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【名匠のスペシャリテ】「ザ・キャピトルホテル東急」加藤完十郎さん


時代を超えて愛され続ける名匠のスペシャリテがある。
東急ホテルズ兼ザ・キャピトルホテル東急総料理長を務める加藤完十郎さんと、抜群の人気を誇る「ザ・キャピトルブイヤベース 魚介と野菜のマリアージュ」。

「ザ・キャピトルブイヤベース 魚介と野菜のマリア―ジュ」は、ここザ・キャピトルホテル 東急のウエディングのコースメニューの一品として、また、オールダイニング「ORIGAMI」でお楽しみいただけるひと皿としても、人気の高い料理となっています。

このブイヤベースは、私が今井浜東急リゾート(現・伊豆今井浜東急ホテル)の総料理長に就任した10年前に考案しました。今井浜海岸と庭続きのシーサイドリゾートで、お客様に心から満足していただける料理とはなにか……。これが私に与えられた課題でした。

下田港は、金目鯛をはじめ近海の魚介の宝庫です。早咲きの河津桜の名所として知られる内陸部・河津町では、四季折々の野菜が沢山採れ、根菜類、シイタケやネギもすばらしい。下田港の魚介類と河津の野菜を活かして、だれにもおいしいと感じていただける普遍的な料理を。こう考え抜いてたどりついたのが、ブイヤベースでした。  

南フランスの港町マルセイユで生まれたブイヤベースは、中国のフカヒレスープ、タイのトムヤンクンと並んで世界3大スープといわれています。マルセイユには「ブイヤベース憲章」があり、魚はホウボウ、カサゴなど最低4種類は入れないといけない、などといった決まり事があります。

「末長く愛される、普遍的な料理を目指して」

金目鯛や車エビ、ムール貝、シイタケなど華やかに盛りつけられたブイヤベースに、最後の隠し味として注がれるサフランの色合いも美しいアイオリソース。


しかし私はマルセイユとは違う、地産地消で日本人の味覚により合ったブイヤベースを作りました。ベースのスープには魚や鶏のフォンや、シイタケの旨みも使い、優しいまろやかな味わいに仕立てています。

また、河津の地鶏の生む卵は、実においしい。ブイヤベースには、その半熟卵を落としました。

とろりととける小さな半熟卵入りのブイヤベースは、ホテルにお越しになる若い方から年配の方まで世代を超えてたいへん喜んでいただきました。お客様が、このひと皿のために足を運んでくださる。これは料理人冥利に尽きることでした。

 
18歳で羽田東急ホテルに入社以来、人との出会いに恵まれてきました。中でも海外スーパーシェフ招聘イベントで来日したギィ・マルタン氏と親交を得たことは、料理人としてすばらしい財産となりました。彼が厨房に入ると、まわりの空気が一変し、彼のオーラに包まれます。私は彼から学びたいという思いを強くし、以来折を見て長期休暇を取り「ル・グラン・ヴェフール」の厨房で研鑽を積みました。

仕事帰りの深夜、セーヌ川右岸にライトアップされたルーブル美術館を、左岸にオルセー美術館を臨みながら、この幸運を噛みしめたことを、30 年近くを経た現在でも鮮明に思い出します。

2010年、ザ・キャピトルホテル東急は43年に及ぶ歴史を引き継ぎ、新たに生まれ変わりました。総料理長に就任し、新しいキャピトルの顔になる料理を考えた時にこのブイヤベースしかないと思ったのです。そして今も多くのお客様に愛されています。これからもお客様に寄り添い親しみを持っていただける料理を目指し、料理人の道をまっとうしたい、と思っています。

ザ・キャピトルブイヤベース 魚介と野菜のマリアージュ
優しく包まれるような感覚に見舞われ、従来のブイヤベースの概念が消えていく。その秘密は、野菜と魚介のマリアージュにある。半熟の卵をくずし、アイオリソースの風味を味わいながら、金目鯛や車エビを口に含めば、加藤総料理長の生み出したこの皿の深い味わいに味覚も心も奪われる。オールデイダイニング「ORIGAMI」のランチセット「ブイヤベースセット」は、彩り野菜のサラダ、ブイヤベースとガーリックトースト、コーヒーで2777円。

Kanjyuro Kato

1952年山梨県生まれ。1970年羽田東急ホテルに入社。1990年、海外スーパーシェフ招聘イベントでパリの名店「ル・グラン・ヴェフール」のオーナーシェフ・ギィ・マルタンシェフに出会う。それを契機に何度となく渡仏。彼の厨房で研鑽を積み、現在も深い交流をもつ。2005年、今井浜東急リゾート総料理長に就任。2013年ザ・キャピトルホテル 東急の総料理長に就任。調理部門の総責任者として陣頭指揮を執りながら、後進の育成にも力を注いでいる。

ザ・キャピトルホテル 東急
東京都千代田区永田町2-10-3
☎03-3503-0872
オールデイダイニング「ORIGAMI」(3F)
● 昼 ブイヤベース セット2777円(税・サ込)
ランチコース3703円(税・サ込)
夜 ディナーコース5863円(税・サ込)~

長瀬広子=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国251号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は251号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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