厳選されたいい状態のライチョウを一羽丸ごとシンプルに楽しむ。多田雄亮さん(ラ・ターブル・ド・クラージュ)


ライチョウの時期になると、多田雄亮シェフは毎朝、輸入会社の倉庫まで素材を選びに出かける。なるべく内臓を撃たれていない素材を選びたいから、品薄になる10月下旬からはライチョウは仕入れない。それほど個体差の大きい素材なのだ。

「ライチョウは針葉樹を食べるせいで肝臓が異常に苦いんです。身に内臓が散ってしまうと、本来の味が楽しめないので、業者に任せず自分の目で見て選びます」と多田シェフ。

途中で休ませながら丁寧に火入れしたライチョウは、一羽丸ごとで提供する。「内臓はそのまま食べた方がおいしい」と、サルミソースには内臓を加えず、叩いたガラをその場で煮出す。ソースはお客の飲んでいるワインに合わせて替え、ジビエのダシと合わせて、コクと軽さを両立させた味わいに仕上げた。「ライチョウはどの鳥よりも旨味が強い。その実力と品質の良さが一番わかるので、これを一度食べるとハマる方が多いです」と自負する。シンプルで力強い料理だ。

これひと品と赤ワイン一本のみをテーブルに並べた男性客がカウンターにズラリ、という日もある。ワイルドでいて繊細なライチョウそのもののように、豪快で繊細なひと皿だ。

撃たれ所によって味が大きく左右されるため、見極めが肝心だ。

「グルースのロースト」のここがポイント

表側にフライパンで焼き目を付けて、コッフルをさばき、内側にヘーゼルナッツオイルを回しかけてからオーブンへ。一旦休ませたら再度オーブンへ。レアに近い状態のまま均一に火入れするために考案した。

その日のジビエは黒板を見て。相談しながら料理を決めるのもいい。

スコットランド産グルースのロースト サルミソース
状態のいいライチョウを的確にローストして、丸ごと1羽。部位ごとにまったく違う味わいと食感を持つライチョウを、最も引き立てるよう、ソースにはあえて内臓を加えていない。ジビエのダシでライチョウのガラを煮出し、赤ワイン、ポルト酒で軽めに仕上げた。「ローヌ系の、ちょっと熟した感じのワインと合いますよ。コルナス’96年が一番おすすめ」と多田シェフ。

材料(1人分)
スコットランド産グルース…1羽/塩、コショウ、ヘーゼルナッツオイル…各適量/和栗(薄めのシロップで煮たもの)…5、6個/セップ茸、トランペット茸、マッシュルーム…合わせてひとつかみ程度
◦サルミソース
赤ワイン…100㏄/ポルト酒…100㏄/コニャック…50㏄/ジビエでとったブイヨン…150㏄/バター、塩、コショウ…各適量

作り方
1.グルースをさばいて部位ごとに分ける。肝臓以外の内臓はコニャック(分量外)でマリネしておき、コッフル、モモは塩、コショウをふって、フライパンで焼き目をつける。
2.コッフル、モモ、内臓を200℃のオーブンで3~5分焼き、数分休ませる。コッフルをガラとムネ肉に分け、ガラは取り除いて叩いておく。
3.2のムネ肉にヘーゼルナッツオイルを回しかけ、再び200℃のオーブンで様子を見ながら1~2分焼く。
4.サルミソースを作る。酒類を強火で一気に煮つめて、ブイヨン、2のガラを加えて、あくを取りながらさらに煮つめる。塩、コショウで味をととのえ、最後にバターでモンテする。
5.和栗、茸類をフライパンで炒める。
6.皿に4のソースを敷き、中央に5をのせる。2のグルースを高さが出るように盛り付ける。

Yusuke Tada

1972年大阪市生まれ。辻調理師専門学校フランス校を経て、東京の「レストランひらまつ」などで修業を積む。その後、兵庫県・宝塚市のワインバーで8年間店長を務める。04年に兵庫県・川西市の「ビストロ・クラージュ」で独立開店し、09年10月に現在の場所へ移転。

ラ・ターブル・ド・クラージュ
La Table de courage
大阪府豊中市本町7-1-28-B1
☎06-6858-8008
● 12:00~14:30(LO13:00・土曜なし、前日までに要予約)、18:00~24:00(LO22:00)
●月休(祝日の場合は翌日)
●20席
●コ ース昼2500円~、夜4000円~ アラカルトあり
http://la-table-de-courage.net/

藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影

本記事は雑誌料理王国244号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は244号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする