イタリアンの重鎮、片岡護シェフは、「日本の畑で作られる安全な食材は、信頼できます。自給率を高めて海外へもたくさん輸出できるように、料理人の立場から働きかけるお手伝いをしたいと思っています」と発言する。
日本各地に出かけ、生産者とじかに対話しているからこそ、日本の農産物を高く評価しているのだ。
「その食材ひとつひとつに込めた生産者の情熱が、僕ら料理人に伝わり、より旨い皿が仕上がるんです」
片岡シェフの言葉に、師と仰ぐ原宏治シェフが深くうなずく。
「この香り、この旨味は抜群。すぐにラグーソースが浮かびました」
舟形マッシュルームが、片岡シェフを刺激した。野菜使いの達人は、このマッシュルームを小さく刻んで炒めた後、弱火でじっくりと煮込み、ラグーソースを作った。それには、シイタケの3倍以上という舟形マッシュルームのグアニル酸が凝縮されている。ここに一口大にカットしたもの、さらに生のマッシュルームをスライスし、香りと歯ごたえを加えた。舟形マッシュルームだけを主役にした絶品のラグーパスタ。その旨さには、日本の生産者が生み出す「畑の恵み」と、それを愛する片岡シェフの信頼が凝縮された。
ラグーソースは、肉か魚を細かくして煮込んだもの。それを舟形マッシュルームを主役にして作った。他に使用しているのは、ニンニク、赤唐辛子、オリーブオイル、白ワイン、パセリだけ。シンプルに食材のすばらしさを引き出したこのひと皿は、片岡シェフならではの逸品だ。
パスタ…160ℊ/オリーブオイル…大さじ1/ニンニクのみじん切り…1/2片分/赤トウガラシ…1/2本/舟形ブラウンマッシュルーム…2個/舟形ホワイトマッシュルーム…2個/ラグーソース…大さじ4/ゆで汁…80㏄/パセリみじん切り、塩、コショウ…各適量
舟形マッシュルームのラグーソース
舟形ブラウンマッシュルーム…20個/赤トウガラシ…1本/ニンニクのみじん切り…大さじ1/オリーブオイル…大さじ3/白ワイン…80㏄/パセリのみじん切り、塩、コショウ…各適量
盛り付け用
舟形ブラウンマッシュルーム、パセリのみじん切り…各適量
Mamoru Kataoka
1948年、東京都生まれ。都立田園調布高校卒業後、日本総領事館の公邸付きコックとしてミラノへ。帰国後は「小川軒」、「マリーエ」を経て、83年に「リストランテ アルポルト」をオープン。イタリア料理界の重鎮として食育をはじめ、料理教室などの講師も務める。
長瀬広子=取材、文 星野泰孝、大野利洋=撮影
本記事は雑誌料理王国248号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は248号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。