いまやハンバーガー業界は1個1000円以上のグルメバーガー店が増え、高級化の道を歩んでいる。ブランドショップが立ち並ぶ商業ビルの中にも住宅街にも登場し、作り手の味へのこだわりはもちろん、カフェとして、あるいはバーとしても利用できる汎用性の高さも魅力となっている。グルメバーガー時代の牽引力となる注目の4軒をご紹介しよう。
ゴールデンブラウンズバーガー じっくり炒めて甘味を引き出したあめ色のタマネギに、きつめにふったコショウ、スライスした生マッシ ュルームが、香りと食感のアクセント
2009年11月に表参道ヒルズにオープンした「GOLDEN BROWN」。この店は、目黒区東山に続く2号店となる。
「表参道ヒルズに出店しないかと打診されたのは、2009年6月のことです。東山店のオープンからちょうど一年経ち、軌道に乗ってきたかな、というときでした」。東山店は最寄りの池尻大橋駅から徒歩12分と、けっしてアクセスがいい立地ではないが、当初予想していた以上に集客があり、久富さんはグルメバーガーの人気を確信していた。表参道には、ランチとディナーの間の時間などいつでもふらりと、ひとりでも入れる店が意外と少ないことから勝算があると踏み、出店を決意する。
「おかげさまで、表参道店も思っていたより多くのお客さまに来店いただいています」。こういったグルメバーガーの人気の秘密を、ハンバーガーがすっかり日本に定着し、ワンステージ上をという風潮が強くなったこと、そしてこの不景気の時代、いくらグルメバーガーとはいえ、いわゆるファインダイニングで食事をするよりぐっと廉価であることに起因するのでは、と久富さんは分析する。
そんな同店の人気を担うもうひとりが、メインシェフで、ハンバーガー作りを担う金子傑之さんだ。バンズは天然酵母にイースト菌も少し加えてふんわりさせたものを使用。パティはやや粗めに挽いた牛肉を使い、芯に火が通る直前でおろし、ジューシーさをキープする。そして味の要となるのがタマネギのソテー。1時間かけてじっくり炒めて甘味を引き出したタマネギを、ハンバーガー1個につき、3分の1個分以上使用しているという。さらにハンバーガーによって使う具や調味料を調整する。看板メニューであるゴールデンブラウンズハンバーガーは、パティをストレートに味わってほしいとあえて生野菜を挟まない。テリヤキバーガーであれば、塩やマスタードは使わず、またソースが濃厚な分、レタスも通常の倍量といった具合だ。「グルメバーガーはまだまだ発展途上。僕が作るハンバーガーも、いま以上に進化していく可能性がありますよ」。これからどんなハンバーガーが登場するのか、楽しみである。
ゴールデン・ブラウン表参道店
東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ3F
03-6438-9297
● 11:00~22:00LO(日・祝11:00~21:00LO)
● 無休
チーズバーガー
味付けを最小限にとどめているので肉の旨味がダイレクトに伝わる。パティはレリッシュと接する面にのみ塩、コショウをふり、甘酸っぱさと塩味を調和。
パティ、というより肉そのものの印象が強く残る。毎日手ごねで必要な分だけ作るパティは、国産牛のモモ肉や肩肉などの赤身に、牛脂を3割近く配合し、粗めに挽いて作られたもので、肉の旨味がストレートに伝わる。このパティとのバランスを考慮したバンズは、全粒粉を配合し、モチモチした中にもざっくりした食感と香ばしさがあり、好相性だ。
現在、ハンバーガーは主力商品6種で3サイズを揃える。「お客さんとじかに接し、喜んでもらえるハンバーガーを作りたいんです」とオーナーシェフの佐々岡聖さん。ときにオープンキッチンの厨房で、ときにホールでサービスし、そこでのやりとりの中から、サイズのバリエーションを増やした。昼は小ぶりな、夜は大きいサイズがよく出るという。そんな佐々岡さんがイメージするのは「ビストロ酒場」。焼酎やワインなどのドリンク、サイドメニューもマリネやカルパッチョを揃え、気軽に入れる街のハンバーガー屋をめざす。
グリルバーガークラブ ササ
東京都渋谷区恵比寿西2-21-15 代官山ポケットパーク1F
03-3770-1951
● 11:00~22:30LO(ランチタイム11:00~16:00)
● 無休
ウルティメットブルーチーズバーガー
世界三大チーズのうちのふたつ、マイルドでコクのあるゴルゴンゾーラに、シャープさをもつロックフォールを加えることで、チーズの輪郭が際立った一品。
もともとはカフェをやりたかったというオーナーの守口駿介さん。そのつもりで働いていたカフェのメニューにハンバーガーがあり、そこで開眼したという。「それまで、僕にとってのハンバーガーは空腹を満たすものだったんです。ところがシンプルな素材で勝負し、しかも挟む順番を変えるだけでも表情がガラリと変わることに気づき、とても奥が深いと思いました」。
そんな守口さんがたどり着いたハンバーガーは、パティに国産牛を100%使用。主張しすぎない肉の香りで、ハンバーガーが上品な感じになるという。またハンバーガーで最初に口にするのがバンズなので、パンのおいしさがダイレクトにわかるよう、ほのかな甘味を感じさせるものを使っている。さらに、新しい試みに挑戦していきたいと、月替わりのハンバーガーメニューも提案。サワービーンズや、ダークチェリーとクリームチーズを挟んだものなど、変わり種も多く、訪ねるたびに新しいハンバーガーの世界に出会える。
バーガー・マニア
東京都港区白金6-5-7 1F
03-6438-9297
● 11:00~22:00LO(日・祝11:00~21:00LO)
● 無休
自らの手で丹念に仕込みを行い炭火焼きにして提供
ベーコンバーガー
ベーコンも自家製。カナダ産豚バラ肉を使い、1週間ほどかけて仕込む。これも炭火で焼き、さらにスモーキーさを増大させる。ビネガーを強く利かせたコールスロー付き。
店の近くまで来ると、パティの焼ける香ばしい匂いが鼻をくすぐる。そう、この店でパティを焼くのは炭火。なぜかとの質問に「そのほうが自分がおいしいと思うから」と、オーナーの黒川貴史さんは笑う。同時に、可能な限り、自分の手をかけて納得したものを提供したいとの思いからでもある。パティの仕込みも、毎日肉の筋を細かく取ることから始め、挽き、こねまで行う。そして下ごしらえをした肉は、ソテーオニオン、卵のつなぎと合わせてパティにする。
こうして作ったパティを、備長炭で大胆に焼く。わざと焦がし気味にし、外はカリッと香ばしく、中はふっくらと仕上げる。このパティに合わせるバンズは全粒粉入りで、やや目が詰まったもの。これも焼いてさらに香ばしくさせることで、パティとの一体感を持たせる。さらに特筆すべきはパティのボリューム。150gほどもあり、「お客さんに質も量も満足してほしい」という黒川さんの気概が伝わる。
ザ・バーガースタンド フェローズ
東京都世田谷区駒沢2-17-9
03-5875-6331
● 11:30~15:00、17:00~21: 30LO (日11:30~18:30LO)
● 火休
北村美香=構成/羽根則子=文/上原ゆふ子=写真
本記事は雑誌料理王国第189号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第189号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。