キッチンでシェフが実践!世界標準の衛生管理法HACCP


サザンタワーの厨房で、危害要因を管理するための工程と、重要管理点(CCP)を見ていきましょう

食中毒を起こす3つの原因は「病原菌・ウイルス」「毒物」「異物」です 。

 これらが、食品に付いたり、増えたり、混ざったりすることで、食中毒事故を引き起こします。具体的には、次のような理由が考えられます。

  1. 納品衛生管理を怠っている業者から納品した原材料
  2. 個人衛生のルールを守らない人
  3. 整理・整頓・清潔を守らない不衛生な施設設備
  4. 洗浄・殺菌調理食材、調理道具の洗浄・殺菌の不備
  5. 温度・時間調理食品の加熱・冷却不足、時間管理の不備

3つの原因や5つの理由を念頭に置きながら、実作業の中に潜んでいる危害要因を見つけ出し(ハザード分析、HA)、それを重要管理点として管理しています。

 まずは荷受け場から見ていきます。仕入先の衛生管理に問題がないかどうかを見極めて、取引を行なうことが大前提です。納品時は、荷受場で温度を確認。商品に破損や氷の付着などがあり、搬送途中の温度管理に不備がある場合は、受け取らず、差し戻します。保管は食材に合わせて適切な温度(冷蔵・冷凍庫)で管理。整理整頓することで食材ロスも防げます。

それでは、実際にキッチンで料理を作ってみましょう


 レシピは病原菌目線で「危険温度帯をどのように通過するか」に着目し、あらゆるメニュー(食材)を3つに分類して管理します。

グループ1は「加熱しない食品」。野菜やチーズハムなどの加工品です。グループ2は「加熱してすぐ提供する食品」。焼いた肉や魚がこのグループです。そして、グループ3は、「加熱と冷却を繰り返す食品」です。

仕込みが多いレストランでは、多くの調理が、このグループ3になると思います。

調理工程の3つのグループと危険温度帯

3グループの危険温度帯の通過
グループ1 は、加熱せず食べるものなので、洗浄と交差汚染の管理が重要になります。
グループ2 は、加熱により病原菌をやっつけて、すぐ食べてもらう食品なのでリスクは他のグループより少なくなります。
グループ3 は、図のように危険温度帯を何度も行き来するので、他の2グループに比べ食中毒のリスクが高いので要注意。

 ソースやピュレ、煮込み、低温調理などもグループ3です。ゆっくり冷ますと、生き残った病原菌が爆発的に増えます。

「グループごとの作業工程を洗い出した後、危害要因と重要管理点を見つけます」

 ここでは、実際の調理法に問題がないかの検討も必要です。サザンタワーでは、自分たちが安全と考える調理法を外部の機関に依頼し科学的調査によって安全性を立証しています。また、グループ1では、野菜やハーブなどを必ず次亜塩素酸水で殺菌した食材を使うなど、ノロウイルス対策も盛り込んでいます。

 「実際に、前菜で出すサラダから、魚、肉料理のレシピを見ながら、重要管理点を見つけていきましょう」

トスサラダ

レシピ(作り方)

ムール貝(冷凍)の調理 【グループ 3】
1.冷蔵庫内で解凍する。
2. 冷凍食材(ムール貝)をスチームコンベクションで加熱(二枚貝の十分な加熱温度、芯温85℃に設定)。
3.ブラストチラーで急冷。危険温度帯で放置せず、喫食時間を守る。

ムール貝の解凍
常温で冷凍食材を解凍すると、危険温度帯を通過してしまいます。冷蔵庫に入れて、5℃以下で解凍するようにしましょう。どうしても急ぐ場合は水冷で30分以内に。

野菜の調理 【グループ 1】
1.菜を微酸性次亜塩素酸水(交差汚染防止対策)で洗い、水ですすぐ。

微酸性電解水で野菜を洗浄
加熱しない「グループ1」食品は病原菌を付けてしまうと、そのままお客さまの口に入ってしまう可能性があります。ノロウイルスや、病原菌に対して殺菌効果のある微酸性電解水で洗浄するようにします。

2. 野菜の水気をサラダドライヤーで切る。
3. 各食材を保存容器に入れ、日付を書いて専用冷蔵庫内で保管。
4. オーダーが入ったら、日付の古い物から味を確認して使用。

日付を書き、食材別に整理して冷蔵庫へ
冷蔵庫内で交差汚染が起こらないように、仕込み作業後の食材は、個別の容器に入れて保管します。扉の開け閉めや、故障で危険温度帯(10℃以上)にならないように注意。冷蔵庫の温度記録は自分たちが決めたルールを守っている証拠になります。

