シンプル・イズ・ベスト!リピートされ続けるタラコスパゲッティに迫る


模倣から脱出した独自の解釈でいよいよ完全オリジナルな“和風”が登場

1960年前後には、納豆、シメジにタラコなど、日本人に親しみのある食材を使った完全オリジナルスタイルの“和風スパゲッティ”も誕生した。当時これらの和風スパを創り上げた人物は、かの有名なスパゲッティ専門店「壁の穴」の創始者・成松孝安だ。日本人の口に合う、そしてわかりやすい味わいの和風スパは瞬く間にブームとなり、その後も現在まで、脈々と数々の店舗で受け継がれている。

 そんな和風スパのなかでも、名作と呼ぶにふさわしいのが「タラコスパゲッティ」だ。最近は専門店も登場するなど、ブーム再燃といったところか。2018年に白金高輪に開店した「TOKYO SPAGHETTI IBUSANTOCO」の指宿孝幸さんも、常連客のタラコリピート率の高さを実感しているという。

「やはり一番素朴でわかりやすいからだと思います。それだけに素材に妥協はできません」と、食材の重要性を語る。

 作り方はいたってシンプルで、パスタを茹でる間にソースを器の中で混ぜておくだけ。麺と和えた後の火入れもしないので、素材そのままがダイレクトに出る。そこで肝要なのは、タラコの腹はあらかじめ割っておき、血合いを取り除いておくこと。これが生臭さの原因となり、口当たりも悪くなるという。「だからうちでは、レモンも添えません。鮮度のいい素材をきちんと下処理するのみです」 素材本来の味を楽しむこのスパゲッティは、まさに日本的なアプローチの代表作といえるだろう。

【レシピ】タラコスパゲッティ

茹で上げたスパゲッティとタラコペーストを一気に和えるためにも、バターを常温に戻しておくのは大事。茹でる時に湯に塩を加えないのも味をブレさせないコツだ。うま味のポイントとして昆布茶を使うのは、和風スパ業界の定石だ。

材料(1人分)

スパゲッティ(乾麺1.7mm)…… 120g
タラコ …… 30g
無塩バター …… 30g
塩 …… 約1g
昆布茶 …… 3g
白胡椒 …… 少々
刻み海苔 …… 適量

作り方

  1. バターは常温に戻しておく。タラコは皮と血合いを取っておく。
  2. 鍋に湯を沸かし、塩は入れずにパスタを茹で始める。製品袋の表示時間通りでOK(ちなみに撮影時は8分30秒)。
  3. 器に 1 と塩、昆布茶を加えてよく練っておく。
  4. パスタが茹で上がったら 3 の器に入れ、一気に和える。白胡椒をふり、上に海苔を添える。

指宿孝幸
1977年、宮崎県生まれ。20歳で上京後、恵比寿にある“ハシヤ系”スパゲッティ専門店「アンクル・トム」にて10年修業。その後、麻布台のスパゲッティ専門店で料理長経験などを経て、2018年に「TOKYO SPAGHETTI IBUSANTOCO」を開店。

TOKYO SPAGHETTI IBUSANTOCO(トウキョウスパゲッティ イブサントコ)
東京都港区白金5-5-10 1F
TEL 03-5860-2595
11:30~14:30 LO、18:00~22:00 LO 日・祝11:30~20:00 LOテイクアウト18:00~20:00 LO
月休(月が祝日の際、翌火休)
※新型コロナウイルスの影響により営業時間が変更する場合があります


text 中川節子 photo 鵜澤昭彦

本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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