今までの大豆ミートの概念を覆す「DAIZ」


日本の植物肉市場で圧倒的に知名度が高い大豆ミートがいま進化を遂げている。その最先端を行くのは、熊本発のスタートアップ「DAIZ」だ。国内外から注目を集める、特殊な発芽技術と創薬で培ったAI技術を駆使した革新的な大豆ミートの秘密を探る。

DAIZ「ミラクルミート」

アミノ酸組成を食肉に近づけた発芽大豆を丸ごとミート

大豆ミートは日本の植物肉市場で最もポピュラーな存在だ。主原料は大豆から油を絞った後の残渣物で、それを膨化させて肉の食感に近づける。そのため、栄養価やうま味の低下、独特な臭い、それらを隠すために多くの添加物を入れるなど、まだまだ課題は多い。一方でこれらの課題をクリアする、熊本発の植物肉のスタートアップ「DAIZ」が手がける「ミラクルミート」が国内外で注目を浴びている。

「ミラクルミート」の原料は、佐賀大学が開発した高オレイン酸大豆。これは遺伝子組み換えではなく、大豆特有の臭み成分が発生しない品種だ。その大豆を、油を絞らず丸ごとタンクに入れて、二酸化炭素や酸素の濃度、温度、水を調整し、刺激を与えながら発芽させる。これは「落合式ハイプレッシャー法」と呼ばれる特許技術で、大豆自体のアミノ酸組成を食肉に近づけ、うま味や栄養素を増大させることができる。この発芽大豆に熱や圧力を加えてポップコーンのように膨らませると「ミラクルミート」の原料が出来上がる。
「落合式ハイプレッシャー法」の生みの親である落合孝次氏は、一般的な植物肉とDAIZ商品との違いについてこう説明する。「一般的な大豆ミートは“添加”が重要になってきますが、私たちはアプローチ方法が違って “素材”に着目しています。ホールフーズの考え方で丸大豆を原料とし、大豆自体の味を食肉に近づけるので、余計な添加物を加える必要がありません」。

DAIZ
二酸化炭素や酸素の濃度、温度、水などを調整しながら発芽させた大豆。そのまま食べてもおいしいという。

創薬研究で培ったAI技術を大豆ミートに

落合氏は30年以上、発芽研究を続けてきた。世界には約34万種類の種があり、それらを様々な条件下で発芽させて、前後の成分を調べる。今回は入り口が大豆、出口が植物肉だったが、発芽研究は創薬や農業など幅広い分野にアウトプットできる。「DAIZの代替肉研究の強みは、創薬技術がベースにあること。人間は何かを食べたとき、アミノ酸や脂肪酸、苦味、香りなど約700の指標を脳が感じ取って、総合的に味を判断しています。
研究所ではその指標に関して、動物肉のデータをプロファイリングし、またあらゆる豆・穀物を様々な条件で発芽させた数千ものデータも蓄積しています。そして、どの豆のどの発芽パターンが何の肉につながるのか、AIが判定するのです」と落合氏。
豆・穀物の種類や発芽パターンをアレンジすれば、牛や豚、鶏など様々な肉の種類、さらには肩肉やもも肉など部位まで、味の再現が可能だ。10月以降、DAIZは数々の有名外食チェーンとのコラボレーションが決定している。2021年には国内最大級の代替肉工場を新設する予定で、世界進出への準備も着々と進めているそうだ。

落合孝次氏。
1967年生まれ。近畿大学農学部卒業後、大手食品会社を経て2002年、カリフォルニア州ナパにてバイオベンチャーを起業。その後、滋賀県長浜バイオインキュベーションセンターで本格的に活動開始。紆余曲折を経て現在はDAIZ取締役。 2019年4月熊本大学薬学部先端薬学教授に就任。

text 笹木菜々子

本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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