シェフが選ぶシェフ#7 オルグイユ 加瀬史也さん


若手シェフ部門 同率第3位
加瀬史也さん オルグイユ

“シャンパーニュとの相性〞を第一に考えたコース料理を提供する「オルグイユ」は、昨年2月にオープンし、年末には早くもミシュランの星を獲得。「料理王国」のアンケートでも、若手シェフ部門で加瀬史也シェフへの支持が集まった。フランス・シャンパーニュ地方の二つ星店で修業した加瀬さんは、現地でシャンパーニュのおいしさに開眼し、シャンパーニュに特化した店を構想した。日本に戻り、「カンテサンス」を経て独立。
料理ありきでシャンパーニュをペアリングするのではなく、ゲストが飲むドリンクに合わせて料理を仕上げるスタイルを確立している。複数のシェフがそのマリアージュを絶賛するコメントを寄せているが、加瀬さんはどのようにしてドリンクと料理の味わいを調整しているのか?ひとつのケースを試してもらった。

204人のシェフが選んだワケ!
藤浪寿行さん 「第一ホテルアネックス」(東京・新橋)
料理や食べ手に対する想像力の豊かさ!

ソースの味わいは即興で発想
付け合せもドリンクに合わせる

加瀬さんが供してくれたのは魚のひと皿。スズキは皮目をこんがりと焼いて仕上げる。ソースのベースとなるフュメは、何日もかけて煮詰めるのではなく、提供する当日にとってその日に使い切る。野菜は一切入れない。「魚や肉の香りが大事だと思っているので、野菜の香りや甘味は不要なんです」ときっぱり。長時間煮込むことも「必要性を感じない」という。ここまでは、あらかじめ準備しておく料理の土台。最終的な味付けやソースの仕上げは、ゲストのドリンクを見て即興で決める。
例として加瀬さんが選んだドリンクは、シャンパーニュ「クロ・カザル2005」。豊かな熟成香と、ブラン・ド・ブランならではのキリッとした酸味を持つ。このドリンクに合わせ、シェフはケーパーとウイスキー、レモンでソースを味付けした。これがロゼシャンパーニュであれば、ブドウの皮を使って「赤い果実味」でつながっているバルサミコ酢や、シェリービネガーで酸味を加え、ウイスキーは使わない。付け合せもドリンクに合わせて仕上げる。
「クロ・カザル」には、熟成香にマッチするよう焼き色をつけて半生に火入れしたカブを添えた。ゲストが飲むドリンクをイメージしながら、それに合わせて味を作り上げる加瀬シェフの「想像力」は、アンケートのコメント通り、豊かだ。

204人のシェフが選んだワケ!
小松直輝さん「フラノ寶亭留」(北海道・富良野市)
シャンパーニュとのマリアージュメニューが素晴らしい。

「僕はオーナーシェフですから、やりたい料理をやりたいようにやっていきます」と言う。自分のスタイルを貫いて、ひと皿の完成度を上げていきたい、と考えている。

ヒラスズキのロースト 蕪とウイスキー
神奈川県の相模湾で獲れたスズキを皮目からレアにロースト。熟成香がありながら、酸味も残る「クロ・カザル2005」に合わせ、ソースはケーパーとウイスキーで香りづけした。付け合せのカブは青味を感じる半生の火入れに。

text 料理王国  photo 富貴塚悠太

本記事は雑誌料理王国2017年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2017年3月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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