喰川

吉野川を筆頭に、勝浦川など自然豊かな川で釣り人からも人気の高いエリア。吉野川中流域の「大歩危峡」には、巨大な鮎がいるともいわれる。「海部川と鮎喰川はとくに水がきれいだが、水に栄養がないのか味はもうひとつ」と岩本さん。鮎喰川や鮎苦谷川など、鮎を名前に冠した川があり、つながりの深さを感じさせる。また、吉野川や那珂川流域では地下水を使用した養殖も盛んだ。

8. 高知県

  • 仁淀川
  • 四万十川
  • 奈半利川
  • 物部川

日本最後の清流・四万十川や仁淀川は、伝統的な火振り漁が行われている。仁淀川はダムがありながら支流が多く、水質のよさが有名。岩本さんおすすめの安田川はダムがなく、川本来の生態体系が今も息づく。全国各地の河川の鮎を食べ比べ、グランプリを決める、高知県友釣り連盟主催の「清流めぐり利き鮎会」も毎年開催。安田川の鮎は、過去2度のグランプリに輝いている。

9. 熊本県

  • 球磨川

球磨川は、熊本県南部の人吉盆地を貫き、川辺川などの支流を合わせながら八代平野を経て八代海に注ぐ一級河川であり、日本三大急流のひとつ。この球磨川と川辺川の鮎は、姿、香り、味と三拍子が揃い、築地などで高値で取引されてきた。特に川辺川の鮎は、時に一尺(約30㎝)ほどになり、“尺鮎”と呼ばれている。大きいだけでなく、急流で鍛えられて引き締まった身はほかにない特徴。

本記事は雑誌料理王国2012年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2012年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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