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【中国四大料理・広東】素材の持ち味を最大限に引き出す


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素材の持ち味を最大限に引き出す広東料理

広東省の省都広州には乾貨物など多彩な食材が集まり宴席料理が発展した。また海に面した福建や潮州では塩干しの魚や海の幸を用いた料理が多い。いっぽう香港は貿易港であったため西洋の影響を受け、洗練された料理が生まれた。

代表的技法代表的料理
清蒸チンツエン 清蒸鮮魚チンツエンシエンユイ ]鮮魚のあっさりとした蒸しもの
デュオ 白灼中蝦パイデュオチュンシャー ]巻蝦の湯引き、特製ソース添え
ドゥン 清燉冬瓜チンドゥンドンゴワ ]冬瓜の五目具炒め
焼烤シャオカオ 叉焼チャオシャオ ]チャーシュー [焼烤乳猪シャオカオユィヂュー ]仔豚の丸焼き

乾物が広東料理を世界に広めた

広東料理のふるさとは、中国南部、南シナ海沿岸の広東省や香港である。亜熱帯性気候で夏は暑く、雨も多い。土地は肥えて、米や野菜がよくとれる。パイナップルやマンゴーなどの南国のフルーツがあり、新鮮な魚介類も手に入る。「食在広州」と呼ばれる所以だ。

「新鮮なうちに食べるだけでなく、乾物にして保存する工夫をした。野菜も肉も海産物も、みんな一度塩ゆでにしてから干します。広東料理が世界中に広がったのは、この乾物があったからなのですよ」と、ホテルオークラ東京・中国調理総料理長の梁樹能さん。

ナマコやフカヒレは宴席に欠かせない高級素材。だしをとるのは、シイタケ、干しエビ。遠く離れた外国へ行っても、乾物があれば祖国の味が作れる。塩ゆでしてから干すので、もどせばやわらかく、生のときよりも風味が増している。もどし汁も、うま味のあるスープになる。

「乾物は中国全土で食べられていますが、乾物をもどす技術は、広東料理がいちばん進んでいると思います」とウェスティンホテル「龍天門」料理長の陳啓明さんは胸を張る。

日本でも人気の高い「飲茶」も広東・香港が発祥だ。シュウマイ、餃子、汁物、麺さらにスイーツが用意され、具は牛肉、鶏肉、魚介に野菜とバリエーションに富む。それぞれに工夫を凝らした何十種類もの点心は、そのまま広東・香港の「食」の豊かさを表している。

豆豉炒鮮蛤ドゥシーチャウシンハム ハマグリの豆豉炒め 
大粒のハマグリをさっと熱湯でゆで、ニンニクやショウガ、豆豉とともに炒めたもの。豆 の風味が貝の甘味を引き出し、まろやかで豊かな味わいを出している。

シンプルに素材を扱い、じっくりとうま味を引き出す

広東料理の調理法の「灼」というのは、新鮮な魚介類をさっとボイルして、ネギやショウガなどの風味をつけた熱い油をかけること。「清蒸」は塩をふっただけの魚介を蒸したものをいう。

「鮮度のいい、良質の素材があればこそ生まれた調理法。手間をかけずに、素材の持ち味を、最大限に生かすのが広東料理なのです」と梁さん。

梁さんも陳さんも、食材探しに実に熱心だ。日本や中国、さらにオーストラリアなどから食材を買い付けるだけでなく、農家と契約して中国野菜を育て、厨房に水槽を用意してその日調理する魚介を活けておく。広東料理を極めるということは、とことん素材と向き合い、探求することでもあるのだ。

いっぽう、じっくりと時間をかけて、うま味を引き出す調理法もある。「燉」というのはセイロで長時間蒸す方法。冬瓜やシイタケ、スペアリブなどがよく使われる。「焼烤」というのは、チャーシューや仔豚の丸焼きなどに代表されるもの。下味をつけた肉を窯で香ばしく焼き上げるのだ。

「野菜の下処理で湯通しをするのも、広東料理の特徴です。軽くゆがいてから、強火でさっと火を入れる。こうすると、余分な油を吸わず、素材観を生かして仕上げることができるのです」と陳さん。

金銀乾鮑魚カンガンコンフォウユイ  干しアワビと干し浮き袋の煮込み
希少な吉浜産干しアワビと東南アジア産の干し浮き袋を、3日かけてもどす。鶏と金華ハムでとった上湯スープで半日炊き、中国醤油などで味付けする。

西洋料理を最初に取り入れた香港

広東料理について語るとき、忘れてならないのは香港の存在だ。

「香港は1898〜1997年の約100年間、英国領でした。西洋料理が入ってきて、バターや牛乳、トマトケチャップを自然と使うようになりました」と梁さん。

貿易港として発展した香港では、伝統的な技法が大切にされるいっぽうで、新しい料理が生まれ、洗練されていく。戦後、腕のいい職人が外国に出て行った時代もある。日本の広東料理は香港の食材、料理を目標にしてきた。香港は「食」における流行の発信地。世界中が香港に注目しているといっても過言ではない。

「料理は日進月歩。毎日毎日進んでいく。新しい素材が登場してくれば、それを使いきるだけの力を持っていなくてはならない。時代の要求を知るセンスも必要だ」と梁さん。

近年、日本やフランス料理などの影響を受けた、美しい盛り付けや、健康志向に応えた調理法などを取り入れた広東料理も登場し、人気を得ている。

text by Hisae Nakashima/photographs by Yukari Nagase

本記事は雑誌料理王国159号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は159号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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