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旬の魚を調理するプロの技を大公開!「花都飯店」花井秀典さん(スープ編)


「中国料理で魚料理というと、一匹まるごと蒸すか、揚げて、あんをかけたりするのが一般的。スープ蒸しはとても珍しいと思います」
 

実は、花井秀典さんは大の釣り好き、魚好き。それだけに、「魚の個性を大切にした、味つけが出すぎない魚料理をおいしいと感じるんです」と、「鯽魚蘿蔔湯(ヂィユイロゥボタン)」を選んだ。フナをスープとともに供するこの料理は、中国全土で作られている家庭料理がもとになっている。女性が出産すると、産後の肥立ちをよくするために、酵素を多く含むフナを用いたこの料理を作るのだという。実際、店でも出産祝いの宴席などで作ることが多いそうだ。

家庭では、下処理したフナを鍋に入れ、水と香味野菜を加えて直火にかけて作るのが一般的だが、花井さんは水の代わりに、鶏ささみ肉でとった清湯を使う。すっきりとした清湯に、フナを入れて蒸し上げることで、フナの旨味を生かしながら、上品なコクを加え、レストランならではのスープ料理に仕上げている。主役はあくまでこのスープ。臭みの強いフナをきれいに下処理し、弱火でじっくり時間をかけて蒸し、フナの旨味を引き出していくことが肝心だ。フナがおいしくなるこれからの季節には格好の料理だが、季節はずれには、クエやハタ、タイなどで作ることもあるそう。

花井秀典さんが使った魚

フナ
秋から冬。寒さが増すにつれて、おいしくなってくる淡水魚。これは琵琶湖から直送されたもので、体長20cmほど。ウロコがツヤツヤと黒光りしているものが、鮮度のよい証拠。魚は主に築地から仕入れており、フナも築地からひくことも。

【レシピ】鯽魚蘿蔔湯(ヂィユイロゥボタン)

中国の家庭料理を、レストランの皿にアレンジした、スープを味わう一品。器に、フナを一尾丸ごと入れ、鶏ささみ肉でとった清湯を注ぎ、臭み消しの老酒、長ネギ、ショウガとともに器ごと蒸し上げる。清湯の中に、下ゆでしたダイコンも入っていて、これがフナの旨味が出たスープをたっぷり含み、スープとともに味わうと体に染みわたる。

<時魚湯>(1人分)
フナ…1尾/大根…1/2本分/清湯…適量/長ネギの青い部分…2本分/ショウガのスライス…2枚/老酒…40㎖/塩、コショウ…各少量、白髪ネギ…適量

<清湯>(作りやすい分量)
鶏ささみ挽き肉…4kg /水…75ℓ/老酒…1ℓ/ネギの青い部分…5本分/ショウガ…150g

[作り方]
1.清湯を取る。鶏ささみ挽き肉を粘りが出るまでよく練り、旨味が出やすいようにする。
2.鍋に1を入れ、老酒、長ネギ、ショウガを加え、火にかける。
3.分量の水を少しずつ混ぜながら加えていく。
4.沸騰直前で弱火に落とし、4~ 5時間、沸騰させないように煮詰めていく。1/ 5量ぐらいになったら漉してでき上がり。
5.時魚湯を作る。フナはエラと内臓を除いてウロコを引き、よく洗って下処理をする。大根は丸くぬいてやや硬めに下ゆでする。長ネギの白い部分をせん切りにし、水にさらして白髪ネギを作っておく。
6.器にフナ、大根を入れる。そこにたっぷりと清湯を注ぎ、長ネギ、ショウガのスライス、老酒を加え、ラップ紙をする。 7.湯気の出た蒸し器に入れ、強火で20分間、弱火で40分間蒸す。
8.青ネギとショウガを取り出し、仕上げに塩、コショウで味をととのえ、白髪ネギを飾る。

POINT
火加減を変え、フナの身を崩さず、旨味をスープに出す

フナの身そのものはあくまで脇役。骨までやわらかくする必要はないので、いかにフナの形を崩さず、清湯に旨味を出すかがポイント。そのために大切なのが、蒸す時の火加減。器にフナを入れて清湯を注いだら、水滴が落ちてこないようにラップをし、まずは強火で20分ほど蒸して、フナに火を通す。その後、身が崩れないように弱火に落とし、40分ほどかけて、ゆっくり、ゆっくり清湯に旨味を出していく。フナをすぐに調理しない場合は、下処理した後、腹にネギとショウガを詰め、保存しておくと独特の臭みがぬける。

花井 秀典さん

1968年、東京都生まれ。料理学校卒業後、「華都飯店」に入店。以来、23年間、同店ひと筋。前料理長、曾明星さんの元で腕を磨き、10年前より同店の料理長を務めている。趣味は釣り。

華都(シャトー)飯店
東京都港区三田2-7-1 シャトー三田内
☎03-3453-0893
●11:30~14:00LO、17:00~21:30LO
●土休 

本記事は雑誌料理王国207号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は207号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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