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204人のシェフが選ぶ!注目の地方シェフ4人


【富山市】谷口英司さん レヴォ

Eiji Taniguchi
1976年、大阪生まれ。父親は和食の料理人で、母も姉も調理師免許取得という料理人一家に育つ。高校卒業後に就職したホテルでフランス料理と出会い、日本国内のレストランやフランスの星付きレストランで腕を磨く。34歳で富山へ。38歳で「レヴォ」をオープンした。「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」で一ツ星を獲得。

「料理王国・地方シェフ部門」で1位になった谷口シェフ。店は富山市の郊外にあるが、今や「富山に谷口あり」とまで評される。大阪出身のシェフが富山に移り住んで7年。富山ならではの料理を次々と誕生させ、地域を活性化させることができた理由とは何か。どのような戦略があったのだろうか――。

尊重すべきは「融合」と「調和」そこから人は動き、輪が生まれる


「人を動かすための地道な努力が最大の戦略だったといえるでしょうか」。生産者や作家のもとに足繁く通い、自分の料理を食べてもらって、「レヴォ」への理解を深めてもらう。同時に、「レヴォ」が地元の人たちにとって自慢できるレストランになるように努力してきた。

「富山の工芸作家や生産者さんは横のつながりが強くて仲がいい。僕たちが線ではなく、輪でつながっているのも最大の『武器』だと思っています」

 かく言う谷口さんの作る料理が「アーティスティック」と評価される理由を本人に尋ねてみると、「料理と器が融合できているからではないでしょうか」という答え。確かに、谷口さんが追求するのは地元の食材の特長だけではない。たとえば1枚の皿の主張――。作家が何を表現したいのかを読み解き、それを料理と調和させようとする。作家の中には、仏壇や彫像を専門とする人もいて、そういう人が創る皿には、従来にない趣がある。そこに新たなインスピレーションを得ることもあるそうだ。異ジャンルの作家を料理の世界へ誘導する。これも戦略の成功例だ。

 新しい出会いを求めて県内をめぐり、新たにオーベルジュを建てる計画も進行中。料理はもちろん、確実に広がりつつある人の輪を活かす実力に、シェフたちは惹かれている。

204人のシェフが選んだワケ!
「生産者、作家などとよい輪を作り富山を感じさせて、そしてそれを超越するようなアーティスティックな料理を作っている。」
河瀬 毅さん 「フランス料理 ボンヴィヴァン」 (三重・伊勢市)

「Lʼévo鶏/赤イカ/クレソン」。メイン食材の「Lʼévo鶏」が味わえるのは「レヴォ」のみ。孵化後約45日で締めるため、やわらかで繊細な味わい。

レヴォ
Cuisine régionale L’évo

富山県富山市春日56-2リバーリトリート雅樂倶内
076-467-5550
● 11:30~13:00LO、18:00~21:00LO
● 水休
● 35席
http://levo.toyama.jp/

【和歌山県・岩出市】小林寛司さん ヴィラ アイーダ

 地方部門2位は和歌山の小林シェフ。都会からのゲストを意識して地元の食材で旨い料理を作る――。少し前までは、それだけでも地方にレストランを開く意味はあったが、今は違うと小林さんは言う。生産者とともに歩み、伝統料理の応用に力を注ぐ一方、常に世界に向けられる視線。そこに小林さんが「影響力のあるシェフ」と評される理由がある。

野外レストランや伝統料理 地方ならではのよさをアピール


 現在、自分の畑で100種類以上の野菜を育てつつ、生産農家とも契約を結ぶ。生産者を応援するために、その食材を使うだけでなく、畑や農園での野外レストランを始めた。県内外から50人のゲストを梅林に招いて開いたレストランは大盛況で、小林さんのもとには、「また企画してほしい」「うちの畑でも食事会を」とのリクエストが寄せられている。 伝統料理の応用という点では、たとえば、地元に伝わる「茶がゆ」に着目。米とほうじ茶の組み合わせをアレンジし、肉のジュに茶を入れて肉に香り付けをし、米せんべいやリゾットと組み合わせて茶のソースで仕上げる。地元の食材を使いつつ、伝統のエッセンスを取り入れているのは、アジアを中心とする海外からのゲストを意識してのことだ。

「東京では外国人シェフとのコラボレーションが盛んなようですが、東京と同じことをしても人は集まりませんから」。また、和の魅力を堪能したいと望む海外からの観光客にとっては、都会の洗練された料理よりも、地方ならではの食材、伝統や文化を活かした料理のほうが喜ばれるのではないか、と考える。

 要請があれば他県でも野外レストランを開こうと思う。地方で培ったパワーを日本各地で活かし、世界に発信しようと夢は広がる。

204人のシェフが選んだワケ!
和歌山にいながらすごい影響力を日本中のシェフに与えている。
目黒浩太郎さん 「アビス」 (東京・外苑前)

「ナスとネギとフレッシュアーモンド、ゴマと大豆のピュレ、ネギオイル」は、自家製の水ナスと生アーモンドが主役の料理。
Kanji Kobayashi
1973年、和歌山生まれ。調理師学校卒業後、大阪「アルバ」で修業し、94年に渡伊。ヴェネト州、ロンバルディア州、トスカーナ州、カンパーニャ州の星付きレストランで腕を磨いて98年に帰国。同年12月、和歌山に「アイーダ」をオープンした。 2007年には敷地内の自宅を増築して1室のみの宿泊スペースを併設し、「ヴィラ アイーダ」と改称。

