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【ジビエの教科書】ライチョウの苦みに同調させつつ、カカオやコーヒーで香りづけ「ラペ」松本一平さん


伝統的なフランス料理に現代のエスプリをきかせた店「オーグードゥジュール メルヴェイユ」の松本一平シェフが、日本橋に「ラペ」を開いたのは2014年10月のこと。手がける料理は、クラシックを大切にしながらも、皿の上の表情は季節感に満ち軽やかで芸術的。そんな松本シェフが腕を振るうジビエ料理は、どんなものなのか。

ジビエの中でもよく使うのが、ピジョンラミエ(山バト)やライチョウ。「ジビエの特徴を活かすなら、ロワイヤルやパイ包みといったクラシックな調理法が向いていますね」

調理法こそクラシックだが、ピジョンラミエの肝に鮑の肝を組み合わせるなど、随所に個性を散りばめるのが松本流。今回のロワイヤルは、ライチョウの特徴である苦みに、カカオの苦みとコーヒーオイルの苦みを同調させてひと皿にまとめた。

ミンチにしたライチョウを、1枚に開いたライチョウで巻いたファルス。ミンチには豚ののど肉やフォワグラを加え、ぱさつかないよう脂分を補う。フォワグラは風味付け程度に。ファルスは赤ワインなどで1週間浸けた後、低温調理し、さらに1週間浸けてから切る。

クラシックな料理を
軽やかな一皿に表現する

ライチョウは1枚に開き、ライチョウと豚ののど肉、フォワグラをミンチにしたファルスを詰めてロール状に巻く。それを赤ワインとミルポワに3日から1週間浸け込んだ後、真空の状態で58度の湯に入れて6〜8時間低温調理する。1日ねかせた後、浸け込んでいた汁にライチョウのフォンを加えて煮詰め、そこに再びライチョウを浸けてさらに1週間。店で出すまでにトータルで2週間ほど費やすことになる。

ソースは、浸け込んでいた汁に赤ワインとライチョウのフォン、レバー、ブーダンノワールなどを加えてサルミソースに。「ロワイヤル自体はオーソドックスな料理ですが、食感や香りを付けることで軽やかに仕上げます」

セルフィーユの根のピュレ。根の皮をむいてスライスし、バターで炒めてオーブンへ。ミキサーを回し、生クリームを加えてピュレ状になったところへ黒トリュフを加える。


しっとりしたライチョウに、サクサクとした歯応えのカカオのクリスティアンを組み合わせた。最後の香り付けには、香ばしいコーヒーオイルを少し垂らす。

ライチョウ、カカオ、コーヒーと全体的に苦みが強いため、口休めには黒トリュフ入りの甘みのあるセルフィーユの根のピュレを添える。

盛り付けは〝シックな黒〞をテーマに、あえてモダンに。黒のコントラストが美しい、松本シェフの真骨頂であるアーティスティックなひと皿に仕上がっている。

オープンしてまだ1年余りだが、すでに美食家たちの舌を満足させているジビエの名店である。

ボージョレー産のグレープシードオイルとコーヒー豆から搾油したコーヒーオイルのミックス。香ばしいコーヒーの香りと、やや苦みのある味わいがライチョウによく合う。

ライチョウ
【キジ目ライチョウ科ライチョウ属】

ユーラシアとアメリカの北部に分布。肉は赤身で苦みがある。日本では天然記念物であるため狩猟できないが、北海道に生息するエゾライチョウは狩猟対象。今回、松本シェフは、スコットランド産を使用。銃で撃たれているため、熟成させずにすぐに調理した。

ライチョウのロワイヤル
ライチョウのファルス、サルミソース、バターでソテーし、ニンニクやエシャロットと一緒に塩コショウで味付けたトランペット、セルフィーユの根のピュレ、カカオのクリスティアンと、〝シックな黒″をテーマに仕上げたひと皿。

松本シェフに学ぶ
「素材の味が凝縮した濃厚なソースを」

アルコールを飛ばした赤ワインを煮詰め、ライチョウを浸け込んでいた液体を加えてさらに煮詰めたところに、ライチョウのファルスを入れて温める。ソースにからめる程度に。

サルミソースに入れるライチョウのフォン。細かく砕いた骨をオーブンで焼き、赤ワインやブーケガルニ、フォンドボーを加えて煮詰め、裏漉しした後でさらに煮詰めて作る。

サルミソースの仕上げに入れるのは、ライチョウのレバーとフォワグラとバターを裏漉しして作るレバーバターに、ブーダンノワール。バーミックスでなめらかにし、裏漉しする。

Ippei Matsumoto

1974年和歌山県生まれ。奈良調理短期大学を卒業。六本木「ヴァンサン」で基本を学んだ後、ベルギーの一ツ星「レッソンシェル」で修業。帰国後、「オーグードゥジュールメルヴェイユ」のシェフを経て2014年独立。

ラぺ
La Paix
東京都中央区日本橋室町1-9-4 B1F
☎03-6262-3959
●11:00~13:30LO、18:00~21:00LO
●水休
●コ ース昼3500円~、夜10000円~
●20席
http://lapaix-m.jp

名須川ミサコ=取材、文 富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国258号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は258号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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