フランス料理が取り込んだ中国料理の伝統の調理法【蒸】の技!


現代のすべての料理人に「器」「野菜」「テクスチャー」が求められていると思います

本国の料理を再現する以外の表現が必要とされている

本場の中国料理を日本に伝えた最初の先達たち。その後、日本に中国料理を根付かせ、花開かせた先輩料理人――。「自分たちは、その次の第三世代。諸先輩方が作り上げたものを未来へ繋げていかなければならない」と、東さんはいう。それは、日本で外国の料理店をやることの意味を、日々考えることでもある。「本国の料理を再現する以外の表現が必要とされる時代にさしかかっていると思います」

だからこそ今、器にもこだわり、素材の質にこだわり、日本の文化を学ぶ。「日本に生まれた中国料理の料理人」として、世界で戦うために、東さんは日々精進を続けるのだ。

器にこだわるのは、日本の中国料理だから

「以前と違って、自分がこんな器にお料理を盛り付けたいというイメージができてきた」という東さん。陶芸家、窯元に足繫く通い、自分だけの器を作り始めている。こちらは、その一部。

①富山市の「Shimoo Design」②佐賀県有田「カマチ陶舗」 ③佐賀県有田「徳幸窯」 ④富山市の陶芸家、釋永岳(しゃくなが・がく)氏作 ⑤神戸「森山硝子店」

「新緑」の野菜や生麩には、それぞれ異なる調理が施されている

芽キャベツ
小気味よい芽キャベツの食感を残すため、さっと蒸すのみ。
コゴミ
少量の鶏がらスープとともに、軽く真空し、旨味を浸透させる。
生麩
スープを含ませる。火を入れトロッとしたナスのような食感をイメージ。
タラの芽
少量の鶏がらスープとともに、軽く真空し、旨味を浸透させた後、フライパンで表面を軽く焼く。
ウルイ
繊維の食感や粘りの違いを楽しんでもらいたいと、穂先と根の部分を生で。

ひと皿の構成力を高めるパーツとして乾物を考えてみる

左は、水で戻した干し貝柱を揚げたもの。香ばしさとともに、水分が抜けて凝縮感のあるテクスチャー(食感)が生まれている。「蒸す~甘鯛・筍・雫」にかかっている。
右は、漢方でも使われる中国の柑橘の皮を乾燥させた「陳皮(チンピ)」をパウダー状にしたもの。肉や魚に添えても面白い。

東 浩司/Koji Azuma
1980年、東京都生まれ。
実家は、東京・新橋の老舗中国料理店「ビーフン東」。20歳から東京の「維新號」グループで5年修業した後、「ビーフン東」の料理長に。2011年に大阪・西天満の一軒家の1階に「Chi-Fu」、地下1階に「ビーフン東」(昼)と「アズー」(夜)をオープン。16年には、オーストラリア産ラム肉の親善大使「ラムバサダー」に就任した。

「不易流行」の書は、京都の書道家、清水菁花(せいか)氏による。
中国料理店のイメージとは異なるモダンレストランのような店内。

シーフ
大阪市北区西天満4-4-8 1F
06-6940-0317
● 11:30~13:00LO 17:30~20:30LO
● 日、月昼休
● コース 昼5500円~ 夜12000円~
●24席
http://chi-fu.jp/
税込価格、サービス料10%別

江六前一郎=取材、文 村川荘兵衛=撮影

本記事は雑誌料理王国273号(2017年5月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は273号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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