1960年に産声を上げた「レストラン キャンティ」。オーナーは川添浩史・梶子夫妻。二人は文化的サロンの役割を担う場を目指し、同店を開いたというが、まさにこの店は、日本人が“本物 ”のヨーロッパ文化に触れるきっかけとなる、華やかな社交場となった。そして、イタリアの本格的な味わいを伝えるべく、当時日本にあった食材で創意工夫をしたことが、日本のパスタ史に大きい功績をもたらした。
その象徴が、写真の「スパゲッテイバジリコ」だ。いまで言う“ペスト・ジェノヴェーゼ”をからめたパスタを手本としたこのメニューは、 8年間イタリアで過ごした経験を持つ梶子夫人と、駐日イタリア大使館等での料理人経験を持つ初代シェフが、二人三脚で生み出したという。
当時、フレッシュのバジリコは流通していなかったため、梶子夫人が自宅で栽培し、大葉と合わせて使った。さらに、大葉だけでは洋風の味わいに遠くなるということから、パセリが加えられたのだ。なんという発想、なんという機転! ナポリタンやミートソースしか知られていなかった黎明期ならではのストーリーに、心からの拍手喝采を送りたくなる。加えて驚かされるのは、当時から現在まで、そのレシピを変えていないという事実。 60年もの時を経た、令和のいまも、だ。
鮮やかな緑がしっかりからみ合った「スパゲッティバジリコ」は、大葉の爽やかな香りと、バターのコクをまとったパセリの風味が絶妙のバランス。大葉やパセリは火を入れ過ぎず、手早く“温める程度”にとどめるのが肝要だとか。
材料(1人分)
スパゲッティ(乾麺1.7mm) …… 70g
大葉……5枚
パセリ(穂先のみ) …… 2枝
ニンニク …… 小さじ1/2
サラダ油 …… 25~30ml
有塩バター …… 10g
スイートバジル(フリーズドライ) …… ひとつまみ
塩・胡椒 …… 適量
フレッシュのバジリコ …… 適量
作り方
レストラン キャンティ 飯倉片町本店
東京都港区麻布台3-1-7
TEL 03-3583-7546
11:30~14:00 LO、17:00~21:30 LO(ドリンクは22:00 LO)
無休
text 中川節子 photo 鵜澤昭彦
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。