【垂涎看板肉料理 】ブルッチャブルッチャ イタリア流の炭火焼き


肉職人〝マチェライオ〟によるイタリア流の炭火焼き

ブルッチャブルッチャ 猪狩春樹さん

「僕が7年を過ごし、料理を教わったイタリアのフィレンツェは、内陸でもあり肉料理中心の古都。それが僕の料理のベースとなっています」

 6月に神楽坂に開店した「ブルッチャブルッチャ」のシェフ、猪狩春樹さんは、食肉店の肉職人を意味する〝マチェライオ〟の肩書きを自ら名のる。22歳でイタリアへ渡り、フィレンツェをはじめイタリア各地で10年間研鑽を積んだ。日本へ帰国した後、「コヴァトーキョー」で、「ブルッチャブルッチャ」代表の榎本慎也さんと会い、シェフとなった。

左はアメリカ・カンザス州のアンガス牛Tボーン、右は北海道・根室のホルスタイン牛サーロイン。これに加え、個体数が少なく希少な岩手県「田村牧場」の短角牛も仕入れている。猪狩さんはイタリア流の「吊るし」という方法で肉を乾かして、旨味を凝縮。

イタリアで体感した噛めば噛むほど旨い肉を日本で

 猪狩さんは、イタリア流の熟成方法「吊るし」を採用して、乾かすことで、食品の成分と結びつかない自由水を飛ばし、旨味を凝縮させる。今回看板料理として披露してくれたアメリカ・アンガス牛のTボーンステーキの肉は日寝かせたという。「さわった時の肉の撥ね返りで、熟成の度合いがわかります。イタリアではシェフがその度合いを見て、その日提供する肉を選ぶ。僕らが肉をゲストの前に持っていくと、1キロくれ、2キロくれと注文が入り、まとめてカットして強火で焼き上げるんです。それがトスカーナのグリルスタイルでした」

 そのスタイルを日本で追求し、試行錯誤した結果、日本独自の炭火焼きにたどり着いた。

「イタリアで使っていた石焼きや、ガス火などいろいろ試しましたが、炭火が一番という結論です」

炭火は遠赤外線を発生させ、強い熱を生み出す。網において間もなく肉の脂が炭に落ち、煙が上がる。「この煙がスモークしたような香りを肉にまとわせてくれるんです。お客さんのテンションも上げてくれますよ(笑)」

肉から程よく滴る脂が炭に落ち、芳しい煙が立ち上る。オープンキッチンのこの店では、目の前でグリルされる肉に、ゲストは視覚も嗅覚も刺激されることだろう。
肉はもちろん、野菜も炭火で調理する。「旬の野菜を食べれば体も喜びますよ」と猪狩さん。

 7~8分焼いたのち、いったん休ませ、再度炭火で熱を加え、厚めにカットし盛り付ける。同じく炭火で焼いたカボチャやズッキーニなど、旬の野菜を添え、刻んだパセリ、塩、コショウ、オリーブオイルを振りかけて完成だ。

「つい大盛りにしてしまうんです。せっかく来ていただいたなら、動けなくなるくらい満腹にしたい(笑)」

キッチンと客席がフラットなこの店には、ゲストをハイにさせる芳しい香りが、今日も漂っている。

フィレンツェ風Tボーンステーキ 炭火焼き
「おいしい食材には、塩とコショウとオリーブオイルで十分」と猪狩さん。燻されたような香りがほんのり感じられ、食欲が増す。ジャガイモのソテー、炭火で焼いたトマト、ニンジン、タマネギなど、旬の野菜との相性も抜群だ。

Haruki Igari
1976年千葉県生まれ。99年にイタリアへ渡り、フィレンツェ「ラ・ジオストラ」で5年間料理長を務めるなど、フィレンツェを中心に10年間を過ごす。帰国後「コヴァ トーキョー」でシェフを務め、 2015年6月に独立し、「ブルッチャブルッチャ」を開店。

ブルッチャブルッチャ
Brucia Brucia
東京都新宿区天神町77都住創ラスティックビル1F
● 03-6280-8540
● 17:00~23:00
● 月休
● 26席
www.bruciabrucia.com

料理王国=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国第256号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第256号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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