食の未来が見えるウェブマガジン

トップシェフ42人に聞く!オリジナリティとは何かVOl.2


ラ・ブリアンツァ
奥野義幸さん

明確な数字の目標を作る
数字からは逃げられないから

目標は、抽象的で曖昧なものだと叶えられない。もういいや、と逃げができるから。その点、数字からは逃げられないですよね。なので、僕は明確な数字の目標を作った。僕にとってイタリアンは、それを叶えるための表現手段。だから、目標を達成するまでは、イタリアンから逃げられない。自分で決めたから。やっとあと数年で何とかなるかな、というところまで来たので、ますます逃げられなくなりました(笑)。それがたぶん僕のオリジナリティ。9月には、「日本橋タカシマヤ」に、80席のイタリア料理のお店をオープンします。日本で作って、日本人が好きで、日本のマーケットに合う、それをパッケージ化して、大きくする。そのビジネスモデルを考える中で、イタリア料理でなければできないことがあると、僕は信じています。

Profile
1972年、大阪府生まれ。アメリカの大学卒業後、帰国。会社員を経て料理人に。東京のイタリア料理店で修業後、渡伊。帰国後の2003年に「ラ・ブリアンツァ」で独立。海外店のプロデュースなど活動は多岐にわたる。

タクボ
田窪大祐さん(左)

枠の中だけで考えず
誰もやってないことを探す

僕は、イタリアで修業していないのに、イタリア料理をやっている。だから、イタリア料理の枠の中だけで考えていては、イタリア料理の中で生きていけない。つねに誰もやっていないことを探しているように思います。でも、それがオリジナリティなのかといわれると、どうでしょうか。ある意味当たり前のことですから。でも、一つひとつのことを説明できるということは、大事なことだと思っています。

Profile
1976年、愛媛県生まれ。調理師学校卒業後、都内のイタリア料理店で修業を積み、2010年に恵比寿で「アーリア・ディ・タクボ」を開いて独立し、6年後に恵比寿へ移転し、「TACUBO」をオープンさせた。「ミシュラン・ガイド 東京」2017 年版で一つ星を獲得。

ティルプス
大橋直誉さん

アイディアが浮かんでも思いつきで動かない。
ノートにインクがなくなるまで書いて詰める

サービス人がどこまでやれるのかを見てみたい、と僕は、僕自身に対して思っています。そのために、料理の勉強もするし、世界のレストランにも食べに行く。それで、料理人と近いレベルで話したい。「シェフズ・ギャザリング」や「DREAM DUSK」などの料理人が集まるイベントに、料理人じゃないのにいられるのは、少しは僕のことが認められているのだと思う。目指していたわけでも、見えていたわけでもないけれど、やってきたことが繋がってきています。僕は、思いつきで動くことがほとんどありません。iPhoneのメモに10スクロールくらい、アイディアだけのページがある。「ティルプス」で売っている「富士山カヌレ」は、6年前のメモを出してきているだけ。「つかんと」(期間限定のとんかつコース)は、3年前のメモです。アイディアは、出すタイミングが大事。今の僕だから、人が来てくれることもあるはず。アイディアは、ノートにペンのインクがなくなるまで書いて、自分が納得できたら世に出す。しかも、ほぼ誰にも相談しない。2018年末で、「ティルプス」を閉めるのも、誰にも相談しなかった。それは、全責任を自分でとりたかったからです。店を閉めることで、食に対してより大きい携わり方ができるんじゃないかと思っています。レストランのオーナーをステップと考えて、これからの自分に一番期待しているのは僕自身。 ただあまりメンタルが強くないんで、3回くらい倒れているし、震えが止まらない時もある。そんな中でやっています。

Profile
1983年、北海道生まれ。料理人からサービスに転向し、ソムリエの資格を取って渡仏。 帰国後は、「カンテサンス」へ。2013年、「ティルプス」を開業し、オーナーに。同店は、世界最速で「ミシュラン・ガ イド」一つ星を獲得した。

アンディ
大越基裕さん

味覚のヴァリエーションを
多数のインプットで広げる

今の時代、ワインの世界も、料理の世界も、ボーダーレスになってきています。良いものを自分たちで探して取り入れようとする気持ちが、あるかないか。それが、オリジナリティを生むうえで大きいと思います。ソムリエと料理人は、大きく言えば同業ですが、異種でもあるので、そこの交流があることによって生まれる新しい感覚もすごく大事な気がしていて。今は、そこに感化されていく人たちというのが、自分の独自性を発揮し始めている気がする。僕はもともとフランス畑ですが、フレンチワインだけで 勝負したいとはまったく思っていません。フランス料理に合わせるのも、フレンチワインより、他の国のワイン、もしくはワイン以外の方が良い場合がある。味覚のヴァリエーションをどこまで広く理解して、それを自分なりに表現していくか。個性的になろうとしたというよりは、もともと広い視野があることが重要な気がしますね。アウトプットをどうするかは、自分たちに与えられている環境の中で考えていけば良い。それよりも、インプット先を多くも つことの方が重要だと思う。狭い世界でずっと追求し続けて、 それを極めようとしていた時代から変わってきた。そうした先駆者たちが集まっているこの会のような場所に行くのは、すごく楽しいことです。

Profile
1976年、北海道生まれ。渡仏後、2001年より「銀座レカン」ソムリエ。06年 より約3年間再渡仏し栽培、醸造の分野を学ぶ。帰国後同店シェフソムリエに。13年にワインテイスターとして「Divin Clos Co.,ltd」を設立して独立。17年にモダン・ベトナム料理店「アンディ」を開く。

ビストロ64
能田耕太郎さん

顔がみな違うように
個性もみんな違うもの

オリジナリティはシェフに欠かせないもの。料理だけではなく、すべての場面での、シェフの経験から生まれるものだと思い ます。そもそも、オリジナリティがない人はいないでしょう? 顔がみんな違うように、個性もみんな違いますから。 料理人は、話すのが苦手な人が多い。でも、これからは自分たちの思いを、きちんと言葉にできる人が必要になってくると思っています。僕は、思考がイタリアンなので、日本語で話すのが苦手(笑)。自分のメッセージは、皿の上に表現しているので、日本の方には、それを体験してほしいですね。

Profile
1974年、愛媛県生まれ。大学卒業後、99年渡伊。2010年、「エノテカ・ラ・トーレ」で「ミシュラン・ガイド」一つ星を獲得。現在は、ローマ「ビストロ64」の料理長。同店は、17年版の同ガイドで一つ星を獲得。

text 江六前一郎 photo 富貴塚悠太

本記事は雑誌料理王国2018年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2018年7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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