ランベリーでは以前からアレルギー対応をしているが、「最近、特にアレルギーの方の比率が多くなっている」と岸本さんは感じている。一番多いのは卵と乳製品。続いて青魚や蕎麦、甲殻類など。アレルギーではないが、肉がNGという人も多いという。では、ランベリーではどのように対応しているのか。
「予約時にアレルギーを聞き、軽度なものはすぐに引き受けます。複雑なものの場合は突っ込んでお話をお聞きしたうえで一旦電話を切り、作戦を練ってから、できるかできないか折り返し電話します」
たとえば肉がNGな人の場合、どこまでダメなのかを聞き、肉そのものが食べられないのか、フォンもダメなのか、程度によって判断する。一番困るのは、味のベースであり、フォンには必ず入っている玉ねぎのアレルギーだという。
アレルギー対応の料理は、調理器具も、盛り付ける場所も、すべて変えるのが基本。甲殻類アレルギーの場合は、専属の料理人が作るようにしている。スタッフ間で皿を間違えないよう、クロッシュの上に違和感のないよう花をあしらって目安にし、接客もスマートにこなす。「アレルギー対応の料理は正直、手間がかかります。けれど、お客さまが苦労されているのもわかるので、8割方は引き受けます。うちの店で楽しい時間を過ごしてもらえればうれしい。お客さまにどれだけ寄り添えるか、おもてなしの基本です」
ここ数年で急激に増えたアレルギー。卵や乳製品に留まらず、その種類は広がる一方だ。あらゆる食材への対応が迫られる中、さまざま工夫を凝らし、対処方法も進化している。
生クリームのような味わい
豆乳は低糖質食だけでなく、卵や乳製品のアレルギーにも力を発揮。不二製油の3種の豆乳が料理の幅を広げてくれる。油分が多くホイップできる「濃久里夢ほいっぷ」、リッチで深いコクの「濃久里夢」はマヨネーズやディップ類などに向く。旨味成分の多い「美味投入」は大豆だしとして活用できる。
ハマグリの出汁が最適
エビやカニなど甲殻類アレルギーはコキアージュ(貝類)でカバー。適しているのはハマグリ。店ではハマグリとアサリの出汁を常備する。貝類もNGという人もいるので、確認が必要。
ビネガーの酸で補う
オレンジやグレープフルーツといった柑橘系のアレルギーにはビネガーを使用。ただしフルーツアレルギーの人にはフルーツ系のビネガーは使えないので米酢で対応する。
使用方法は小麦粉と同じ
大豆を生のまま粉末にしたもので、小麦粉と同じように使用できる。小麦粉に比べて糖質が少なく、タンパク質や食物繊維が豊富なため、低糖質メニューにも利用できる。
コンソメ ドゥ プーレ
本来、ブイヨンに卵白を入れてアクを取るところを、卵白を豆乳の「美味投入」に置き換え、卵アレルギーの人にも対応できるようにした。卵白と同様にきれいにアクが取り除ける。スープを煮詰めてソースにも応用できる。
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岸本直人/Naoto Kishimoto
東京都出身。
「ラ・ロシェル」などで修業したのち、渡仏。ロワールやパリの星付きレストランで研鑽を積み、1996年帰国。2006年に「ランベリー」オープン。以来、8年連続でミシュランの星を獲得。13年に「Bis」、翌年「ランベリー京都」開業。
ランベリー ナオト キシモト/
L’EMBELLIR Naoto Kishimoto
東京都港区南青山5-2-11
R2-A棟 B1F
☎03-6427-3209
● 11:30~14:00LO、
18:00~21:00LO
●月休
●コ ース 昼5000円~、夜13000円~、
低糖質コースは昼夜ともに13000円(要予約。5日前までに2名から)
※税・サービス料別
●22席、個室あり
www.lembellir.com
名須川ミサコ=取材、文 大平正美=撮影、富貴塚悠太=(*)撮影、弥生一八=イラスト
本記事は雑誌料理王国257号(2016年1月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は257号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。