6種類の水の使い分け「日本らしい」フランス料理の現在形


「世界中のほとんどの食材が手に入る今の時代に、この土地に『ないもの』を挙げはじめればキリがない。そうではなくて、この土地に『あるもの』をいかに美味しくするか、を考える方が、豊かな気がしてきたのです」そう、萩シェフはふり返る。

コップの水を「半分しかない」と捉えるのではなく「半分もある」と捉えるのと同じように、今、目の前にあるものに情熱を注ぎ、目を向ける。まさに「地に足のついた本質主義」とも言うべきそんなスタイルは、フランス料理に馴染みがなくても、良い食材の味を知っている。そんな地元の人たちも楽しめるフランス料理を生み出し、2014年には、農林水産省による料理人の顕彰制度「料理マスターズ」でブロンズ賞、2020年にはシルバー賞も受賞している。

フレッシュハーブティー

フレッシュハーブティーは薪の火で温めたお湯で淹れる。「温め方でも水の状態は変わる。本当に奥深いです」と萩シェフ。薪で温めた水で淹れたハーブティーと電熱器で温めた水で淹れたものを飲み比べさせていただいた。薪で温めた方がまろやかに感じられた。

「水によってその土地の料理が生まれてきたのだと思います」と語る萩シェフ。人間の体の約6割は水。例えば、良質な水へのアクセスが難しいインドでは、油ベースの料理が発達している。良質な水に恵まれた「日本らしい」理にかなったフランス料理のあり方を考える上で、水を知ることは非常に大切なのだろう、と思わせられた。

近年日本人も油脂の多い料理を食べているが、長年日本人が食べてきたのは水ベースの料理。日本人の体質が、油脂の多い料理に適応するには、まだ時間がかかるだろう。水を大切にした料理は、日本人の体質にも合った、現在形の「日本らしい」料理の根幹でもあるのかもしれない。それと同時に、重労働は機械が担うことが増える中、現代人の運動量と共に必要なカロリーは減ってきている。そんな中、カロリーの少ない水ベースの料理が、世界から求められてゆく可能性は、今後ますます大きくなっていきそうだ。

HAGIフランス料理店
福島県いわき市内郷御台境町鬼越171-10
TEL: 0246-26-5174
営業時間(昼・夜ともに完全予約制)
LUNCH : 12:00~
DINNER : 18:00~
http://hagi-france.com/index.html

2022年1月20日

text by 仲山今日子

ワールド・レストラン・アワーズ審査員。元テレビ山梨、テレビ神奈川ニュースキャスター。シンガポール在住時、国営ラジオ局でDJとして勤務。世界約50ヶ国を訪ね、取材した飲食店や食文化について日本・シンガポール・イタリアなどの新聞・雑誌に執筆中。


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