ヴィラ アイーダ
Villa AiDA

0736-63-2227
● レストラン11:30~13:00LO、18:00~21:00LO ヴィラIn17:00、Out10:00
● 月休
● 16席
http://villa-aida.jp/

【鹿児島市】塩澤隆由さん カイノヤ ダル 1931

「カイノヤ」のシェフ塩澤隆由さんへの投票理由には、「SNSの発信力」「たった一人のガストロノミー」「強烈なキャラクター」「ガストロバック」といったキーワードが並ぶ。SNSのエントリーでは、ひんぱんに「地産地消は、10年目に止めた」と公言し、「cainoya is NOT THE SAME.」のコンセプトを掲げる。鹿児島の「孤高のシェフ」が、注目を集めている。

素材をどう扱うか。 そこから始まる「塩澤料理」


 実際はどうだろう。食材は、鹿児島県や九州産のものが多いし、生産者とのつながりも強い。シェフ自身、毎朝畑にも行く。「ガストロバック」という減圧真空鍋や、超急速冷凍機「ショックフリーザー」、スチームコンベクションオーブンといった調理機器を駆使した料理で評価が高いが、それを使うことを目的とはしてない。

 例えば「鰻」。塩澤さんが使うのは、鹿児島産の養殖ウナギ、それも規格外に大きいものだ。ウナギの身は蒸してから、頭と骨、肝などから取ったブロードで煮る。やわらかくなったところで、ショックフリーザーで熱を断ち、さらにこの身に、ガストロバックを使って煮汁を浸透させている。つまり、ウナギの旨味をすべて身に戻すという考え方に基づいた調理によって、そのものの味わいだけを引き出しているのだ。

Takayoshi Shiozawa
1972年、鹿児島県生まれ。1999年、父の店「かいの家」で、深夜営業のパスタ店を始める。2002年にイタリア・トスカーナ地方で、ホームステイをしながら伝統料理を学び、帰国後、トスカーナ料理店として再スタート。05年に、リストランテとし現在地へ移転した。

「想像していたよりも、意外とアナログなんですね」と、インターネットの情報をもとに鹿児島まで来た客に驚かれたこともある。
「誰が見ても塩澤だと分かる皿。それを食べたいと、飛行機に乗ってcainoyaへの旅に出ようと思える料理。そこに都会と地方の違いがある」

 地方が注目される今だからこそ、「クリエイティブな部分で勝負したい」。塩澤さんのスタイルは、鹿児島で強いインパクトを放っている。

204人のシェフが選んだワケ!
彼は、料理を作ることに努力を惜しまない。
高山忠司さん 「Krèsios」 (イタリア・カンパーニア州)

「鰻」。2枚の身は、熾火とサラマンダーによる火入れで、仕上がりが異なる。皿は、この料理のために佐賀・有田焼「カマチ陶舗」に特注したカイノヤモデル。

カイノヤ ダル 1931
cainoya dal 1931

鹿児島県鹿児島市城山町2-11 ドルチェヴィータB1F
099-223-5277
● 12:00開場、12:30一斉スタート 18:30開場、19:00一斉スタート
● 月・火休
● 8席限定

【栃木・宇都宮市】音羽和紀さん オトワレストラン

「昔も今も、人と自分を比べたことはありません」と音羽シェフは言う。同じ頃にフランスで修業した「同期たち」が、こぞって東京に店を出しても気にはならなかった。フランス・リヨン郊外、ミヨネー村の「アラン・シャペル」で修業し、村人たちの地元愛に触れ、故郷・宇都宮に根を張ることを決めた。そして、音羽さんはレストランを開いたときから地元の食材にこだわった。

「地元の人はフォワグラやトリュフより、慣れ親しんだ土地の食材を使ったフランス料理のほうが、おいしく感じられると思ったんです」

 幸いにも、栃木県は食材に恵まれている。野菜はおいしく、乳製品の質も高い。丹精込めて育てられた畜肉や川魚の旨も格別だ。

 料理人の長男、次男、マネジメントをする長女。36年かけて築いた宇都宮のフランス料理文化を、次世代の彼らにつないでいきたい。創業時から付き合いのある人々とのつながりを絶やさず店を続けていってこそ、地域に根づいたレストランになると、音羽さんは思っている。「夢は誰よりも大きい。でも、無茶はしません。足元はしっかり見つめる。地域の食文化を豊かにするためには、それが大事だと思います」

 己を貫く覚悟に、仲間も共感する。

204人のシェフが選んだワケ!
地方で地産地消を初めて全国的に知らしめた料理人です。
三國清三さん 「オテル ・ドゥ・ミクニ」(東京・四ッ谷)

栃木県で育てられている和牛のなかでも最高の肉質を誇る「とちぎ和牛」。「とちぎ和牛のポシェ」は、そんなブランド和牛の旨みを存分に引き出したひと皿である。

オトワレストラン
Otowa Restaurant

栃木県宇都宮市西原町3554-7
028-651-0108
12:00~14:00LO(金~日のみ)、 18:00~20:30LO
● 月休
● 50席
www.otowa-artisan.co.jp

Kazunori Otowa 1947年栃木県生まれ。70年に渡欧。74年に日本人として初めて「アラン・シャペル」の門をくぐる。78年に帰国。81年に宇都宮にレストランを開く。地域との協働と次世代育成により、2016年、農林水産省料理マスターズ初のシルバー賞を受賞。

上村久留美=取材、文 星野泰孝、伊藤 信=撮影

本記事は雑誌料理王国第271号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第271号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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