仕上げ
1. ボウルの中で野菜、赤ワインビネガー、オリーブオイルブレンドを混ぜ、塩・コショウで味を整える。【グループ 1】
2.パルメザンチーズをリボン状にスライスし、ハーブ類と一緒に飾る。 【グループ 1】
3.皿に盛り付ける。

本日の魚介料理

レシピ(作り方)

魚の調理 【グループ 2】
1.納品した魚にアニサキスがいないかチェックする。

納品チェック
食材の納品では、外観、におい、包装の状態、表示(期限、保存方法)を確認。カルパッチョなど、生食で提供する魚は寄生虫「アニサキス」が付いていないかどうかも目視確認します。

2.微酸性次亜塩素酸水で軽くすすぎ、においやぬめりを取る。

魚のウロコ表面を微酸性電解水で洗浄
表面のぬめり、においを洗浄し、オーダーが入ったらすぐに調理ができる様に小分けして容器に入れ、日付を記入して冷蔵庫で保管します。他の食材を触った汚れた手袋を使わないなど、交差汚染に注意しましょう。

3.水気をペーパーで切り、冷蔵庫に日付を書いて保管。
4.オーダーが入ったら魚に味をつけて油を引いたブランチャー(又はフライパン)で皮目から焼く。皮目をパリパリに焼いたら身の方を焼く。芯温が62~63℃になるのを確認してから皿に盛り付ける。

しっかりと加熱して殺菌
「グループ2」はあらかじめ何℃で何分加熱をすれば食品の中心が十分な温度と時間で加熱されるのかを決めておくことが大切。加熱して病原菌を殺したら、汚れた手袋で触らないように気をつけましょう。
芯温が62~63℃になったことを確認
「グループ2」でも、おいしさと衛生管理が両立できる芯温で加熱をSTOP。定期的な外部検査により、病原菌が無いことを確認しているので、芯温75℃以下の火入れでも提供できるようになります。

ムール貝(冷凍)の調理 【グループ 3】
1. 冷蔵庫内で解凍する。
2. 冷凍食材(ムール貝)をスチームコンベクションで加熱(二枚貝の十分な加熱温度、芯温85℃に設定)。
3. ブラストチラーで急冷。危険温度帯で放置せず、喫食時間を守る。

野菜の調理 【グループ 1】
1. 野菜を微酸性次亜塩素酸水(交差汚染防止対策)で洗い、水ですすぐ。
2. 野菜の水気をサラダドライヤーで切る。
3. 各食材を保存容器に入れ、日付を書いて専用冷蔵庫内で保管。
4. オーダーが入ったら、日付の古い物から味を確認して使用。

仕上げ
すべての素材を盛り付ける。

オーストラリア産ラムとビーフのグリル

レシピ(作り方)

ラム肉の調理 【グループ 3】
1. 納品したラム肉のスジをカットし、整形する。ペーパーで血抜きをする。
2. 塩を肉の重さの1%すりこみ、真空パックする。
3. スチームコンベクションオーブンで低温調理(スチームモード、庫内温度68℃、芯温52℃に設定)。

スチームコンベクションで低温調理
ラム肉は、断面がピンク色のやわらかくてジューシーな仕上がりがおいしい。芯温計を刺し、温度時間設定したスチームコンベクションに入れれば、芯温到達時に自動で加熱が停止します。

4. ブラストチラーで急冷する。

ブラストチラーで急冷
低温調理後、冷ますときに常温放置や、熱いまま他の食材が入っている冷蔵庫へ入れるのはNG。病原菌が繁殖しないようにブラストチラーや氷水で急速冷却し、病原菌の繁殖を抑えます。30分以内に20℃以下、または 60分以内10℃以下に冷却することを目安にしましょう。

5. 再度、真空パックし、日付を書いて冷蔵庫で保管。

真空パックして冷蔵保存
効率的に調理ができるように、真空パックで個別包装して冷蔵庫で保管。作業時は交差汚染が起きないように、調理機材の洗浄、手洗いを徹底します。

6. オーダーが入ったら、グリルで焼く。芯温計58℃以上になるまで加熱。

芯温が58℃以上になったことを確認
グリルで表面をこんがり焼き、中心温度は58℃以上。定期的な調理品の外部検査により、病原菌が無い事を確認しているので、75℃以下の温度で火入れをストップできます。

仕上げ
低温調理してグリルしたオーストラリア産ラム、グリルしたオーストラリア産ビーフ【グループ 2】 、フライドポテト 【グループ 2】 、ソース【グループ 3】 、ニンニクのグリル【グループ 2】、を合わせて盛り付ける。


本記事は雑誌料理王国第285号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第285号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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