本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。
自宅で過ごす時間が増えるなか、テイクアウトやデリバリーのニーズは確実に高まっています。けれど、お店のメニューをそのまま容器に詰めるだけでは、思わぬトラブルが起こることも。おいしさと安心を届けるためのポイントをご紹介します。
テイクアウトやデリバリーで最も注意しなければならないのは、食中毒!料理の温度管理や喫食までの時間はお客さま次第となるため、通常の店内飲食以上に厳格な衛生管理が必要です。
● 毎朝の検温、健康チェックを徹底
店舗および調理場に入る前に必ず検温を。嘔吐、下痢、発熱はもちろん、少しでも体調不良がある場合は絶対に調理を行わない。
● 作業ごとに手洗い
生の食材を取り扱う前後はもちろん、調理を始める前、トイレ休憩後、鼻をかんだ後、動物や人、金銭、ドアノブなどに触れた後なども必ず手洗いを。
● ビニール手袋を使う際は、こまめに交換
ビニール手袋を使用する際も、1の手洗いのタイミングと同様にこまめに交換を。手袋内の汗を防ぐためにも30分おきなど時間を決めて取り替えて。
● 調理器具の消毒
ふきん、まな板、包丁をはじめ、ピーラー、バット、ボウルなど、あらゆる調理器具の洗浄、熱湯消毒、アルコール消毒を。冷蔵庫内の清掃・消毒も忘れずに。
● 食材ごとにまな板を使い分け
生野菜やわさびなど加熱せずに食べるものと、生肉、生魚のまな板は必ず分ける。
● 冷蔵庫、冷凍庫の温度チェック
冷蔵庫の温度設定は4度以下、冷凍庫は-20度以下が目安。調理した惣菜は小鍋やバットに移して冷却し、1時間以内に10度以下まで下げる。
● 動物性タンパク質は中心温度70度まで加熱
低温調理をはじめ、半生の調理はテイクアウト&デリバリーには不向き。肉、魚、卵などの動物性タンパク質は、中心が70度になるまで加熱して。
● 「交差汚染」を防ぐ
調理済の食品が生の食材などと接することで起こるのが、交差汚染。保存容器に付着した細菌が食品について増殖することも。調理工程を最初にイメージして、交差汚染の起こらない動線をつくろう。
しっかり加熱し、すばやく冷却!
食中毒予防の3原則は「原因菌をつけない、増やさない、やっつける」。細菌の増殖を抑えるためにも、生鮮食品は必ず低温で管理しましょう。また、ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。肉、魚、卵などの動物性タンパク質はもちろん、乳製品、野菜などもしっかり加熱を。低温調理で仕上げた肉料理やトロトロのオムレツ、半熟卵などは、残念ながらテイクアウトには不向き。安心して提供できるメニューを選定することもポイントです。
FOOD LABO Inc./花野敬子さん
ビニール手袋で常在菌の付着を防ぐ
テイクアウト事業で最も警戒すべき菌は、黄色ブドウ球菌。手指にちょっとした切り傷があるだけでも大量に食品に付着するため、佰食屋では調理の際には必ずビニール手袋を着用します。メッシュキャップは、髪の毛などの異物購入を防ぐのに有効です。
佰食屋/中村朱美さん
飲食店営業許可を受けていれば、店頭でのテイクアウト販売は可能。ただし、ハム・ソーセージ、コンビーフなどの食肉製品、自家製パン、菓子類などは、別途、特別な許可が必要な場合も。営業許可を受けた保健所に相談を。
その日に食べるテイクアウトなら、特別な許可は必要なし
「惣菜」として提供するなら、ハム、ソーセージ、チーズなどのテイクアウト販売も飲食店営業許可のみでOKとされることが多いようです。ただ、たとえば加熱前の食肉加工品を真空パックで販売する場合には、食肉製品製造業の免許が必要。三輪亭では、通信販売なども含めたマルチなレストランをめざし、種々の免許を取得しています。今後もテイクアウトやデリバリーを続けていくなら、プラスアルファの免許を取得していくのも選択肢のひとつ。今はレストランの新しい可能性を広げるチャンスでもあると思います!
