福井県が誇る発酵食品、へしこが見事フランス料理に。「福井県産へしことウフモレ」 la Maison de GRACIANI神戸北野 土肥秀幸シェフ


普段はなかなか見ることができないシェフ達の手元がしっかり映っていて分かりやすく、プロにもアマチュアにも支持されているYou Tubeチャンネル「料理王国」。23年4月号では、東西のフレンチシェフの技術を収録。ぜひ、本誌やWEB記事と併せて動画もご覧ください。

個性的な北陸地方の発酵食品「へしこ」も、フレンチの技術を使えばマイルドな味わいのご馳走に。
根菜の甘味、半熟卵のコクと響き合う。

「福井県の実家では、へしこをお茶漬けに、糠は炒ってふりかけにしていました。普段からどんな素材も使うため、当店でもへしこを使います。うま味と塩味が濃いため、アンチョビ代わりに使うことが多いですね」と話す土肥シェフ。

福井県産の食材で料理!
へしこ(写真中央)は福井県北部の伝統食。サバの内臓を取り出して約2週間塩漬けし、その時に出た塩水と糠で約10ヶ月ほど本漬けする発酵食品。厳寒期を乗り切る貴重なタンパク源として江戸時代から作られている。今回は取り除いた糠を弱火でじっくり炒った糠パウダー(写真左下)も使用。福井県産カブは様々な品種があるが、中でも若狭町山内地区で作られる固有の品種、山内かぶらが有名(写真は別品種)。

今回はカブや半熟卵を、へしこの骨で作るソースで食べる温前菜を披露してくれた。ソースはエシャロットとマッシュルームを炒め、へしこの骨を加えて鯛のフュメ・ド・ポワソンで煮る。「ソース・ヴァンブランをイメージしていますが、へしこ自体に味があるため白ワインは不使用。水分はタイの骨と水だけで煮出したシンプルなフュメを使います」。鍋にへしこの骨を投入した直後は糠の香りが湯気と共に上がるが、野菜と共に炒め、仕上げに生クリームを加えて煮詰めると、まさにフランス料理たる香りが充満する。

一方、カブは香ばしくソテーして潰し、器の底に忍ばせる。根気よく炒った糠を纏わせた半熟卵を盛り、ソースを流し、スライスしたへしこやカブ、焼いたバゲットを添えて完成。瑞々しいカブやトロトロの半熟卵が、口の中でへしこのソースと混ざり、まろやかでコクのある味わいに。食べる箇所で
異なる味や香り、時折感じる発酵の風味も面白い。個性的な日本の伝統食品がフランス料理に。ワインはヨード香を感じる熟成した白ワインがお勧め。

へしこは3枚におろし、骨はソースに。
身は炙って薄く削ぎ切りにする。
カブは蒸し焼きにしてエクラゼ(潰す)に。
ソースに加える生クリームは濃厚な乳脂肪分47%を使用。
半熟卵に糠パウダーを纏わせる。
卵を盛り、ソースを流す。

la Maison de GRACIANI神戸北野 土肥秀幸

兵庫県神戸市中央区北野町4-8-1
TEL078-200-6031
12:00~13:00(LO)
17:30~20:00(LO)月休(祝日の場合は翌日)
http://www.graciani-kobe.jp

text:Ryoko Sato photo: Katsuo Takashima

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