食の未来が見えるウェブマガジン

シェフが惚れる!「肉の匠」がいるレストラン5選

北島亭 仔羊フィレ肉の 塩包み蒸し焼き

【大阪 HAJIME】脳の発達とメカニズムから理想の調理法を分析 米田肇さん

sougen
草原─ホモエレクトスの記憶から─

地球が熱帯から氷河期へと移行し始めると、草原が増えて肉食動物が増え始めた。人間の肉食もその時代を生きた人類、ホモエレクトスから始まった。太古の記憶に思いを馳せた肇さんならではの羊料理だ。鉄鍋の中にワラを敷き、その上に加熱した羊肉をのせ、ほのかな燻煙で仕上げる。真っ黒な鉄鍋の蓋をあけると、煙の中から艶やかで赤い肉が現われる演出も心憎い。

ゲストがガストロノミーに求めるものは”意外性”

 人間が肉を食べるようになったのは250万年前だ。肉食をきっかけに脳は3倍にも発達した。脳の重さは体重のわずか2パーセントに過ぎないが、摂取カロリーの24パーセントを必要とし、食欲やおいしさを司る。「脳が『もっと食べたい』という摂食欲を感じ、発信した時、それが『おいしい』という感情表現に置き換えられるのです」と、肇さんの説明は始まった。
 この時、脳からはドーパミンという神経伝達物質が分泌される。「だから、肉を調理する際には、フライパンかオーブンかといった議論より、いかにしてドーパミンが出るような料理を作るかということのほうが大切なのです」
 肇さんによれば、ドーパミンが出る条件はふたつ。食べ手がその料理
に対して「生存に不可欠」で、「意外性に富んでいる」と認識することだ。
「食べることが生存につながっているのは当たり前ですから、われわれが腕を振るうべきは『意外性』でしょう。たとえば赤身肉なのにすごくやわらかかったり、生肉に見えて実はアツアツだったり。ゲストの経験を超える料理で驚かせてあげるんです」

生肉のような旨味があり火の通っている肉料理が理想

薫香を付ける前に強火で焼くため、これに耐えうる羊肉を選ぶ。品種、餌や運動量などによる肥育環境によっても肉質は変わるので、こまめにチェックする必要がある。
シンプルな色調の羊肉料理に対し、付け合わせは色鮮やかに。カキ、オレンジの皮、ネズの実、ハコベ、ブロッコリーやヨーグルトのソースなどをていねいに盛り付けていく。

「肉の温度は、刻々と変化していて、それは火にかけた時に限りません。
緻密な仕事をするためには、焼きも含めたすべての変化を『温度変化』や『環境変化』ととらえてコントロールすることが重要だと思います」。     「食」が生存だけでなく、意外性の感知にもつながっているという脳の神秘。肇さんの料理が芸術性でも高く評価されるのは、美しさや味への探求だけでなく、人間の根源へのアプローチを続けているからだ。料理の本質を誰よりも深く理解しようとしている料理人が、ここにいる。

Hajime Yoneda
1972年大阪府生まれ。大学卒業後、コンピュータ関連のエンジニアを経て料理の世界へ。2008年「HAJIME」をオープン。 「Foodie Top 100 Restaurants」や「Asia’s 50 Best Restaurants」、世界を代表する100人のシェフ「100 chefs au monde」等に選ばれ、世界で高く評価されている。

HAJIME
ハジメ
大阪市西区江戸堀1-9-11 アイプラス江戸堀1F
06-6447-6688
● 17:30~20:30(入店)
● 不定休
● コース 21600円~
● 24席
www.hajime-artistes.com


SNSでフォローする