6種類の水の使い分け「日本らしい」フランス料理の現在形


JRいわき駅までは、東京から特急電車で約2時間あまり。アクセスの良さから、休みの日には県内の他の地域よりも、東京に行く人が多いという。そんないわき駅からタクシーで10分ほどの場所にある広々とした一軒家が、HAGIフランス料理店だ。

入り口には、まるで山荘のように、たっぷりと薪が積まれている。看板には「畑味」の文字。地元の食材を、地元産のナラの薪を使った熾火で仕上げていく。

店の前で薪を持つ萩シェフ

いわき市出身で、辻調理師専門学校のフランス校を優秀な成績で卒業し「アラン・シャペル」で研修を受けるなど、フランスで1年間修業して日本に帰国、2000年に若干23歳で自分の店をこの地にオープンした萩シェフ。
当初は、フランス料理なのだから、と水を含めてフランス産食材を使っていたが、フランスから食材を使った料理なら、より流通の良い東京で食べた方がいい。ここで食べるべき料理とはなんなのか、そう考えた時に、近くにあるものだけで作ったフランス料理だった。

考えを変える大きなきっかけの一つは、2011年の東日本大震災。店は内陸にあったため津波などの被害はなかったものの、2年間客が来ない状況が続き、数千万の借金を負った。持ち家を手放し、10年一緒に働いてきた右腕であるシェフにも、辞めてもらわざるを得なかった。苦しい経験を通して感じたのは、自然は人間がコントロールできるものではない、ということ。薪で焼くのも、「ガスは人間が都合の良いように管理しているもの。火が燃えたいように燃えるのが一番いい。熾火で低い温度になったら、低い温度なりに焼けばいい」。

人の力を超えた存在である自然に寄り添い、自然から生み出されたものを美味しくするのが料理人の仕事。その考えは、調理の際の熱源にも反映されている。

熾火で調理中の萩シェフ

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