シェフの技×OIGEN 鉄の魅力 プロ向け鉄器料理ワークショップ 開催


創業170余年、南部鉄器の老舗「OIGEN」のワークショップが2月下旬開催された。4人のシェフのデモンストレーション・試食、そして参加型のイベントで鉄器のよさを実感として体験できる時間となった。

「OIGEN(オイゲン)」こと「及源鋳造」は1852年に創業した岩手・南部鉄器の老舗だ。日本が誇る伝統工芸でもある鉄鋳物を、現代の生活に沿った家庭用やギフト、そしてプロ向けの鉄器を提案している。
2月27日、東京・幡ヶ谷の「will o’wisp」を会場に、この「OIGEN」鉄器を使ってのワークショップが開催された。
講師を務めたのは、普段から「OIGEN」の鉄器を愛用している4人のシェフ。
「レストラン ラフィナージュ」高良康之シェフ、「サローネグループ」樋口敬洋シェフ、「will o’wisp」光安北斗シェフ、「ロレオール田野畑」伊藤勝康シェフと、フランス料理界から3名、イタリア料理界から1名、といずれも評価も人気も高い名店の料理人ばかりだ。

4時間以上にわたるこのワークショップでは、講師のシェフたちが、実際に厨房で使用している立場からのデモンストレーションは説得力があり、試食して実感できる時間となった。
南部鉄器や鋳物のメーカーやは他にもあるが、「OIGEN」のアイテムは蓋がしっかり閉まり、保湿がしっかりしているのが特徴。そのため、忙しいプロの厨房で、状態を見極めやすく、コントロールしやすいのが扱いやすさにつながっているという。

この日の食材は、「OIGEN」と同郷の岩手県から肉類や野菜、調味料などをたっぷりと。
あえて少人数の特別イベントの参加型で、出席した13名のシェフたちは、デモンストレーションでは間近で調理工程を真剣な眼差しで見学。講師のシェフの話に熱心に耳を傾けた。
デモンストレーション・試食の後は、参加者たちも厨房に入り、実際に「OIGEN」の鉄器にトライできる時間が設けられた。メーカーや4人のシェフからコツなどを直接聞きながら試せる、貴重な機会となった。

「むぐ かぶと」× 高良康之シェフ
@「レストラン ラフィナージュ」

ころんと丸みのある「むぐ かぶと」。見た目よりも収容力があり、大きな具材をそのまま入れてよしの片手鍋。そんな鉄器を使って作るのは、ポトフの牛肉を鶏肉に置き換えた「プール・オ・ポ」。塩をすり込んだ鶏肉を丸ごと、追ってポワロー、にんじん、セロリ、サボイキャベツを加えてコトコト煮込む。全体にやさしく火が入り、ふっくらと仕上がる。取っ手の逆側に蓋を引っ掛けるフックがあり、ちょっと中を見たいときや蓋を開けた状態で使用したいときに便利。

「Palmaキャセロール」× 高良康之シェフ
@「レストラン ラフィナージュ」

シンプルなデザインの「Palmaキャセロール」。これひとつで焼く、煮る、蒸すができ、蓋には蒸気孔がないので、食材自体の水分を使って蒸し焼きにする調理法も可能だ。「フランドル風牛肉の煮込み」はそんなキャセロールの特性を存分に活用した一品。牛肉を焼き、いったん取り出したら、玉ねぎを飴色になるまで炒める。肉を戻し、ビールやブイヨン、調味料などと煮込む。牛肉の旨み、玉ねぎの甘み、ビールの苦味が渾然一体となり、とろとろと温かい味わいの一品に。

「むぐ くわがた」× 樋口敬洋シェフ
@「サローネグループ」

丸みを帯びたフォルムがほっこりとした印象。「むぐ くわがた」は鍋の中での熱対流がよく、煮込み料理や蒸し料理に向く。この講座で樋口シェフが披露してくれたのは、イタリア国内でも珍しい、シチリアの郷土料理「羊スネ肉の煮込み」。玉ねぎ、セロリ、にんにく、ローズマリーと、途中トマトも加え2時間煮込む。水分は一切加えず、素材からのみ。蓋で密閉でき、水分が抜けない鍋だからこそできる。食べるときは炊いたレンズ豆と一緒に。ワイルドで滋味深い味わいが魅力だ。

「ソリット」× 光安北斗シェフ
@「will o’wisp」

表面をパリっと仕上げ、火を止めた後にはゆるやかで安定的な温度降下でうまみをしっかり閉じ込める「ソリット」。作られた料理は「鴨のグリル」。この鉄器のよさを最大限に発揮できる一品として選ばれた。鴨はまず「ソリット」で、皮に焼き色がつくまで焼く。その後、皮目を下にし、乾燥防止のため表面にオリーブオイルを塗って、250℃のオーブンに移し、最後にフライパンで焼き上げる。食欲をそそられる香ばしい焼け目がつき、かつ中はしっとりとジューシーな仕上がりに。

「炭火コンロセット」× 伊藤勝康シェフ
@「ロレオール田野畑」

いわば、南部鉄器の七輪。両手鍋のようなコンロに炭を入れ、その上のグリル網をおいて食材を焼く。グリル網を重ねると一度にさまざまな食材を火加減を変えつつ焼ける。炭火焼きは飲食店の人気メニュー。しかし、そのためのスペースの確保がネックになるが、この「炭火コンロセット」であれば、一般的な鍋同様、コンロ台において使える優れものだ。グリル料理はダイナミックさが醍醐味。この日はホロホロ鳥をドンと焼いたのを筆頭にジャガイモやニンジンなどの野菜もふるまわれた。

OIGEN(及源鋳造株式会社)
岩手県奥州市水沢羽田町字堀ノ内 45
Tel: 0197-24-2411
https://oigen.jp

レストラン ラフィナージュ
東京都中央区銀座5-9-16 GINZA-A5 2F
Tel: 03-6274-6541
https://laffinage.jp

サローネ トウキョウ
東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 3F
Tel: 03-6257-3017
http://salone.tokyo
※サローネグループでは、他、東京・横浜・大阪で6店舗を運営

will o’wisp
東京都渋谷区幡ヶ谷1-33-2
Tel: 03-5738-7753
https://www.instagram.com/willowisp.jp/

ロレオール田野畑
岩手県下閉伊郡田野畑村明戸309-5
Tel: 080-9014-9000

Text:羽根則子 photo:富貴塚悠太

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