「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」2022年度の表彰、発表会が開催されました


編集長の野々山が、取材先で出会った様々なエピソードを綴る美味日記。8年前の創設に関わった「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」8年目の記念表彰式に行ってきました。僕が地方創生について知るきっかけになった「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」とは?

「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」幹事長の佐竹正範 福井県観光連盟観光地域づくりマネージャーの司会進行で始まった8回目の表彰式。

2015年に始まった「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の表彰制度。当初は、様々なメディアや民間企業が集められ、内閣府の会議室でどのような賞にするかの打ち合わせが数回行われました。たまたま僕は、発案者の1人、村上敬亮内閣府参事官(当時)現デジタル庁統括官にお誘いを受けて参加しました。当時集められた人たちは民間企業の社員だったので、自分も含めて、それぞれの人たちが国からの補助金目当て、という感じもありました。2年目になると、維持費が必要になるので当然、会費を払わなければ参加できなくなりました。当時勤務していた会社の意向もあって、僕は遠くで見守るだけになっていたのですが、ずっと気にはなっていました。毎年来るメールで、その年の受賞者たちをチェックしていたのです。それが今年は、8年目を記念して授賞式を公開でやるので先着順で参加出来るとのお知らせ。すぐに申し込み、今回は料理王国の編集者として「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」を取材することになったのです。

2022年度の「地方創生賞」コト部門、モノ部門の受賞者の方たちです。

「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」とは何か? 公式HPには以下の説明があります。

地域の中には日本全体ひいては海外にも通用する潜在力の高い名品やストーリーがたくさん眠っています。ただ、地域の外にいる消費者は、こうした未開拓の資源の存在をほとんど知る機会がなく、また、地域の側もそのポテンシャルをどう伝えればいいのか、戸惑いがあるのが現状です。

地域の素晴らしさを域外の消費者に直接伝えようとする「地域のあらたなチャレンジ」をより多くの人に知ってもらうべく、意思を同じくする民間企業が知恵と力を合わせて、地域に眠る名品とその名品を支えるストーリーや取り組みを様々な角度から発掘する。政府の後援も得ながら積極的に表彰することで、地域の将来を支える名品とその市場開拓と“地域のファン化”を支援する。それが、「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の目的であり、理念です。

一次審査では、1.誰もがわかるシンプルさ、2.新しいアイデアが入っている、3.誰もが欲しくなるか、参加したくなる、4.写真映えする、5.思わず人に教えたくなる、そして6.地域が元気になる、という観点から各5点×6項目の30点満点で採点され選考されます。そして最終審査は、1.わかりやすさやアイデアの新しさ、2.誰もが欲しい、写真映えがする、ストーリー性がある、そして3.人と共有したくなり、将来性があり、地方創生への貢献度がある、の3点を最終審査員が、各10点で採点して30点満点で採点します。

最終審査に残った応募者の中から、実行委員会特別賞と地方創生担当大臣賞が決まりました。

今年の受賞者の内容は公式HPから見ていただくことにして、大賞を受賞した広島県廿日市市の「紙布バッグ」と福岡県うきは市の「うきは酒宿いそのさわ」の二つはさすがに大賞を受賞するだけの価値ある地方創生のアイデアだったと思います。特に酒宿は、酒蔵に宿泊して、チェックイン(精米)からチェックアウト(出荷)までを酒造りを学びながら楽しめるというアイデア。まずは(洗米)で宿泊者は醸造タンクのシャワーで体を清め、(蒸米)で酒樽サウナで蒸し上げられ、仕込み水の醸造タンクで水風呂、(仕込み)でウェルカムドリンクの日本酒をいただき、(火入れ)で食事を楽しみ、(貯蔵)で倒れ込むように就寝。(瓶詰め)でお土産の日本酒を選び、(出荷)でチェックアウトするという徹底ぶり。ここまでやるアイデアと実行力に感心しました。

今年で8回目ということで、過去の受賞作品を振り返るコーナーも。第一回の地方創生賞を受賞した、僕も覚えている「おやさいクレヨン」は、今では他の地方からの問い合わせもあって、事業が発展しているそうです。去年の地方創生大賞の鹿児島県阿久根市の「イワシビル」。イワシの丸干し屋がイワシビルというお店を2017年にOPEN。1Fショップ・カフェ、2F丸干しのオイル漬けである「旅する丸干し」等の製造工場、3F簡易宿泊施設という変わった組み合わせのビルで、日本全国、海外からもお客様が集まるそうです。宿泊客は家で焼くと煙が気になる丸干しを使った朝食を。今ではこの朝食を食べるために来られるお客様も多くいらっしゃるとのこと。

国からの後援は受けてはいるものの、補助金なしで民間だけで8年も続けてやっている「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」。スタッフは大変だったでしょう。僕も金にならないのにまた内閣府の会議か、というような目で当時勤めていた会社からは見られていたと思います。当初の幹事の方達の多くがそれぞれ転職して、実際に地域のプレーヤーになっているという話には感動しました。何しろ、当時はよく懇親会と言っては飲みながら、みんなで夢を語っていましたから。僕もずっと気にはなっていたものの、何もできずに8年間を過ごしたんだなぁと反省しています。

第一回目から実行委員長の古田秘馬umari代表プロジェクトデザイナー。この風貌なので内閣府に入る時はいまだに毎回、職質を受けると会場を笑わせていました。
第一回目から最終審査委員を務める増田寛也日本郵政株式会社社長、料理家の和田明日香さん、羽田未来総合研究所社長の大西洋さん。
第一回目からの発案者、村上敬亮デジタル庁統括官と西経子内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局内閣審議官

この8年間で、SNSのおかげで、地方の情報がかなり伝わるやすくなったとはいえ、その分、情報が氾濫していて、良いものがすぐに良いとは伝わりにくい時代。ここでいう「良いもの」とはサステナブルなもののこと。つまり長く続く要素がないと地域の活性化にはつながりません。地域社会や地域経済を巻き込んだものにならないとふるさと創生にはなりません。この表彰制度が果たした役割は、マスメディアには乗らないものでしたが、参加した人たち、地域にとっては大変貴重な経験をもたらすものになったと思います。表彰制度はこの8回目で一度リセットされ、次回からは新たなフェーズに移っていくとのこと。次のステージに期待しています。村上敬亮デジタル庁統括官が繰り返し言っていましたが「決して1人では戦わないでください。徹底的に繋がること、色々な距離感の人とうまくやっていってほしい」という言葉が、心に沁みました。

料理王国では、まだ知られていない、ふるさと名品のような取り組みを「料理王国100選」という名称で13年間続けて応援しています。一つの媒体ができることには限界がありますが、料理王国の強みである著名なシェフたちが著名バイヤーと共に審査をするユニークなものです。詳細は、ぜひwebページでご覧になってください。

料理王国では、今後も誌面やweb版料理王国で、ふるさとのまだ知られていない食に関する名品を取り上げていきます。もちろん「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」ともコラボして、サステナブルな企画でふるさと創生を目指したいと思います。

問い合わせ先
ふるさと名品オブ・ザ・イヤー事務局
E-mail:furusatomeihin@jtb.com
営業時間:月~金 9:30-17:30(土日祝休業)

text・photo:野々山豊純

関連記事


SNSでフォローする