名店のスペシャリテ【鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース】、その後「レストラン 大宮 本店」


初代シェフの大宮勝雄さんは、13年前、娘の夫である延藤光昭さんに本店を任せる際、すべては2代目に委ねるが、「この料理だけは、今後も育てていってほしい」と告げた。

育てるとはどういうことか――。

「レシピが決まっているので大きな変化はないものの、これまで私が時代に合わせて生クリームやバター、塩などの量を少しずつ変えてきたように、微調整を続けていってほしいという意味です」と大宮シェフ。

レストラン大宮 鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース
レストラン大宮 鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース

料理名は「鶏の蒸し焼き」としているが、実際には蒸すのではなく、フライパンに多めの油を入れて、途中でアロゼしながら80℃ぐらいで火入れ。焼くというよりは油の中で煮るイメージだ。
「大宮」の新丸ビル店を仕切るのはオーナーシェフの大宮さん。浅草本店のシェフを務めるのは延藤さん。「鶏の蒸し焼き 粒マスタードソース」はどちらの店でも味わえる。

延藤シェフはこの思いを汲んで、微調整を心掛けつつ、さらにこの料理が引き立つように、オードブルやパン、スープなとど組み合わせたコースも考案。いっそう多彩な味が楽しめるように工夫して、新旧、両方のゲストを喜ばせている。

スペシャリテには、守り、育てる価値がある。その理由とは――。

伝統の味がブレずにゲストを呼ぶ限り、その店は愛され続ける。スペシャリテはそのバロメーターとしての役目をも担っているからなのだ。

レストラン大宮 本店

大宮勝雄(左)
18歳からフランス料理の世界へ。26歳でニュージーランドにあるホテルレストランのスーシェフに就任。帰国後、「ラ・テール」を経て、 1982年「レストラン 大宮」を開店。2007年には新丸ビル内に2店舗目を出店。

延藤光昭(右)
専門校卒業後、数店のフランス料理店で修業し、26歳で渡仏。「オテル ド ラ・ヴィラ」「ルレ・ドゥ・ラ・ポスト」「ランズブルグ」など、星付き店で腕を磨き、帰国後、「レストラン 大宮 本店」のシェフに就任。

東京都台東区浅草2-1-3
TEL 03-3844-0038
11:30~14:30(14:00LO)、
17:00~21:30(20:30LO)
日・祝は11:30~15:00(14:30LO)、 17:00~21:00(20:00LO)
月休

text: Kurumi Kamimura photo: Toichi Miura

本記事は雑誌料理王国319号(2021年12号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は319号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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