食の未来が見えるウェブマガジン

炭火焼肉なかはら流!牛肉の正しい切り方


牛肉を正しく切る

炭火焼肉なかはら職人 中原健太郎さん

仕入れた肉を切る。よりおいしく食べるために不可欠な作業だ。
肉の質はもちろん、スライサーを使わず手切りにこだわる「炭火焼肉なかはら」の正しく肉を切るその技術、それにまつわるさまざまをひも解く。

食べてストレスを感じない
最高の口あたりはカットが命


 どんなジャンルの料理にも共通していえるのは、すべての料理人は包丁が持てなければならないということ。和食に野菜の面取りがあるように、刃の入れ方ひとつで火の入り方も変わってしまう。「だからこそ、一番の核となるのがカットだと考えます。でも牛肉に関しては、そこがあまり重要視されてこなかった」と中原さん。焼肉の世界に高いカット技術と理論を持ち込み、肉職人と呼ばれるにふさわしい地位を築き上げた背景には、そのような思いがあった。「牛肉はもともとやわらかい肉です。でも、口の中に入れてかたいと感じるのは切り方に問題があるから。肉の状態を見極め、筋の入り方に対して正しく包丁を入れるだけで、まったく仕上がりが違うはず」

 また、仕入れには業者との信頼関係が欠かせない。「自分の店でどうやって肉を提供したいか相談して仕入れるのがベスト。私は自分の好みを知ってもらうため、何度もセリに同行し、年間ほどいろいろな肉を試して今の肉にたどり着きました」。

 毎日同じ条件下で肉を触っていれば、肉のよしあしもわかってくる。一見よいサシが入っていても、刃を入れると異常が見つかることもあるという。「冷凍や半解凍では、そういった手応えが見つけづらくなってしまう。生ならそれが刃を当てた瞬間にわかるんです。それが生にこだわる理由でもありますね」。

きめが細かく、味の入り方がソフトで炭の香りが引き立つヒレステーキ。丁寧な処理と的確な刃入れなど、高い技術の積み重ねがあればこその味わい。

極上の肉を出すための
5つのイントロダクション

最高の肉を提供するためには、どんな段階が必要なのか。
客をうならせるまでに至る5つのイントロダクション、その詳細を聞いた。

道具
中原さんが使う包丁は基本的に手前の筋引き1本のみ。刃先の上の丸みをグラインダーで削り、直線になるよう改造している。肉を薄く切る際、これでコンマ数ミリの薄さで肉を切ることができるのだという。

仕入れ
一頭買いで仕入れ、店には全部位が半丸(1頭の半分)ずつ納品される。開封前はドリップキーパーを下にして保管。開封直後に、必ず吸収性の高いペーパーで肉全体を包む。劣化を防止し、臭いの元となるヌメリも取り除ける。

保管
開封後の肉を保管するのは、作業台の下にある恒温恒湿庫。氷の冷蔵庫と同様に壁から間接的に冷却されるため、湿度も保たれる。庫内の温度は4℃程度。ドアの開閉で冷気が逃げるのを防ぐため、バットに入れて保管。

切る
中原さんは、包丁で押し切りをする。部位や厚さを問わず、肉を切る際はつねに刃先を下げながら切るのが基本。頭は下げ、刃先から手首、肘までが一直線になるように意識すると、まっすぐ均一に肉が切れる。肩に力が入りすぎないよう、肩を下げるのもポイント。部位によって構え方や刃の入れ方も多少変わるが、すべてに共通するのは包丁を持って一番力が乗る位置で構えること。薄く切る、筋だけを切るような場合は、外に向かって切るイメージで刃の角度を調整する。肉が解けないように涼しい空間で、とにかく早く終わらせることが肝要。ヒレの掃除なら通常5分ほどで終わらせる。

焼く
炭には、火持ちのよい上質なオガ炭を使用。白い灰が出ず硬度があるため再利用も可能。焼き始めから最後まで、繊維の方向に逆らわずに火を入れるよう意識する。色と焼けるスピード、煙の具合と音で判断し、焼き上がりを見極める。

炭火焼肉なかはら職人 中原健太郎さん
1976年、東京都出身。大学卒業後、テレビ局勤務を経てさまざまな職業を経験する。27歳の頃、妻の実家である焼肉店「七厘」を継ぐことになり、肉の仕入れや調理を独学で習得。 2014年に市ヶ谷へ移転し、「炭火焼肉なかはら」としてリニューアル。2015年、代官山にハンバーガーショップ「ヘンリーズバーガー」をオープン。

炭火焼肉なかはら
NAKAHARA
東京都千代田区六番町4-3 GEMS市ヶ谷 9F
03-6261-2987
● 17:00~22:30LO
● 水休
● 44席
sumibiyakinikunakahara.com


田中英代=取材、文 今清水隆宏=撮影

本記事は雑誌料理王国第268号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第268号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする