漲る地方食材!千葉県・千葉市「サボイキャベツ」


冬の寒さに糖度を増してゆく、欧州生まれの高級キャベツ

サボイキャベツは葉がちりめん状に縮れていることから、チリメンキャベツの名で親しまれている。

「栽培方法は一般的なキャベツと同じですが、チリメンキャベツは品種によって成長に個体差が生じる場合もあるため、一度にまとめて収穫できないのがひとつの特徴となっています」と語るのは、千葉市内で有機農法に取り組む、しげファームの山本茂晴さんだ。

しげファームでは2001年の農園設立以来、いろいろな野菜をセットにしたものを個人宅やレストランに宅配販売している。たとえばキャベツは、一般的なキャベツのほか、ミニキャベツ、紫キャベツ、芽キャベツなども作っているが、サボイキャベツのようなユニークな形のキャベツも知ってもらいたいと、毎年冬に数種類の品種を育ててきた。

取材に伺った月上旬、サボイキャベツの外葉はみずみずしく、きれいな緑色をしていた。だが、これから暮れにかけて何度も霜に当たると外葉は枯れて黄色く変色し、ボロボロになっていくという。

「この寒さがサボイキャベツを甘くするんです。凍結の危機から身を守るため、成分中のでんぷんを糖に変えていくんですよ」

早く結球したものは年内に出荷するが、遅いものは年明けまで収穫を遅らせることにしている。霜に当たって枯れた外葉をむくと、中から結球したきれいなサボイキャベツが現れる。寒さを耐え抜いたサボイキャベツの糖度は最高潮に達し、「煮込んでも蒸し煮にしてもおいしい」と山本さんは破顔する。

年を越し、これからの季節が旬の、糖度が高いサボイキャベツを、しげファームでは1月中旬頃まで出荷している。

ある生産者によれば、当初外国産のサボイキャベツが輸入されてきたが、その重さゆえ空輸代金が高く、結果的に高値で販売されるようになったという。その後、国内でも栽培が始まったものの、虫がつきやすいなど管理が難しいことから、一般的には今でも高級な西洋野菜として流通している。

【サボイキャベツ】

フランス・サヴォア地方発祥の品種であることからこの名がある。日本にはイタリア生まれのサボイキャベツ・サンジョバンニなども輸入されており、西洋野菜を試みる農家を中心に、近年栽培を手がける生産者が微増している。山本さんが指摘するように、寒さには強い品種だが、糖度が高いことから虫が付きやすく、加えて成長が揃いにくいため、出荷が面倒などの理由から敬遠する生産者も多いようだ。ヨーロッパには複数の品種があり、家庭料理にもよく登場する。葉が硬くて繊維質が多く、生のままだとやや食べにくいが、煮込み料理にすると煮くずれしにくく、しかも加熱することでより甘味が出る。「フランス料理の場合、肉や魚介類はもちろん、フォワグラ、エスカルゴをサボイキャベツで包んだものを煮たり、蒸したりするとおいしいです」と「ル・クール」の石本さんは語る。イタリア料理研究家の北村光世さんによれば、イタリアでは外側の大きい葉でひき肉や前日残った肉料理を包んで煮たり、内側の白い葉はせん切りにして、ニンニクやアンチョビを利かせたサラダにするという。

山本茂晴さん
北海道生まれ。山本さんは長年ホテルやレストランのサービスなどを務めてきた。「その経験を生かし、自分が作った野菜をシェフがどのように料理してくれるのか、想像しながら野菜を育てています」。約1.5h aの畑で年間100種類以上の野菜やブルーベリーなどの果樹を有機栽培している。しげファームがすすめる、いまが旬の野菜セットは飲食店にも個人宅にも配送可能。「私のスタイルをご理解いただける方に使っていただきたいと思っています」。

武井武史=文、ヤスクニ=写真

本記事は雑誌料理王国2010年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2010年1月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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