「沖縄は長寿国」と言われたが、それは琉球王国時代から豚肉を頻繁に食べる文化だったから。近年、沖縄に牛肉やジャンクフードが出回り、長寿国の名が崩れ始めた。とは言え、今も沖縄は、豚肉を頭から尾まで各部位を用いて料理する。特に、内臓や骨部は汁物や煮物、そば等を作るため、一般家庭でも消費されている。
名護市の「フレッシュミートがなは」は、沖縄を代表する肉屋だ。「沖縄は本土とは違って独特な捌き方をします。本土は皮はぎですが、沖縄は湯はぎ。ここには内臓を外し、背骨から割った枝肉の状態で来ます。これを大きく肩ロース肉、ロース肉、ヒレ肉、バラ肉(三枚肉)、うで肉、モモ肉の6つの正肉に分けます。他に豚足はテビチ、肋骨はソーキ、背骨はだし骨として余すことなく販売します」と、常務の我那覇宏生さん。検査に通った豚は屠殺して翌日に届く。枝肉は小ぶりの包丁でみるみる捌かれ、捨てる所なく分解された。
ヒレ肉は、豚肉の中で最もきめ細かく柔らかい部位。脂肪分がほとんどない上質の赤身肉。ビタミンB1を多く含み、美肌効果が期待できる。加熱しすぎるとパサつくので、油料理に向く。
モモ肉の中でも尻に近い外モモ部分。筋肉部分のため脂肪は少なく筋が多い。きめが粗く味が淡泊だが、煮込み料理にすると旨味が増す。色の濃い部分は薄切り肉で販売する事が多い。
内モモと外モモの間、大腿骨の周りにある肉で、ラグビーボールのような形をした部位。脂肪分が少なく柔らかい肉質が特徴。タンパク質や鉄分などが豊富な部位でもある。
モモ肉のことで、脂肪が少なくきめ細かい部位。肉の色はほかの部分に比べて淡いのが特徴。ヒレに次いでビタミンB1を多く含んでいる。ローストポークやボンレスハムの材料にする。
ロース肉の肋骨より下部の肉。肉質がきめ細かく、柔らかいのが特徴。柔らかな赤身の周りに白い脂身が付き、ローストポークやトンカツ、焼き肉などどんな料理にも向く高価な部位。
Aロースより首に近い肩の中に位置する。赤身の中に脂肪が網目状に交じっており、濃厚でコクがある。焼き肉、煮込み、ローストポークなどあらゆる料理に対応できる部位。
出し骨ともいい、もっぱらだし用の部位。トンコツスープは豚背骨でとったものが多い。沖縄そばや汁もの、煮物などほとんどの沖縄料理に使う。一度湯通ししてアクを取ってから野菜と共に煮込むと上質のスープに。
肉質は、きめがやや粗く硬く、赤身が濃いのが特徴。煮込みや沖縄の家庭料理、油みそなどに使用すると特有の旨味がある。首肉にトントロの部位も含む。
前足の付け根に位置する前肉。運動量の多い筋肉なのでやや硬めだが程よく脂肪分を含み、赤身が濃く旨味のある部位。やや硬めの肉質なので豚汁など汁物、煮込み料理にするとよい。
大部分がタンパク質で構成されているがコラーゲンが主成分。チラガーは顔の皮でミミガー(耳)、ハナブク(鼻)は別売りすることもある。耳はコリコリと歯応えがあり、皮と軟骨が主成分。鼻は柔らかく煮込む。
骨付き肋肉。上4本目までがスペアリブ、後部分はバックリブとなる。骨に肉を残して捌くのが沖縄式。軟骨部分は長時間煮ると柔らかく食べられだしも出る。伝統料理ソーキそばはこの部位を使用。
赤身と濃厚な脂が層になっており三枚肉ともいう。肉質のきめはやや粗いが、独特な風味とコクがある。沖縄の宮廷料理、ラフテーは皮付きの三枚肉を用い、泡盛、醤油、カツオや昆布のだし、砂糖などをあわせた煮汁で長時間煮込んだもの。
前足はメービサ、後足はアトビサ。後足の方が肉付きはいいが、ほとんどがゼラチン質。チマグは足の甲に当たり肉はほとんどなく、ゼラチン質。どちらも皮付き。コラーゲンが大量に含まれており、コラーゲンは豚足を煮込んでとる。
ウフワタ(大腸)、ビービーグヮ(小腸)、ガツ(胃袋)、テッポウ(直腸)などをいう。ナカミは全て臭みと脂が多いので、充分に下処理をしてから、時間をかけてゆでると臭みもなくなり、柔らかくなる。汁ものや煮物、炒め物に。
いわゆる豚の骨盤の骨部。肉はほとんど付いていないが、臭みが少ない。大腿骨同様、煮込んでだしをとり、汁ものや煮物、沖縄そばなどに使用する。
Cuisine Kingdom=取材、文 中本浩平=撮影
本記事は雑誌料理王国第226号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第226号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。