Nanan|お菓子も自分も、変わり続ける。


フランスで活躍する日本人シェフを紹介する連載企画。第九回目は、フランスのトップレストランで研鑽を積み、現在パリで「パティスリーNANAN」を運営する作家由希子さんの登場です。

子どもの頃からお菓子作りが趣味だった作家さん。短大卒業後、フランスで菓子職人になる道を選んだ。フェランディ校で学び、当時クリストフ・ミシャラクがパティスリーのシェフを務めていたプラザ・アテネでスタージュをした。「菓子作りから掃除に至るまで、一流の仕事を見られたのは今にもつながる財産です。特にミニャルディーズは宝石のよう。美しさに感動しました」。

パリに来て3年ほど経った頃、ジェラール・ミュロの菓子に出逢った。「食べたときの衝撃は忘れられません。素材の味、食感、味のバランスが秀逸で。何がなんでもここで働きたい!と思いました」。ミュロで働き出してからは、自分が好きなお菓子を作れる幸福感でいっぱいだったという。ここで年間を通じての仕事のオーガナイズの仕方も学んだ。5年半働き、その後はピエール・ガニェールへ。「パティスリーと違って、レストランのデザートは季節の食材を自由自在に取り込んでいくのが魅力。シェフのその日のアイデアで皿がどんどん変わっていく現場を経験して、自分のインスピレーションを大事にすることを学びました」。

そして、3年半前にガニェールの同僚だったソフィーさんとともにパティスリーNANANをオープン。コンセプトはあえて決めなかった。「素材と季節感を大事にしたお菓子をお客様に食べてほしい。だから、作るお菓子もその時に合わせて変わっていきます」。

着色料を一切使わないのは、素材の色合いを大事にしたいという思いから。伝統的なフランス菓子の食材だけにとどまらず、最近では常連客のリクエストに答えて抹茶や胡麻など日本の食材も取り入れるようになった。シフォンケーキも人気だ。「自分自身にもお菓子にも、こうしなきゃだめ、と制限をつけずに、ずっと変わり続けて、進んでいきたい」。

Nanan
Adresse : 38 rue Keller, 75011 Paris , France
TEL : 09. 8341. 3849
アクセス : M°Bastille/Voltaire/Bréguet-Sabin
URL : https://www.instagram.com/patisserie_nanan/
月火休 9h(土は10 h-)-20h00(日は-19h) 〈夏季休業〉7/22- 8/20

取材・文=吉田 恵理子ワイン&フードライター。コピーライター。
1975年生まれ、フランス・パリ在住。お茶の水女子大学博士前期課程修了、人文学修士(西洋哲学)。都内の広告制作会社を経て、コピーライター、ライターとして独立。フランス国立ランス大学HEG(美食に関する最先端研究機関)に留学。英国ワイン&スピリッツ教育財団(WSET)アドヴァンスト資格所持、英国酒ソムリエ・アソシエーション(SSA)認定酒ソムリエ。著書に『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)がある。ワイン専門誌、パリの日本語新聞「オヴニー」に寄稿。Twitter:@erikomri_wine


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