日本人の体質の弱点を補い、代謝を活発にしてエネルギーを生み出す。そんな日本人の味方となる栄養素について解説する。
関連記事はこちら
https://cuisine-kingdom.com/healthylifeexpectancy
日本人の体には弱点があり、特に最近まであまり食べてこなかった肉類を消化し、代謝して、エネルギーや筋肉に変える力が弱いことがわかった。しかし、そんな日本人の弱点を補える栄養素がある。そのカギとなるが「ヒトケミカル」だと寺尾先生は言う。
「ヒトケミカル」は寺尾先生による造語。人間は細胞の集まりでできており、成長とともに細胞は分裂を繰り返して増え続け、20歳をピークに、あとは減少の一途をたどる。その細胞一つひとつに備わって、ブドウ糖や脂肪をエネルギーに変える工場の役割を持っているのがミトコンドリアだ。そして、このミトコンドリアの働きに必須とされる物質が「R–αリポ酸」「L–カルニチン」「CoQ10(コエンザイムQ10)」で、活性酸素を消去する抗酸化作用も発揮する。これらは食物からの摂取も可能だが、本来は人(ヒト)の体内にあるため「ヒトケミカル」と名付けたのだという。細胞の増減と同様20歳をピークに減少する性質があるため、現在は医薬品や食品などでそれを補うことが望ましいとされる。
L–カルニチンは、脂質代謝においてミトコンドリアへの脂肪酸の運搬に関与するため、多く摂ることで脂肪の燃焼を促す作用がある。
ほかにも、総筋肉量の増加や、精神的・肉体的疲労を回復する作用が知られている。消化液である胃液、腸液、唾液、胆汁の分泌および腸管運動を促し、体内の消化機能を促進する効果もある。
L-カルニチンを含む食材
羊肉や牛肉
体内にある活性酸素を消去する抗酸化物質としてよく知られるのは、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類で、美容のためにフルーツやサプリメントをとる女性も多い。しかし、R–αリポ酸の抗酸化作用はビタミンEの数百倍という研究結果があり、ビタミンE以外のさまざまな抗酸化物質と比較してもその抗酸化能は傑出している。また、体内ですでに活性酸素を消去して酸化された(抗酸化能を失った)ビタミンCやE、CoQ10を再生させる能力も持っている。
R-αリポ酸を含む食材
羊肉や牛肉
日本では2004~05年にブームにもなったので、どんな作用があるか知らなくとも、“体にいいもの”として耳なじみがある人が多いだろう。
CoQ10はブドウ糖や脂肪を代謝してエネルギーを産生する作用と、抗酸化作用に関与している。心臓系疾患の症状改善、高血圧症、歯周病、制ガン剤や皮膚外用剤としての老化防止効果など期待される効果は幅広く、多岐にわたって活用されている。
コエンザイムQ10(CoQ10)を含む食材
イワシ、サバ、牛肉、ピーナッツ、ブロッコリーなど
α–オリゴ糖は水溶性食物繊維で、いいものを残し、悪いものを除去する選択能力を持つ優れた食物繊維として、健康食品などに多用されている。
胃腸を通る際に余分な脂質や糖質を吸着し、最終的に便と一緒に排泄する、というのが食物繊維の役割なのだが、その際にEPAやDHAなどオメガ3系脂肪酸の良質な脂まで排泄されてしまうという難点がある。一方でα–オリゴ糖は体によくない飽和脂肪酸だけを選択して絡め取る優秀な栄養素で、さらに糖の吸収も抑えるので、「便秘解消」「ダイエット効果」をうたうさまざまな商品に活用されているのだ。
α-オリゴ糖を含む食材
トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカなど
神戸大学医学部 客員教授神戸女子大学 客員教授株式会社シクロケム
代表取締役社長 工学博士
寺尾 啓二さん
1986年、京都大学大学院工学研究科博士課程修了。ドイツのワッカーケミー社勤務を経て、2002年に化学工業薬品及び環状オリゴ糖の輸入販売、環状オリゴ糖を用いた商品開発及び販売を手掛ける株式会社シクロケムを設立。2012年4月に神戸大学医学部客員教授に就任。
内藤香苗=取材、文
本記事は雑誌料理王国278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。