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コロナ禍での、店の舵取り 「レストラン ラフィナージュ」高良康之さん (後編)


2020年の3月頃から続くコロナ禍の中でシェフたちはどう動いたか、そして今後をどう見るか。9月までの期間限定連載でインタビューする。

新しく店をオープンするくらいの力を蓄える

東京・銀座の中心、四丁目の交差点から数分の場所に店を構える「ラフィナージュ」。オーナーシェフの高良康幸さんは、日本のフランス料理界を牽引する名シェフだ。そんな高良さんがコロナにどのように向き合い、店を営んできたか――というテーマで伺った話を前後編の2回にわたって掲載する。

今回は後編。コロナの影響で社会の先行きが不透明な中、「これからのレストランにとって大切なことは何か」について、高良さんの考えを紹介する。(前編はこちら:https://cuisine-kingdom.com/laffinage-2/

――2021年が明けてから、緊急事態宣言やまん延防止重点措置が続き、飲食店にはなんらかの制限がずっと要請されています。そんな中、レストランにとって大切なことは何だと思いますか。

まずは、スタッフの生活を守ること。経営的に行き詰まらない体勢を整えておくのが前提です。
そして、何ヶ月、あるいは何年後になるかわかりませんが、レストランに課される制約が少なくなるたびに、新しい店をオープンするつもりでエネルギーを注がなくてはならないと思っています。
それができるための力を常に磨いておかなければなりません。レストランだからご提供できる喜び、ご満足とは何かを突き詰め、いつでもそれを実現できるよう準備することが大事だと思っています。

というのも、もちろん最大におもてなしするのですが、制約のためレストランは充分な力を発揮できない。かつお客さまの側もご来店が気分的、物理的に制限される。そうした中では、やはり今までのお客さまがいくらか離れてしまうことを考えなくてはなりません。これは私がリーマンショック、東日本大震災の時の経験から学んだことです。

じゃあ具体的に何をして備えればいいかというと、たとえばうちの店で去年の休業期間にやったような、料理とサービスの精度を上げるために今までのあり方を根っこから見直す、というようなことになると思います。細部の積み重ねです。

――「新しい店をオープンするつもりで力を蓄える」。そのほかに、今、大切にしていることはありますか。

いろいろありますが、やはり、目の前のお客さまを全力でお迎えすることでしょうか。もちろんこれはレストランの基本です。どんな制約があっても変わりません。

あとは、これもレストランの基本ですが、卸売業者さんやインポーターさんとの繋がりを大事にすることも普段以上に大切です。レストランが苦境にあるのと同様、あるいはそれ以上彼らは苦しんでいます。

普段からうちの店では、「すみません!これ、買っていただけるでしょうか……」というような、品質に問題がないけれど、売り切るのが難しくなってしまった食材の相談を受けたときは「いいよ!」とすべて買い取っています。これは、コロナ以降もずっと同じです。売り先を失っている食材は多いですからね。それで、一時は店で保管しきれないくらい食材が集まって。ストッカーを1台新しく買いました(笑)。

なにしろ、業者さんには普段から店側のリクエスト、時には無理難題(笑)をかなえていただいていました。本当に情熱的に、食材を集めてくれる。それはもう信頼関係以上のものです。こうした仲間、同志とともに今をのりきる心意気でいます。

今後、コロナ以前とまったく同じように社会が戻ることはないと思いますが、せめてそれに近い状態――お客さまに安心していただきながらレストランを楽しんでいただける日が、少しでも早く訪れてほしい。

それまでは力を蓄え、お客さまに全力で向き合い、業者さんとともに今を乗りきる。あたり前に見えることにていねいに取り組む。もちろん危機感を持ちながら。そうしたことへの集中が重要なのだと思っています。

高良康之
ホテルメトロポリタン勤務を経て、1989年渡仏。2年間研鑽を積み、帰国後は赤坂「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」副料理長などを歴任。2002年「ブラッスリー・レカン」オープンに伴い、料理長に就任。「銀座レカン」総料理長を経て、2018年10月、「レストラン ラフィナージュ」をオープン。

ラフィナージュ
電話番号 03-6274-6541
東京都中央区銀座5-9-16 GINZA-A5 2F
ランチ:12:00〜13:30(L.O.)
ディナー:18時〜20時(L.O.)
※営業時間短縮の要請に伴い変動あり。詳細はホームページ、店舗に確認
定休日:月曜、第3火曜日
https://laffinage.jp/index.html

取材・文 =柴田泉  写真 =小沼祐介


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