三輪亭/三輪学さん
ハム・ソーセージ、ベーコン、コンビーフなど →食肉製品製造業
菓子、パン、アイスクリームなど → 菓子製造業, アイスクリーム類製造業
チーズ、バターなど → 乳製品製造業
新型コロナウイルスの影響を受ける飲食店への救済措置として、期限付酒類小売業免許の付与が発表されました。令和2年6月30日までに申請すれば、取得日から6カ月に限り、在庫の酒類、取引先から仕入れた酒類のテイクアウト販売が可能に。
郵送、または「e-Tax」で申請可能。
手続きもスムーズでした
国税庁のHPから「酒類販売業免許申請書」をダウンロードして記入し、営業許可書一式のコピーとともに税務署に提出。そのほかの必要書類は、後日連絡があるので郵送すればOK! 手続きは簡単です。デリバリーを利用したお客さまから「ソムリエのセレクトワインも合わせて注文できるのはうれしい」という声も届いており、付加価値アップに貢献してくれています。
La Paix /松本一平さん
「テイクアウトを始めるにあたって確認したい保険はPL保険です。提供した料理が原因で食中毒が起きた際の保険(PL保険)がテイクアウトにも適用されるか、加入中の保険会社に確認を。現在のままで問題のない場合もあれば、新たにテイクアウト部門について追加加入しなくてはならないケースもあります。テイクアウトのみでPL保険に新たに加入する場合は、売上高と業種で保険料が決定されます。保険金1億円、月間売上高(テイクアウト分のみ)100万円の商品の場合、保険料は2万円/年前後。PL保険の特約で、指定感染症(新型コロナ)罹患者が出たときに営業利益を補償する商品もあります」。
(百年企業を創る情熱の社長の保険合同会社/稲井政氏さん)
テイクアウト&デリバリーの準備に欠かせないのが、容器の選定。容器代の目安は、料理の価格の5%程度。高価格商品でも10%以内に抑えることが、採算をキープするポイントです。
お店の個性に合わせた容器でリピーター獲得につなげて
「また利用したい」と感じてもらうためには、容器も重要な要素に。スーパーの惣菜との差別化をはかるためにも、お店の雰囲気に合うおしゃれな容器、環境にやさしい紙製容器などはおすすめ。紙素材でも耐油性、耐水性にすぐれた容器もあるのでチェックしてみてください。手軽に温め直せる電子レンジ加熱対応の容器も、ユーザーメリットの高いアイテムです。さらに、サイドメニューやドリンクなどをメニューに加えると、選ぶ楽しみが広がり、客単価アップにも貢献! 複数の容器を準備して、何度でも利用したくなるテイクアウト&デリバリーのメニュー構成に役立ててください。なお、デリバリーの場合は、汁もれや盛り付けの崩れを防ぐことが第一ポイント。ふたがしっかり閉まるものを選びましょう。
シモジマ マーケティング部/尾尻新吾さん
シモジマオンライン
https://shimojima.jp/shop/pages/food_delivery.aspx
テイクアウトや出来立てを配達するデリバリーなら、原材料表示や賞味期限のシールを貼る義務はありません。ただ、食中毒予防の点からも、料理の味わいを損ねないためにも、早めの喫食を促したいもの。「○時間内にお召し上がりください」といったシールを活用するなどの工夫を。
レストラン同様、作りたてを食べていただけるように声かけを
惣菜やお弁当は、なるべく詰め置きを避けましょう。注文がきてからすばやく作るのがベストです。手渡しの際には「お早めにお召し上がりください」と一言添えるといいでしょう。できれば調理してから1時間以内に召し上がっていただけると安心ですね。あわせて、「レンジで温める際は、ふたをはずしてください」など、電子レンジ加熱の際の注意点なども伝えると親切です。
FOOD LABO Inc. /花野敬子さん
「Uber Eats」など簡単な登録で配送を代行してくれるサービスや、商品のピックアップ予約ができるサービスなどは、テイクアウト&デリバリー事業の頼もしいサポーター。これまでお店のことを知らなかったお客さまにもアプローチできるチャンスにもなる。
楽天デリバリー
楽天が運営する、出前・宅配注文サービス。全国で1万2千店舗以上が登録する。注文金額に応じて楽天ポイントが付与され、楽天グループの知名度を生かした集客が期待できる。
https://delivery.rakuten.co.jp
PICKS
テイクアウトできるお店を簡単に見つけられるアプリ。できあがり時間のお知らせ機能つきで、ユーザーを待たせないのも魅力 。2020年9月まで初期導入費、サービス利用手数料が無料。
https://picks.fun/PicksforPartners/
TABETE
フードロスの削減をめざして誕生した、お店で余った料理を割安で提供するWebプラットフォーム。廃棄費用の削減とともに、新規顧客の開拓にも貢献。初期費用、導入費用、ランニングコストはすべて0円。
https://tabete.me
text 浦上藍子
本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。