旬の魚を調理するプロの技を大公開!「エミュ」笹嶋伸幸さん(スープ編)


「ポワレ、グリエ、ヴァプール……。フランス料理の魚の調理法は意外に多い。さらに、肉に比べて圧倒的に種類が多く、その魚の特色を生かした料理を作ろうと思えば、いくらでもヴァリエーションは広がります」
 

パリ「タイユヴァン」ではポワソニエ(魚番)を務め、自らも肉より魚料理を口にすることが多いという笹嶋伸幸さん。季節ごとに変わる魚料理は、本当に多彩だ。

「フランスでは、あまり作らないのではないでしょうか」というウロコ焼きは、なかでも思い入れのある料理。実は、前店で料理長を務めていた時、なんとか失敗なく、うまく焼けないかと、試行錯誤の末に考案したのが現在の調理法なのだという。サラマンダーを活用し、ウロコを立たせ、オリーブオイルでカリカリに焼く。身はしっとりと、対照的な食感に仕上げている。それを、別にとったスープ、そのスープを煮含めた野菜と、最後に合わせたのがこのひと皿。スープはホタテ貝のヒモでとったものだ。

「スープ・ド・ポワソンをソースのように仕立てた魚料理もありますが、それではアマダイの上品な味わいが負けてしまう。淡いホタテのスープを合わせたのはオリジナル」

赤アマダイは福井・若狭湾から。体長30センチ未満の、ウロコが大きすぎないものを使っている。

【レシピ】アマダイのウロコ焼き 具だくさん野菜のミトネ トリュフ風味

笹嶋シェフの得意とするウロコ焼きを、ホタテでとったスープ、スープをミトネした(煮含めた)野菜とひと皿にした。赤アマダイのウロコを、一度立たせてから焼いているので、カリカリとした食感がより鮮やか。その食感が、さらりとしたスープと口にすることで、さらに際立つのがスープ仕立てならではの醍醐味だ。

材料(1人分)

赤アマダイ(若狭グジ)…70~80g/塩…適量/オリーブオイル…適量/ホタテのスープ…100㎖/マイタケなど茸類、塩ゆでしたブロッコリーやキャベツ、素揚げしたカボチャ、クレソンなど…少量/黒トリュフスライス…3枚/オリーブオイル…15㎖/ジュ・ド・トリュフ…7.5㎖

<ホタテのスープ>
(作りやすい分量)生ホタテ貝のヒモ…500g/塩…適量/エシャロットのスライス…20g /ポワローのスライス…30g /タマネギのスライス…30g/セロリのスライス…10g/ニンニク…2片/ブーケ・ガルニ…1束/香草…少量/水…1ℓ/白ワイン…200㎖

作り方

1.ホタテのスープをとる。生ホタテ貝のヒモをざるに入れ、塩をふる。ぬめりが取れて白っぽくなるまで泡立て器で混ぜ、きれいに洗う。
2.鍋に1と残りの材料をすべて入れ、火にかける。沸騰してきたらあくを除き、でき上がりを想定して塩加減を決める。
3.弱火に落とし、30 ~ 40分間火にかけ、500㎖になるまで煮つめる。
4.赤アマダイのウロコ焼きを作る。赤アマダイはエラと内臓を除いて下処理し、三枚におろし、切り身にする。ウロコは払わない。
5.身のほうに塩をし、脱水シートをして40分ほどおき、余分な水分を抜く。 6.POINT(下欄)の要領で赤アマダイをソテーする。
7.小鍋にホタテのスープを入れ、付け合わせの野菜を軽く煮含め、盛り付ける。残りのスープにジュ・ド・トリュフ、オリーブオイルを加える。器に野菜、トリュフ、赤アマダイを盛り付け、スープをかける。

POINT
サラマンダーでウロコを立たせる、失敗しないウロコ焼き

ウロコの表面に水をつけ、乾いてくっついてしまったウロコを立たせやすくしてから、高温のサラマンダーに入れる。これが、笹嶋さんが辿り着いた、失敗しないウロコ焼きの方法。あっという間に、驚くほどきれいにウロコが立つ。これを少し多めのオイルで、ウロコ面だけフライパンで焼く。きれいな焼き色がついたら、取り出して3~4分間休ませ、余熱で身に火を入れていく。あとは、仕上げに再びサラマンダーで軽く温めるだけ。ウロコ焼きの醍醐味は、ウロコと身の食感の対比。身をしっとりと仕上げることも大切だ。

スープ
【sup】Soupe

ブイヨンやだしなどをスープと呼ぶこともあるが、一般的には、具材が入った汁気が多い料理を指す。ブイヤベース、ミネストローネ、ボルシチ、トムヤムクン、サムゲタンなど、世界中に固有のものがある、歴史の古い調理法。水などで煮込んだ肉や魚、野菜を汁ごと味わう料理なので、栄養素や旨味を余すところ摂ることができる。高級店などでは、煮込んだ具材は使わず、別の具を供するところも多い。

エミュ 笹嶋 伸幸さん
1968年茨城県生まれ。「ルカ・キャルトン」「タイユヴァン」など、パリで2年間修業を積む。帰国後、アグネスホテル東京「 レストラン ラコリンヌ」の料理長を6年間務め、昨年9月に独立。

エミュ
東京都渋谷区恵比寿南2-25-3
EBISU HANA BLDG.2F ☎03-6452-2525
●12:00~14:00LO、18:00~21:00LO
●月休
●www.emu-francaise.jp

本記事は雑誌料理王国207号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は207号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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