ジビエシーズンになると「レストラン コバヤシ」の厨房はいつも以上に活気づく。ヨーロッパ産の青首鴨、雷鳥、北海道産のエゾ鹿、新潟県産の網取りの大鴨など、およそ8種類のジビエがメニューに加わるのだ。「ジビエの王様」と呼ばれるベカス(山シギ)は野鳥の中でも力強い肉質と濃厚な内臓に価値がある。そこで小林さんは、ベカスをアロゼしながら焼き色をつけたら鍋に蓋をし、蒸し焼きにして香りを身に閉じ込める。またソースはガラにアルマニャックや赤ワインを加え、「煎じる」ようにとろ火でゆっくりと火入れし、ベカス本来の独特の風味をストレートに引き出すよう心がける。
内臓はペーストにして薄いパンに塗り、ソースに溶け込ませるように皿に敷く。そして珍重される脳みそ入りの頭のロティも一緒に盛り付ける。凝縮感あふれるボルドーワインが飲みたくなる、ジビエらしい官能的な香り漂う料理となった。
ロティしたベカスの胸肉の下に敷いた、内臓ムースがソースの役割も兼ねる。ガルニチュールはバターソテーしたサトイモにトリュフを重ね、雪菜を添えた。
ニンニク、エシャロット、タイムを炒めてロティしたベカスは身をさばいてガラを取り出す。ガラは身をロティした鍋に戻してバターで炒め、アルマニャックや赤ワインを加え、ゆっくりと火を入れて旨味を引き出す。
シギ科で褐色の翼と長いくちばしが特徴。ユーラシア大陸の中北部で繁殖し、冬はユーラシア大陸南部、アフリカ、東南アジアに渡って越冬する。変則的に飛ぶため狩猟が難しいが、国内では一部の禁猟地区を除いて猟が可能。フランスではその希少性もあり、野鳥の中でもとくに好んで食されたが、乱獲が進んだため現在フランス国内では禁猟となっている。日本にはスコットランド産が輸入されている。
店で使用するジビエ食材
●山鳩、青首鴨、キジ(フランス産)
● 雷鳥、山シギ(スコットランド産)
● 小鴨、大鴨(新潟県産)
● エゾ鹿(北海道産) など
レストラン コバヤシ 小林 邦光さん
1965年東京都生まれ。調理師学校卒業後、都内の洋食店で働く。89年より渋谷「ロアラブッシュ」で4年間修業。93年に「レストラン コバヤシ」を独立開業。
RESTAURANT kobayashi
レストラン コバヤシ
東京都江戸川区平井5-9-4
☎03-3619-3910
●11:30~13:45LO、18:30~20:30LO
●火休
●http://hard-play-hard-rk.com ●昼 コース2625円~/夜 6825円~、ベガスのおまかせコース(半羽/2名より)12000円~(前日までに要予約)
本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。