実は、ラーメンが大好きである。といっても、化学調味料は大の苦手であり、天然素材を生かしたラーメン店にしか触手が動かない。そんな堀江純一郎さんの徹底したこだわりが丼一杯に表現された。
今回のラーメン、テーマは塩。フランス産地鶏のプーレ・ジョンヌに、豚のゲンコツ、魚介だしを合わせたトリプルスープに、ゲランドの塩を加え、黄金色のスープを作り出した。魚介だしの素材は、さば節、そうだ節、鰯の丸干し、真昆布、かつお節など全8種類。そこに、ボンジリからとったニンニク風味の鶏油を加えることで、ラーメンらしい若干ジャンクなテイストも付加。手打ちの卵麺は、カン水を使わず、パスタマシンで延し切りした後に手もみで縮れをつけている。
具にも一切の妥協を見せず、チャーシューは濃い目に塩味を付けたスープと一緒に真空で漬け込み、味付けの半熟卵もスープとの相性を考えて塩味に仕上げている。プーレ・ジョンヌのモモ肉も同様に味付けし、低温調理でしっとりとした仕上がりに。贅沢にもソリレスまでトッピングした。彩りに菜の花を添え、脇役として欠かせない白髪ねぎには、奈良県産の大和太ねぎを使用。ラーメンへの愛情を感じる究極の一杯にため息が漏れる。
「ラーメンのスープは、料理で使用するブロードの延長ではいけないと考えました。鶏と魚介の風味がアタックとして感じられ、ゲンコツのスープが味の土台を支えるイメージ。鼻孔をくすぐる香りが立ち上り、旨味の元となるアミノ酸が複雑に絡み合う。天然素材を凝縮させることで、これだけ旨味と香りのあるスープが作れるのです」と堀江さんは言う。
見た目はシンプルながら、味わいは複雑で奥深く、なおかつ、食材それぞれの持ち味が生きている。それは、堀江さんのイタリア料理に相通じるものであり、料理哲学がそのままラーメンに反映される形となった。
鶏の旨味を出すにはガラだけでは物足りないので、肉の味の濃いプーレ・ジョンヌを選んだ。魚介の乾物は、京都の料亭などから高く支持される老舗「うね乃」から取り寄せ、丁寧な作業で旨味を引き出している。
1971年東京都生まれ。大学卒業後、1996年に渡伊。トスカーナ州とピエモンテ州のレストランで修業後、「ピステルナ」のシェフとしてミシュラン一ツ星を獲得。帰国後、西麻布「グラディスカ」を経て、09年に「リストランテ イ・ルンガ」をオープン。
リストランテ イ・ルンガ
奈良県奈良市春日野16
東大寺門前
☎0742-93-8300
● 11:30~13:30LO、18:00~21:00LO
●不定休
●i-lunga.jp
●予算 昼6000円~/夜10000円~
本記事は雑誌料理王国212号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は212号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。