世界の料理コンクール「パテ・クルート」の魅力


「メッツゲライササキ」
東京・田園調布

パテ・クルートは、粉生地で、肉を練って作るファルス(パテ)を包んで焼いたフランス伝統料理。近年は欧州で人気急上昇。フランスのリヨンで行われる世界大会決勝も大いに盛り上がり、日本国内でもパテ・クルートへの熱が高まっている。このコンクールとパテ・クルートについて、今秋開催の世界大会にアジア第一代表として参戦する福田耕平さんに聞いた。

田園調布駅すぐの場所にある「メッツゲライササキ」はヨーロッパ風のファサードが目印。店内には種類豊富なパテ、加工肉類が並ぶ。福田さんの作る高い完成度、力強い味わいの製品のファンは多い。

福田さんは明治記念館でフランス料理の料理人として16年間働いたのち、約2年前にメッツゲライササキに移りシャルキュトリ作りに取り組んでいる。パテ・クルートのアジア大会決勝には過去3回出場し、3回目は準優勝。そして2020年、4回目の参戦で念願の優勝を果たした。今はその時のパテ・クルートを入念にブラッシュアップしながら、秋の世界大会に備えている。

なおパテ・クルートの作り手には、シャルキュトリ職人系と料理人系がいる。福田さんは後者だ。「幅広い技術と応用力が強み。私はお菓子作りの経験もあるので生地は特に得意」と自信をのぞかせる。

アジア大会決勝に4回参加して、「毎回ものすごい勢いでレベルアップしている。参加者の向上心が強い」と実感した福田さん。会場はパテ・クルートへの熱い思いを持つ選手が集い、情報交換する場でもある。「お互いの存在が刺激であり励み。そんな仲間が日本でどんどん増えてほしいです」。

パテ・クルートには、フランス料理の伝統技術が詰まっているといっても過言ではない。生地の扱い、肉の扱い、肉と生地というまったく異なる材料を一度に加熱する難しい火入れ。こうした各種テクニックが合わさりパテ・クルートはでき上がる。

大まかな作り方は、上に説明した通り。ファルスを作るプロセスでは、どんな肉を選ぶか、どんな味をどれくらい染み込ませるか、どれだけ練るか……といった細かい選択一つずつにシェフの個性が出て、それが仕上がりに反映する。生地も同様だ。

組み立てのプロセスでは、ていねいで緻密な作業が鍵となる。そして焼成では、生地をどれだけしっかりと焼き込めるかが最大のポイントとなる。

焼成後、最低一晩おいて落ち着かせたら完成。肉の味をなじませることを重視するなら3日ほどおくケースもあるが、その場合生地は湿る。「生地を重視するか肉の味を重視するか。私は生地重視で、翌日に最上の状態になるよう生地もファルスも調整しています。イメージとしては、フレッシュさを大事にしたパテ・クルートです」。

コンクールでは、ファルスに関しては、多くの食材を組み合わせるのではなく、味の調和、バランスを完璧なまでに追求することが優勝につながると言われる。また口当たり、うま味や香りの余韻の長さも重視される。これらに加え、福田さんがコンクールで心がけているのは、「見た目と味、両方で審査員が驚くものを作る」とういこと。ビジュアルも非常に大切だ。整然と刻まれた装飾、焼き色、断面の美しさもパテ・クルートの重要な魅力である。

「パテ・クルートはクラシックな料理ではありつつ、個性を存分に表現することも可能。その面白さが近年知られるようになり、フランスでは作る方、食べる方、両方から人気に火がついています。そんな中、秋にリヨンで開催されるパテ・クルート世界大会にぜひ注目していてください。そして大会に挑戦するシェフが日本で増えることを期待しています」。

パテ・クルート世界選手権とは?
日本シャルキュトリ協会

フランス・リヨンでは2009年より毎年パテ・クルート世界選手権が開催されている。日本では2015年よりその予選となるアジア大会を開催。12名の出場者が事前に作ったパテ・クルートを持ち込み、出来栄えを競う。

世界大会では2018年に時田啓一さんが準優勝、翌年は塚本治さんが優勝しており、この秋の大会でも日本選手の活躍に期待がかかる。福田さんとともに出場する中秋陽一さん(アターブル)は「昨秋にアジア大会が終了してからもパテ・クルートを作り続け、今はさらにクオリティを上げることができました。世界選手権は、アジア代表として出場するからには世界一を目指し、2年連続で日本を優勝に導きたいです。当日まで気を引き締めて頑張ります」と意気込みを語る。

なお、次回のアジア予選は2022年春に募集開始予定。アジア大会決勝は2022年秋。詳細は日本シャルキュトリ協会のHPにて発表する。

日本シャルキュトリ協会 http://www.charcuterie.jp/

福田さんのパテ・クルート(100g、2,160円)。しっかりと焼き込んだ生地が特徴。塩と酒類で充分にマリネした肉類はうま味が凝縮し、かつ香り高い。表面の模様、ピシッと直線に仕上がった側・底面、断面に現れる勾玉型の鴨肉とフォアグラが美しい。

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1週間かかる!パテ・クルートが出来るまで

1.ファルスの材料は肉のほかフォアグラ、ナッツ、イタリアンパセリやイチジクなど。

2.用いる肉は豚肉、豚レバー、鴨肉、ホロホロ鳥。一部はミンチに。他は酒類などで一晩マリネ。

3.生地の材料は小麦粉、卵、バターなど。混ぜて一晩おき、伸ばしてまた一晩おく。

4.型の隅まできっちりと生地を敷き込み、同じく隅までしっかりとファルスを詰める。

5.詰め終えたら表面をていねいになで、徹底的に平らに。仕上がりの断面の美しさにつながる。

6.焼成。235℃の高温で15分間(途中でひっくり返す)、その後温度を下げて15分間焼く

7.つややかな焼き上がり。福田さんは生地の端が焦げる寸前になるほどしっかりと焼く。

8.翌日、生地とファルスの間にできた空間にコンソメゼリーを注ぎ入れる

9.さらに1日おき、落ち着かせてからカット。ファルスと生地が密着した断面が美しい。

メッツゲライササキでは、さまざまなシャルキュトリを販売している。写真は、奥から、豚の頭肉が材料の「テット・ド・フロマージュ」(100g、918円)、「自家製コンビーフ」(100g、1,026円)、酸味のあるパセリソースと豚肉を冷やし固めた「ジャンボン・ペルシエ」(100g、864円)。

福田シェフによる「自家製コーンビーフ」の作り方は、YouTubeチャンネル「料理王国FOOVERjapan」で公開中!

メッツゲライササキ
「メッツゲライ」とはドイツ語でシャルキュトリを作り、売る店のこと。なおシャルキュトリとはソーセージ、ハム、パテなどの食肉加工品のこと。パテ・クルートも含まれる。

東京都大田区田園調布3-1-3
TEL 03-5755-5971
10:00~19:00
火休み
Instagramをチェック!

同店のECサイトが9月下旬にオープン予定!美味しいシャルキュトリをぜひご自宅でも。

text: Izumi Shibata photo: sono(bean) 

本記事は雑誌料理王国318号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は318号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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