6種類の水の使い分け「日本らしい」フランス料理の現在形

日本の料理は、綺麗な水が豊富にあることから「水の料理」と言われている。日本のミネラルウォーターは数多いが、軟水で微炭酸という、とても貴重な天然の炭酸水があると聞き、その井戸を見る機会を得た。郡山駅から車で2時間、車窓からは名残の紅葉と清浄な水が流れる只見川(ただみがわ)がある。さらに山深く分け入った所、福島県と新潟県との境にあるのが、「奥会津金山 天然炭酸の水」の採水地だ。

採水地 

自然の炭酸が混ざったここの水は、明治初期には既に、健康に良い水として知られ、胃を軽くする水として、胃腸薬代わりに遥々東京まで運ばれ、明治時代中期になると宮内省に納められていた他珍しい日本の天然炭酸水として、ドイツをはじめとしたヨーロッパ諸国に輸出されたこともあるという。今では、地元の保存会が大切に守っている。井戸から採水した水を口にすると、自然の優しい炭酸を感じる。傍のボトリング工場で特殊ろ過除菌を行ってから、瓶詰めされ、全国に送られている。

福島県の西端、奥会津に位置するこの採水地ツアーを通して知り合ったのが、同じ福島県でも東端の「浜通り」のいわき市にある「Hagiフランス料理店」の萩春朋シェフだ。

採水地の井戸の前で。参加シェフは、左から2番目「レストラン ナクレ」の緒方稔シェフ、5番目「美味いもん屋 わ多なべ」の渡邉達也シェフ、右から2番目「HAGIフランス料理店」萩春朋シェフ。中央は天然炭酸水保存会 馬場清次会長。

フランス料理といえば、伝統的にはバターやクリームを多く使う、油脂の料理だ。とはいえ、近年はフランスでも、出汁をはじめとした水ベースの料理は多く作られるようになっている。水の料理で育った日本人シェフが作るフランス料理にもともと興味を持っていたが、お話を聞いてみると、萩シェフは店で6種類の水を使い分けるなど、水に拘っているという。そんなスタイルに興味を持ち、お邪魔させていただいた。

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