食の未来が見えるウェブマガジン

トップシェフ42人に聞く!オリジナリティとは何かVol.1


オード
生井祐介さん(右)

仮想の比較相手に悩まない
フィルターを外し好きなことを

もともと、人との違いを分かったうえで、あえて違うことをしているという意識はあまりないです。ただ、フランスで修業していない分、修業した人はもっとすごいだろうとか、尖ったことやっているだろうとか、仮想の比較相手にコンプレックスを感じていた時期がありました。そんな中で、自分の料理に賛同してくれる人、おいしかったと言ってくれる人が増えていくにつれて、自信が持てるようになりました。 そうすると、自分で好きなことに対してフィルターをかけることをしなくなった。自分が良いと思ったから良い。そう思えるようになりました。それは、お客さまの声が後押しになった部分が大きいですね。 日本においしいお店がこれだけたくさんある中で、また来たくなる要素に、特徴、コンセプト、主義主張を盛り込みながら伝えていく。そういうことを、ストレスなく伝えられるようになったら、もうそれがオリジナリティになっているんじゃないかと 思います。

Profile
1975年、東京都生まれ。東京や長野で修業した後、2012年に東京・八丁堀「シック・プッテートル」のシェフに就任。15年に同店で「ミシュラン・ガイド」一つ星を獲得した。17年に独立し、東京・広尾に「オード」を開く

ロットチェント
樋口敬洋さん(左)

一つひとつの取捨選択を
30分以上説明できるようにする

取捨選択するときの説明だての深さが、オリジナリティを生むと思っています。だから僕は、説明できないものは絶対に選択しない。その点では、非常にロジカルだと思っています。さらに、それがロジカルに見えないようにアウトプットすることも重要で、周りに見せないというか、見せる必要はないと思っています。説明だての深さというのは、ひとつの作業を100個に分けたときに、一つひとつが30分以上話せるかどうかです。「シェフズギャザリング」でDJプレイをされたFPMの田中知之さん大ファン。どうしてこの後にこの曲なのか、という制作意図をすべてに感じるからです。それは、料理人である自分にも言えることで、なぜアラカルトなのか、なぜコースでこの品数なのか。そうやって、一つひとつを深く考えたうえで、取捨選択していく。お客さまが、店に入ってから出るまで、すべてを考えたいと思います。僕自身はまだできていないですが、若い人たちにとって僕たちは、憧れられる存在でなければいけません。スポーツ選手やミュージシャンと同じステージに立って、どれだけの人を幸せにすることができるか。それを見せることが、料理人を目指す動機になって、彼らのオリジナリティの土壌になるのではないでしょうか。

Profile
1976年、東京都生まれ。2002年に渡伊、シチリア州で3年間修業を積む。帰国後は「リストランテシチリアーノ」「サローネ2007」の料理長を経て、 11年からサローネグループのエグゼクティブ・シェフを務める。16年から東京・茅場町の「ロットチェント」のシェフを兼任。

メゾン 
渥美創太さん

カッコいいことをやる。
それが僕のガストロノミー

ガストロノミーって何ですか? んな人たちの中にあっていい。「ヴィヴァン(・ターブル)」のときも、「クラウン・バー」(ともにパリ)も、”ガストロ”って言葉があてはまらないだけで、良い料理を作るという意味ではつねに思っている。おいしいものを作る。カッコ良いものをやる。僕が思う”カッコ良いもの” を言葉にするときに、「カッコ良い」じゃない何かができたらいいな、と思ってます。そう考えると、じつは僕の「カッコ良い」 と「ガストロノミー」は一緒だと思う。でも、それを言葉にするのは、なんか嫌(笑)。気持ちがガストロノミーであればいい。 パリで独立する店ではガストロノミーをやります。店名は「メゾン」。店の価値や意味は、自分が決めるのではなくて、いろんな人たちの中にあっていい。
「なぜ『メゾン』にしたのか?」は、来てくれた人が勝手に考えて、思ったことを口にしてくれたら良い。僕にはうまい言葉をつける能力がないから、それをどういう風にみんなが解釈するのかが楽しみですね。あとは周りをワクワクさせるのが大事。あいつ何やるんだろう、って。「クラウン・バー」というパリで人気の店の日本人シェフが、独立しました。しかも、ガストロノミーをやる、そうなると、日本にいる人も気になって、ワクワクすると思う。なぜ、今ガストロノミーなのか。それは、好きなことができるから。そのときの自分の世界観を思い切って出せる。変に気を使わなくていいですから。

Profile
1986年、千葉県生まれ。19歳で渡仏し、「ステラ・マリス」 「ジョエル・ロブション」「トヨ」「ヴィヴァン・ターブル」「クラウン・バー」など、パリを中心に活躍。現在は、18年9月にパリに開業する「メゾン」の独立準備中。
Maison
3 Rue Saint Hubert 75011 Paris

日本料理 たかむら
髙村宏樹さん

コピーのなかから
オリジナリティは生まれる

コピーのなかからオリジナリティは生まれてくると思います。だから基本は、絶対に大事。オリジナリティを出せない人は、基本ができていないからではないでしょうか。料理は、素材を見つめることから始まって、焼く、煮る、炒める、切るを使っていて、どうその素材にアプローチしていくか。それをクリアして初めて料理になる。それはジャンルを問わず、世界共通。異ジャンルの料理を食べることは勉強になります。

Profile
1971年、秋田県生まれ。10代から江戸料理の老舗と謳われ た東京・目白の「太古八」で修業。28歳で地元・秋田に戻り、「日本料理 たかむら」で独立。2016年に農林水産省の顕彰制度「料理マスターズ」のブロンズ賞を受賞した。

銀座しのはら 
篠原武将さん

カッコつけなければ
オリジナリティは出てくる

故郷・滋賀の田んぼや畑で悪さしながら遊んだこと。生まれてから今まで、自分が経験したこと、自分の美学はそこにしかない。だから、その経験からくる美学が、すべて料理に出てくると思っています。もしオリジナリティを出せないのは、カッコつけているから。カッコつけなければ全部出る。たとえば、お風呂に入ってどこから体を洗いますか? 子どもの頃からやり続けて、自然と出てきてしまうもの。それがオリジナリティ。そもそもカッコ悪い生き方なんてないでしょう。どの人もカッコ良いのに、それが出せないという考え方がカッコ悪い。それは、きっと自分に自信がなくて、もっと大きく自分を見せたいからだと思う。本人がおいしいと思うものを作っているうちは、カッコ良い。誰が何と言おうと、俺はこのスタイルだと言えるのはカッコ良い。おいしいと感じるものを自分が信じて作れるか。その美学は絶対に必要。人間の味覚は、本当に曖昧なもの。だけど、おいしいと思わせる料理には、作っている人の人間性が表れるものだと思います。

Profile
1980年、滋賀県生まれ。高校卒業後、料理の道へ。滋賀県の名店「招福楼」、「山玄茶」(現在は京都)などで修業した後、26歳で滋賀県に「日本料理しのはら」を開く。2016年、東京に移転し「銀座 しのはら」を開店。18年「ミシュラン・ガイド」一つ星に。

text 江六前一郎 photo 富貴塚悠太

本記事は雑誌料理王国2018年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2018年7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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