「カレー活動を始めてから20年間、常に見据えているのは日本のカレーの未来です。そのために、カレーとは何か?を突き止めたい」というのが「カレーのOS」水野仁輔の変わらぬコンセプト。カレーに特化した出張料理集団「東京カリ~番長」を結成したのが1999年。それを皮切りに数々の“カレー活動”を立ち上げて継続してきた水野仁輔氏の初の著作は2001年に出版された「俺カレー」。「絶対的な美味しさを追求することよりも、たくさんの個性を楽しむ」ことをステイトメントに掲げ、“俺的”なカレーの話を存分に語り上げた。以来、毎年必ず1冊、多い年には数冊を出版し続け、2020年5月出版の最新刊で著作は53冊を数える。
毎年出かけるインドへの探究の旅、インド料理人を集めた研修会、スパイスを勉強する集まりなど、自らで立ち上げたさまざまなラーニングの機会で得たナレッジをまとめた書籍の数々の中から、このページではカレーの基礎を再インストールする際に助けとなる11冊をピックアップ。それぞれの著作で伝えたかったことを切り分けると、4つのポイントが見えてきた。それらの変遷を辿ると「日本のカレー進化させること」という目的に近づくための手段を「カレーのOS」水野仁輔がアップデートさせてきた履歴を把握できる。
カレーの調理工程に見出した法則性を「ゴールデンルール(GR)」と名付け、それをさらに応用・展開する形でアップデート。思い通りのカレーをデザインできるナレッジへと進化中。
一般的なレシピ書で「キツネ色になるまで炒める」とうたわれるタマネギだが、その加熱の目的を吟味し最適な加熱方法を模索、アップデートを重ねた結果「タマネギは炒めない」という手法に至っている。
「香り付け」というスパイスの役割を明確にし、基本となるスパイスの 組み合わせを提示。さまざまなスパイスを自由に組み合わせることができるように配合のナレッジをアップデートさせてきた。
例えば、産地や銘柄によって濃度や重さの異なる塩。レシピに記載さ れた「小さじ1」という表記を信じるというよりは「自分のおいしいを知り、それを生み出す技術を身につける」手法もアップデート中だ。
text 水 享一 photo 八田政玄
本記事は雑誌料理王国2020年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年6月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。