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Go To Eatに対して飲食店ができること


 Go To Eat事業の最大の意義は、「国の事業として外食という行動を推奨する」、つまり、「お上のお墨付き」が一般の人たちに与えられたことでしょう。もちろん感染症対策はできうる範囲でやった上で、人々が家の外にでて食事をする、その行為が国家として推奨されたことで、人々の流れが活性化されたことは素直に喜ばしいと言えます。

コロナ禍で本当に大変な目にあった飲食店に携わる人たちにとって、苦しい中に差し込んだ一筋の光であることは間違いないでしょう。

もちろん、Go To Eatキャンペーンについては正直、お金の流れ、運用面に関してなど、突っ込みたいところがたくさんあります。

 予約サイト側はそもそも国からの委託費をもらっていますし、飲食店側からも予約手数料が入る仕組みになっています。このキャンペーンを享受せんとネット予約が利用できるプランへの加入店舗が増えているようで、明らかに予約サイトの方が飲食店側よりも大きな利益を享受しているように見えます。もちろん予約サイト側も今回の一連のコロナ禍で大きく影響を受けているのですが、飲食店側よりも受ける恩恵がシンプルに大きい印象です。登録店舗がポイント目的で予約だけしてお店で消費しない「鳥貴族の錬金術師」なる人々も現れました(記事執筆時点では最低消費金額が設定されています)。こうして書いていると、予約サイト側と消費者側のメリットだけが目について、果たして誰のための事業だったのか、分からなくなりそうです。

ただ、今後の改善のためにこうした批判は続けて行く一方で、この取り組み自体をできるだけポジティブに活かすことが飲食店側にできる建設的なアクションでしょう。

本記事では少しでもこの取り組みを活かすための方策を、

1.目的設定 2.体験設計  

の2つの軸で書いていこうと思います。

1.目的設定

飲食店側はGo To Eatキャンペーンによる集客の目的を明確に定めるべきです。

今後のリピーターを取りたいのか?一時的でも客数を確保して店舗を稼働させたいのか?

前者だとして、どうリピーターをつけるのか。そのあたりの設計を丁寧にしないと、徒にキャンペーン期間は過ぎ去っていきます。

キャンペーンをきっかけに来店してくれるお客様を、その後もリピーターとして確保したいのであれば、[email protected]への登録やお店のSNSのフォローをはじめとして、お客様とのコミュニケーションの接点をどう維持して行くか、ということが大事になってきます。

また、一時的な客数を追うのであれば、他のお店から抜きんでたプロモーションプランを設定する必要があります。Go To EatはWeb予約からのお客様です。Web予約をするお客さんの特性や属性を把握することが重要になります。そのお客様が初回なのか、リピーターなのかによっても、スタッフの対応の仕方は変わりますし、料金プランの設定も変わります。この目的設定が、次の体験設計の方向性を決定します。

2.体験設計

個々のお店ごとに戦術は変わるでしょうが、最も大事なことは、体験の全体像をスタッフ全員で共有し、そのイメージの解像度を上げることです。ウェブ予約の時のお店のページの見え方、メニューの表示のさせ方、メニューの写真など、細かいところをスタッフ全員で確認し、改善を繰り返すことが大切です。その時にお客様の気持ちになってシミュレーションすることです。その予約ページから予約する時にお客様がどんな期待をお店に対してするのか。そして、そこから実際に来店した際にその期待にきちんと応え、また同時にその期待を超える仕掛けをしなければなりません。

例えば、今のコロナ禍の状況下において苦しんでいる生産者さんたちの応援の文脈でメニューを組むことは、Go To Eatの予約でいらっしゃるお客様にとって一定の訴求力があるかもしれませんし、それによって客単価を上げることが可能になるかもしれません。

また、プレミアム付き食事券を使えるようにしているお店では、使えることの告知をSNS/Googleマイビジネス/店舗ページなどを通してしていかなければなりません。食事券の利用を見越したプランの価格設計も効果があるかもしれません。そしてそこにも食事券を一過性で終わらせない努力が必要です。先ほど述べたようにリピーターに繋げられる体験設計ができるかどうかが重要です。

気をつけなければいけないこととしては、入金サイクル的にGo To Eatのキャンペーンは全体としてお店のキャッシュフローを悪化させます。食事券にしろ、たまったポイントの利用にしろ、お店への入金は通常よりも遅れます。そのことも見越した経営計画が必要でしょう。

Go To Eatキャンペーン自体を活かせるかどうかはお店次第です。適切な戦略を立て、それに応じた努力を粛々と積み重ねて行くことでしか、長く続くコロナ禍の苦境にもたらされたイベントの効果を得られる方法はありません。Withコロナの時代における飲食店には、刻一刻と変わる状況に対応する柔軟性、スピードが求められ続けます。出来る手段は全て講じて、この苦難を乗り切っていきましょう。

文=周栄行(しゅうえい あきら)

1990年、大阪生まれ。上海復旦大学、NY大学への留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行へ就職。独立後は、 飲食店の経営・プロデュースをはじめとして、ホテル、地方創生など、食を中心に幅広いプロジェクトに関わっている。


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