今年に入って日本でもプラントベースフードの市場が動きを見せている。 5年後には国内市場が1000億円規模に達すると予想する人も。ここでは小売・オンライン業界のプラントベース最前線を紹介する。
コンビニ業界もプラントベースへ参入している。Familymartはその代表格だ。
2017年に「ソイスタイル」シリーズを販売し、おにぎりや麺の具材などに大豆ミートを取り入れ始めた。19年からは大豆ミートを使った商品を定番化。さらに動物性食品を使わず、製造工程でコンタミネーションへの配慮も行なったハンバーグ丼やキーマカレーがJPVSヴィーガン推奨マークを取得した。「当初は健康意識の高まりに目を向けていたが、近年は環境問題と向き合うことも企業の責任だと考えています」と開発担当の森安恭平さん。
9月8日発売の「ガパオライス(462円)」。大豆ミートは導入当初より、素材から研究開発し、食感や風味を調整している。立体的な味付けで食べ飽きない工夫も。「ゆくゆくは塊肉状の大豆ミートも開発して、唐揚げなどに挑戦するつもりです」。
ローソンが展開する、「美と健康」がコンセプトのナチュラルローソン。食や健康に対する意識が高いユーザーの声に応えるため、 2018年、日本のある豆腐メーカーが手がけるチーズのような食感の豆腐やその他のプラントベース商品の取り扱いがスタートした。今年9月には、プライベートブランドで大豆ミートを採り入れたシリーズが発売となる。「テーマは大豆の魅力を再発見。コロナ禍で人々の健康意識が高まる中、栄養価や健康効果の高い大豆を生かした商品をお届けします」と開発担当の吉岡亜希子さんは話す。
シリーズ第一弾は9月8日発売。大豆ミートを使ったトルティーヤ(写真、306円)やカレー、パスタなど7品を販売する。続編では、大豆を原料とする豆乳や味噌を使用した商品を展開予定だ。
イオンのプライベートブランド「トップバリュ」は植物性食品が豊富。お米をブロッコリーやカリフラワーで置き換える「お米のかわりに食べる」シリーズや、植物由来の「ベジティブ」シリーズなど約10種類を展開している。
また、一部店舗では大豆ミートをコーナー化している。今年6月にオープンした「イオンスタイル有明ガーデン」では、大豆ミート専用コーナーを設置。常時約20種類が並んでいる。
左は「お米のかわりに食べるカリフラワー」(248円)、右は「大豆からつくったハンバーグ バジル香るコク旨なトマトソース」(298円)。
昨年7月から始動した、プラントベース専門のオンラインマーケット「Vegewel Marché」。今年1~5月の月別売り上げの推移を見ると、5月は1月に比べて300%に達し、事業規模も3倍に拡大。7月には運営元の株式会社フレンバシーが資金調達を実施した。代表の播太樹さんは「当初は訪日外国人向けサービスの延長だったが、リリースすると日本人ユーザーがたちまち増え、国内での需要を実感した」と話す。独自の基準で選んだ約200点を取り扱い、オリジナル商品の開発や、毎月レトルトや主食などの6 ~ 10点が届くサブスクリプションサービスも実施。「ヴィーガンやベジタリアンに限らず、植物性食品に興味を持った人が気軽に商品を手に取れる場所でありたいと考えています」。
「VEGAN STORE」は昨年12月、東京・浅草にオープンしたヴィーガン専門のコンビニ&レストラン。取り扱う商品や提供する料理はすべて植物由来だ。運営元であるglobalmeets合同会社代表の鈴木翔子さんは、介護業界に長年携わり、海外で暮らした経験から、食や健康、高齢化などの社会問題について関心を持ち、ヴィーガンの道へ進んだ。現在は商品の仕入れから店内での調理までを自ら担当している。
1階のコンビニで取り扱うのは、お菓子やドリンク、冷凍惣菜、大豆ミートなど約500点。「日本各地には、ヴィーガンとうたってはいないが植物由来のすばらしい郷土食がある」と、熊本産の黒糖や漬物など郷土食も並ぶ。2階はレストラン。パスタや丼もの、ハンバーガーなど、親しみやすいヴィーガンメニュー約40種類を店内で調理して提供している。
レストランで提供中の「ミートボールトマトパスタ」(1200円)。大豆ミートを使用。1階のコンビニ。種類豊富な品揃えで、ついつい手に取ってみたくなる。
text 笹木菜々子
本記事は雑誌料理王国312号(2020年10月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 312号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。