小谷さん夫妻の出会いは、ふたりの勤務先だった「さくらぐみ」。そこで料理を担当していた聡一郎さんと、ピッツァイオーラーの紀三子さんが、ふたりで独立したのだ。
紀三子さんがナポリへピッツァ修業に出たのは17年前。「さくらぐみ」を離れることができないオーナー西川明男さんの代わりに修業に行ったのだ。当時、日本ではナポリピッツァ自体がまだほとんど知られていなかった。しかし帰国後、本場仕込みの味は当然、評判を呼んだ。紀三子さんは一躍「有名人」になった。
紀三子さんが「私の嫁入り道具はこれ」と言うナポリ製のピッツァ窯は、西川さんからのプレゼントだ。
この店のもうひとつの名物は鮮魚料理。丸ごと1匹を使ったアクアパッツァや香草焼きだ。素材は日によって違うが、新鮮さと品質の高さは「さすが明石」と唸らせる。
「思いっきり食べていただきたいので、グループでの来店をお勧めします」と、聡一郎さんは言う。
しかし、実は肉料理にも自信がある。悪天候で不漁の日は「肉を食べてもらうチャンス」だと思っている。「消し炭で焼くビステッカなど、食べてほしい肉料理はあるんですが、初めての方には魚介を勧めます」
掲載のパスタはその象徴的なもの。一度食べたらハマってリピーターになる常連が多い。ナポリの家庭の味と言ってもいい。今回の唐辛子だけでなく、ルーコラやバジリコも自家栽培をしている。アットホームな店に似合う、アットホームな素材もまた、この店の魅力なのだ。
独立にあたってふたりが理想としたのは、リニューアル前の「さくらぐみ」だった。「気負わずさらっと入れるトラットリア&ピッツェリア。とにかく明るくて旨い店にしたかった」と、紀三子さんは言う。
独立の3カ月後に出産という、慌しい時期を乗り越えた小谷さん夫妻。紀三子さんはその後、子育てに専念しながら職人を育成してきたが、今春には下のお子さんが就学するため「そろそろ復帰しようかな」と思案中だ。紀三子さんが育てたピッツァイオーロも3人いる。しかし「チーロ」の真骨頂は、小谷さん夫妻が揃ってこそ。おいしくてボリュームもあって、夢中で食べてしまう聡一郎さんの料理と、紀三子さんのピッツァを待つファンは、少なくない。
スパゲットーニ…120ℊ/塩…適量
ソース(作りやすい分量)
豚モツ(肺、心臓、脾臓、食道、肝臓)…500ℊ/ローリエ、セージ、ローズマリー、唐辛子(ペーストにしたもの)…各適量/トマトペースト…100g /赤ワイン…100㏄/ラード…80ℊ/オリーブオイル、塩…各適量
1. ソースを作る。豚モツを細かく切り、水にさらして、水が透明になるまで替えながら血抜きをする。鍋にオリーブオイルを熱して、豚モツを炒め、水分がなくなってきたら赤ワインを加えてアルコールを飛ばす。ハーブ類、トマトペースト、水(分量外)を加えて、豚の食感が残る程度まで煮る。
2. スパゲットーニは塩を入れた湯でゆでる。
3. 1のソースを1/4量ほどとって温め、2を和える。
チーロ
CIRO
兵庫県明石市中崎2-4-1
078-912-9400
● 12:00~13:30LO
(土・日・祝は~14:00LO) 17:30~21:15LO
● 月休(祝の場合翌日)
● 24席
藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影
本記事は雑誌料理王国第246号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第246号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。